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スミレ  作者: 七瀬 海亜
3/5

雑用やなんやらに追われているうちに、時計は上を指していた。

今頃生徒たちは下校している頃だろう。


「あ、もう12時。」と由利先生が席を立った。

『あれ先生、何か会議でもありましたっけ?』

俺が聞くと、由利先生はクスッと笑った。

「先生、今から部活動の時間ですよ?担当の部に行って挨拶しなきゃ。」

あ、忘れてた。

全く、こんなことまで忘れるなんて俺はどうかしてしまったんだろうか。

「それじゃ、私は吹奏楽の担当なんで。」と、部員表を片手に職員室を出て行った。

では、俺も行こうか。

俺の担当教科は美術。自動的に美術部を任されることになっている。

・・・が、少し心配な点がある。

ここはかなり過疎地域で、教師の数がとても十分とは言えない。

しかも美術などの芸術担当の教師はとても需要が少なく、全国で見ても数が少ない。

かくして、俺は一人で美術部を任されることになった。


まぁそこら辺はなんとかなると思う。

聞いたところ、部長はかなりすごい生徒らしく、幾多もの賞をとる、いわばこの中学校の絶対的エースだと聞いた。

きっとまとめるのもうまいのだろう。


少し離れにある真新しい棟へ足を踏み入れる。

プール、図書室、美術室、音楽室のあるこの棟は、数年前に改築されたそうだ。

数年経ってなおもその新しさは残っている。

入ってすぐに、《美術室》と書いてある教室を見つけた。

少し騒がしい。やっぱり女子生徒ばかりの部は、こんなに五月蝿いのか。

とりあえず自己紹介をしようと、扉を開ける。

するとびっくりした顔と不審そうな顔が混じった表情が、一気にこちらに向けられる。

少々重い空気だが、かまわず黒板の方に向かう。

『初めまして、美術部の担当になった梶谷です。新しくこの中学校に赴任してきました、宜しくお願いします。』

そう言うと少し緊張が解けたのか、生徒たちの表情が柔らかくなっていく。

『早速だが、部員みんなに改めてそれぞれ自己紹介をしてもらおう。部長と副部長、前へ。』

生徒が、苦笑いのような表情を浮かべる。

一人が話す。「私が副部長です。が、部長が・・・・まだ来てなくて。」

と話していると、扉が開いた。生徒たちの顔が一気に扉の方へ向かう。

一人、生徒が入ってきた。

「ちゃーす・・・・誰?」

目をぱちくりさせてこちらを見る。

美術部部長、3年3組の 須藤 さくら。

俺と、彼女の出会いだった。


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