ー第一章 予告ありの出会いー 【8】
気がつけばもうそこには、友と呼べるものは涼ぐらいだった。でも涼を、巻き添えにしたくないと
いう気持ちがあった。いつかまた名前を呼び合える日が来るときがあればその時は僕らは親友だ、
そう言って涼を遠ざけた。そしてそれからの日々は地獄だった。
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始まりは、そう。ある一声。
?「陸、ちょっと話すことがある。着いてこい。」
昨日までの友達が僕にそう声をかけた。昨日まで友達だったんだから、少しは望みがある、そう考
えていた。そんな考え、甘すぎた。
着いていくと、そこには、20数人の同級生が集まっていた。そこで僕はいくつもの質問を浴びせ
られた。桜坂さんとどういう関係なんだとか、昨日は何をしていたのか詳しく話せだとか、時には
暴力をふるう人までいた。一週間もするうちに、僕の体はアザだらけになった。もう彼女と登校す
ることは止めた。けど、学校へ行くことはやめなかった。彼女は、愛音ちゃんは、僕にとっての希
望の光だったから。けど、そんな夢を見ていられたのはほんの数日だった。
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ある日、そうこれが僕にとっては一番の地獄だったのかもしれない。朝、突然それを知った。
―――愛音ちゃんは、突然留学することになった。
納得できない真実。目を背けたくなった。こらえていた涙はもう止まらない。その真実を聞くと、
僕は逃げ出していた。ひたすら、何かへすがるように。すがるものなんてもうないはずだけど、た
だそれを受け止めたくなくて走った。
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気がつけば、家のベッドで寝ていた。起きて、また心が痛む。また涙が溢れ出した。
その時ふと思ったこと。
――なんで僕は、普通じゃないんだろう?
――普通に友達と笑えることが、一番の幸せだったはずなのに――
僕はこの日、この涙とともに、夢を描くことや、挑戦すること、それらを望まなくなった。
僕はこの日から、誰よりも普通を願うようになった。
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Next ー第二章 君が笑ってたからー 【1】 続きます。
次回は、現実へ戻ります。