ー第一章 予告ありの出会いー 【5】
今回は少しだけ長め。少しずつ陸の過去は明らかになってゆきます。
通学途中は彼女と手を繋いでいった。子供の僕にはそれほど抵抗はなかった。けど、愛音ちゃんが
恥ずかしがって何か言い出そうとしているのは、本当にかわいかった。これだけのことで昨夜の嘘
が本当になるのかはわからないけど。そして何か決心したかのように陸君、手ぇ、繋ごっ!と言っ
てきたのはかなりドキッとした、いいよ、と少し照れながらも出来るだけ優しく微笑んで言い返す
と、彼女はとても嬉しそうに、そしてとても恥ずかしそうに、手を差し出してきた。
僕はそれに応えるように、優しく、温もりのある手を握った。
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学校に着く一歩手前のところで、僕はある重要なことに気づく。皆は昨日の電話のことを知ってい
るわけない。それに普段僕と愛音ちゃんはあまり話さない。なのに手を繋いで登校なんかした
ら・・・とさすがにこの僕でもそれぐらいは気づいた。そして僕は彼女に話し掛ける。
陸「あのさ・・・このまま学校に行くのはマズくない?」
愛音「えー?何が―?」
彼女はとぼけたように言い返してきた。無論そんなこと、彼女はとうに考えていたのだろう。
陸「だから・・・僕たちが手ぇ繋いで学校行ってるのが皆にバレるのが!。」
愛音「別にいいじゃん。皆もきっと分かってくれるよ。どっちみち皆に言うつもりだったし。」
陸「まさか・・・昨日のことを??」
愛音「うんっ!」
僕は呆気にとられた。そうだ、この子はそういう子だった。いつも後先考えず、、、いや、考えて
いるのだけれど、たまに無鉄砲な行動をすることがある。
陸「それはダメ!絶対ダメ!」
愛音「えー?何で―?」
陸「なんでも!とにかく手を離して!」
愛音「嫌だよ!陸君とずっと一緒に居たいの!」
陸「僕ならいつでも相手してあげるから、だからとりあえず、学校の前は離して?」
愛音「学校の中は・・・?」
陸「・・・誰も居なかったら、いいよ。」
愛音「・・・分かった。」
彼女もどうにか勘弁してくれた。けど、このときの言葉で、僕の楽しいはずの学校生活に支障が生
じてゆくなんて。そんなこと、今の僕には分かるはずもない。
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ー第一章 予告ありの出会いー 【6】 へ続きます。
次話ぐらいで急展開考えていこうかと思ってます。