ー第一章 予告ありの出会いー 【7】
もうかれこれ2時間ほど遊んだだろう。時計の針はもう5時をまわっていた。そろそろ帰ろう、と
彼女にたずねてみたりしたが、えー、あと少しだけ。と、言われて結局もうあたりはすっかり暗く
なっていた。途端に辺りが暗くなったら早く帰ろう!と言って走り出す。無邪気というのはこうい
うのをいうんだな、と思った。そして彼女を家まで送り、僕も無事に家へ帰った。
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次の日、昨日と同じで彼女は僕の家の前で僕を待っていた。そして昨日と同様、手を繋いで学校へ
行く。僕達の顔から笑顔がなくなることはなかった。学校へ着くまでは。
――学校へ近づいてきた。同級生もちらほら見え始めていた。けれど何かおかしい。なぜか皆が僕
達をちらちら見てくる。いつも挨拶をしてくるはずの友達がおはようと言ってこなかった。僕は違
和感を感じたが、あまり気にもとめなかった。その理由を僕は後に知ることになる。
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自分のクラスで自分の席へつく。やはりおかしい。ここまでで誰も声をかけてこなかった。やっと
声をかけてきたのは、当時のクラスの委員長、涼だった。
涼「なぁお前、昨日遅くまで学校残って何やってたんだ・・・?」
なぜ遅くまで残っていたことを知っているんだろう。確かに最後までクラスにはいたが、それを確
認できる人はどこにも居なかったはずだ。
涼「昨日お前が桜坂とやってたこと、昨日の夜だけでほぼ同級生全員に回っちまったぞ?」
陸「え・・・?」
涼が何を言っているのかわからない。一日だけで愛音ちゃんのことが回るのは別に異常ではない。
それは、彼女は同級生のほぼ男子全員に異性的に好かれている。だから愛音情報は1時間もたたない内
にクラス中に回る。愛音ちゃんのことを好きな奴はこのクラスだけでも15人は居る。例外だった
のは自分くらいなものだったから。それほどに彼女は美少女だった。僕となんか全く釣り合わな
い。そう分かる。けど、何で昨日のことがこうも簡単にバレてしまう?それだけが不思議でならな
い。
涼「6年生の誰かがお前らのこと見たんだとよ。それで一日で情報が回った。陸・・・お前少しや
ばいぞ?もう昨日友達だった奴はきっとお前に冷たくするだろう。それぐらいの事をお前はしてし
まったんだ。」
陸「ちょっと待って!何で。一緒に遊んだだけなのに。僕が何かしたっていうの?!」
涼「俺に回ってきた情報だと、お前らは付き合っていて、昨日は恋人同士がするようなことをして
いた、と。」
陸「そんなの誤解だよ!信じてよ!!」
涼「俺はお前のことを信じてやる。俺は別に桜坂のことは好きではない。でも桜坂のことを想って
いる奴は信じてくれないだろうな。」
それが僕にとって初めて親友が出来た日で、初めて地獄を味わった日だった―――――
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ー第一章 予告ありの出会いー 【8】 へ続きます。