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スミレ  作者: 七瀬 海亜
2/5

嘘だろ・・・?

一番恐れていたことが、今起こってしまった。

生徒の前で恥をかく。あまつさえ、こけることなど絶対にあってはならない。

それは全教師が思っていることである。しかし。

ここにいる、梶谷はやらかしてしまった。

きっとこの行動は、今までもこれから先も、この学校では起きないと言っていいだろう。

それだけの愚行を、梶谷はおこなってしまったのだ。


正気に戻った時、既に体育館は笑いの渦に包まれていた。

思わず俺は立ち上がり、自分のしたことを激しく後悔する。

…靴ヒモくらいしっかり結んどけよ、俺!

焦った司会が、「皆さん静かにしてください」とマイク無しで叫ぶ。

おい、何のためにマイクがあるんだよ。と突っ込みたくなった。

しかしこの空気を作ったのは紛れもなく、俺だ。責任持って、なんとかしなければ。

思わず叫ぶ。

『俺、こけてねぇからぁー!』


今思えば、なんて小学生みたいな思考回路なんだと思う。

だが俺はパニック状態。思考回路なんて、恥ずかしさと緊張のあまりネジが数十本くらい飛んでいた。


そこからは、もう誰しもが理解できただろう。

俺が小学生レベルの叫び声をあげたことによって、もう体育館は壊滅的。

笑う生徒、それを阻止しようと声を張り上げる教師、放心状態の司会。

しまいに俺がこけた目の前に座っている生徒なんかは、まるで哀れむような目でこちらを向いてくる。中学生にそんな目されたら、俺もう生きる気力失っちゃうよ。

そのあと、やっと落ち着きを取り戻した体育館は、スムーズに事を済ませていった。

職員紹介の時、何か喋ったような気がしたが、その辺りは覚えていない。むしろ今日1日を忘れてしまいたい。


もちろん俺は、始業式が終わってから赴任初日に校長室に呼び出された。

長々とお説教を食らって、今に至るのだ。


『はぁ・・・・』

職員室で、大きいため息をつく。

「お疲れ様です、大変でしたね。」

『大変も何も、もうたまったもんじゃないよ。』

気を使ってくれたのか、隣のデスクに座っている由利先生が声をかけてくれる。

「まぁ何かあったら声かけてくださいよ、お互い暇なんで。」

『暇なのが嬉しいかどうかは微妙ですけどね、まぁありがとうございます。』

俺は3年1、3組の副担任、由利先生は3年2、4組の副担任だ。

大体の事は担任の仕事なので、あくまでも俺たちは”補佐”というわけだ。






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