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 『トワよ……これ、トワよ!』

 「―――――っは!すいません。つい見とれてしまいました」

 『まぁ、その気持ちも分かるが……』


 我は苦笑しつつも、この先の未来について考える。


 『ところでトワよ、この場から住むところを変える気はあるか?』

 「ないです。ここは私のです」

 『そうか』


 即答であった。

 トワはここを“私の村”だと明言をしていたからな、この反応は想定済みである。

 まあ、その意見には我も賛成である。

 せっかくの拠点を手放すのはもったいないであるからな。

 しかし、そうなれば早急に解決をしなければならぬ問題が一つある。


 『トワよ、魔物という物はいったい何なのであるか?』

 「?魔物は魔物ですよ?」

 『いや、そういったことではなくな……』


 ううむ、どうしたものか。


 『魔物の姿形などを教えてもらってもよいか』

 「姿形ですか?」

 『そうである。見るに堪えない造形だとか、首が痛くなるほど見上げねば全貌を捉えることが出来ない大きさであるとか?ほれ、いろいろあるのであろう』

 「?そんなことは聞いたことはありませんがいるかもしれませんね。まあ、私が知っているのは動物に似ていますけど……あ、後は私たちによく似た形をしていたり……ですね」

 『ぬう、そうか。動物と魔物の違いは分かるのか?』

 「え~と、魔物の方が動物よりも強いです!」

 『そ、そうか』


 うむ、よく分かったような、分からなかったような……


 早急に解決しなければならない問題とは、この村に刻一刻と迫っている魔物の軍勢のことである。

 この村は辺境の地にある、そして村の住人はトワ一人である。

 辺境であり見捨てられた土地であるが故に、増援を期待することもできはしない。

 最も大きな問題が、我が魔物について何も知らぬことである。

 魔物の軍勢がどれ程の物なのか、そしてその群れの脅威がどの程度の物なのか、我には全く想像が出来ぬのである。

 想像できぬ以上、トワ一人で大丈夫なのか、そうでないのかがな。


 これは、トワを連れて一狩りいくしかないか。


 『トワよ、離れる気はないといったが魔物の群れの事はどうするつもりであるか』

 「……どうしましょう?」

 『何も考えていないのであるか?』

 「はい」

 『はぁ、……とりあえず明日その場所を案内してくれぬか?』

 「?分かりました」


 とりあえず我は、現状把握するために魔物どうやらについて調べることにした。

 しかし、いくら我がついているといっても、このままでは少々危険であるな。


 『その前にトワよ、我の力を見せよう』

 「力ですか?」

 『うむ、かつて神話戦争で数々の偉業を成し遂げきた我の力である!』


 我ら大いなる意思には、それぞれの能力がある。

 人間に他の生き物の力を与える能力、特殊な力を与える能力、そして武器を与える能力。

 この武器を与える能力が我に当たる。

 北欧神話には、数多の逸話を持つ武器が存在する。

 一度抜くと誰かの血を注ぐまで、命を奪うまで鞘に戻らないという妖剣。

 炎をまといて、太陽の輝きにの匹敵し、とある化け物を唯一殺すことができるといわれたルーンの刻まれた炎剣。

 我らは、この伝説と言っても差し支えがない神話武装と共にあの忌まわしき戦争を生き残っていたのである。

 これさえあれば、問題なかろう。


 我は集中し意識を奥深くの底、深層へアクセスする。




  神話 :北欧神話

 個体名 :ホクオウ(北欧神話の大いなる意思)

 契約者 :トワ

  能力 :神話武装継承

 解放武装:神槍グングニル(契約の儀式により解放)




 『ば、馬鹿な?!』

 「ホクオウさん?」


 数多にあった神話武装が……

 今では継承できる神話武装が一振りしかないだと?!

 何かの間違いではないのか。


 しかし、何ど確かめても解放できる武装は変わらない。


 むう、致し方あるまい。

 幸い、丁度今必要な武器はある。


 神槍グングニル、この槍は決して的を射損なうことなく、敵を貫いた後は自動的に持ち主の手もとに戻る。戦争と死を司る勝利の槍。

 この槍ならば問題なかろう。

 それにトワにふさわしい槍であるな。


 『グングニルよ、顕現せよ!』


 我の呼びかけに応じ、グングニルが召喚される。

 見る者を圧倒するこの神槍は、漆黒の色がベースとなり、槍の柄には血管を思い起こすかのように赤黒い紋様が浮かび上がっているが、何よりの特徴と言えば穂先にしばしばルーン文字が記されていることであろう。

 こちらの想像通りと言っては何だが、トワはこの幻想的ともいえる槍に魅入られてしまっている。


 「――――きれい」

 『フハハハ!そうであろう、そうであろう。この槍をトワに与えよう!』

 「ええっ!いいんですか?!」

 

 興奮したトワの様子につい興が乗ってしまい、グングニルの能力を語り聞かせる。


 『―――――ということであるな!』

 「っすごいです!すごいです!!」


 フハハ!フハハハ!

 心地よい、心地よいぞ!

 トワのきらきらとした輝く瞳に、我の気分は上昇していく。

 高揚した気分のまま我はトワに声をかける。


 『それでトワよ、武具の心得は?』

 「ん、心得ってなんですか?」

 『う、うむ。難しかったか?……武器を使ったことはあるかということだ。それで、あるのか?』

 「え?あ……な、ないです」


 ……うむ、やはり。


 我の心の高揚が消えていく感じがした。

 我、残念。

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