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『はぁ・・・』
職員室で、俺は馬鹿でかいため息を漏らす。
あの後、須藤は哀れみの目でふっと小さいため息を漏らし、俺に呟いた。
「ドジな上に、覗き魔なんですね。なんかウケる」
俺の人生終わった。本当に耐えきれない。
赴任1日目で色々やらかし過ぎた。俺、マジで教師向いてないかもしれない。
いや、頑張れ!!
頬をぱしっと叩き、座っていた椅子から思いっきり立ち上がる・・・つもりだった。
「お疲れー。ジュースでもどうだい?そこの自販機のだけど。」
目の前に清涼飲料水のペットボトルが差し出された。
後ろを振り返ると、
『吉良先生!お疲れさまです。』
そこには、吉良先生__ベテランの先輩先生だ。
本当は校長もできるキャリアなんだけど、「生徒とより触れ合いたいから」との希望たって、3年ほど前からこの学校で教鞭を持っているそうだ。
ちなみに3年3組の担当をしており、生徒にはあの須藤もいる。
「どうだい?1日目は。」
『もう既に先が危ういです。色々精神的に来ました。』
そう言うと、吉良先生は「ハハハ、大変だな。」と言ってペットボトルを俺に投げた。
「新任当時は俺もそうだった。きっといいことあるだろう。」
とよくわからないフォローを貰ったので、『ありがとうございます』と返しておいた。
「それで」と吉良先生が話を切り出す。
「須藤はどうだ?ちゃんと部活やってたか?」
『は、はい…ちゃんとしてましたよ。』
嘘ではないと思う。しっかりしてなかったのは俺だから。
「そうか。」と吉良先生は安堵の息を漏らした。
『どうかしたんですか?』
「まぁあいつ、あまり家庭環境が良くなくてな・・・こっちも心配してんだよ。」
家庭環境。俺はその言葉に、少し恐怖を覚えた。
俺も実は過去に色々あり、家庭の話は苦手だった。
『どういうことですか?』
「それはプライバシーってもんだ。じゃぁ俺は行く、頑張れよ。」
といって吉良先生は職員室を出て行った。
『どういうことだよ……』
肝心なところを言わないって、そりゃないわ。
気になるな…もう一回行ってみるか。
俺は職員室を後にし、特別棟へと向かった。