1-99 レティシアの陣 その3 喧嘩神到来
黒光りした仁王像のような筋肉に、両の手に薄く光る白いオーラを持つそのただならぬ風貌に、ぎょっとなるアルティスとオウカイ、オウラ兄弟。
「あっ!ショ、ショウキ様!!」
「ショウキって何だい兄貴?」
「馬鹿!忘れたのか!?『喧嘩神』ショウキ様だぞ!?」
「あっ!!!」
っという間に5m程後ろに飛びのき土下座する巨人のように大きな二人。
「す、すみません、とんだ痴態を見せてしまい。。。」
「そ、そうです、普段からこんなんじゃないんです、この野郎が挑発するような事を言うもんだ、ガッ、痛っ!!」
オウカイに殴られて静まるオウラ。
ここ本営に集っている各国の責任者の中に、『ハマツ』軍の後見人としてショウキの姿が見えたのがつい先ほどの事であった。
「おお、名にし負う『可睡の杜』のショウキ殿か!?これは飛んだ所をお見せしてしまったな。」
本人がどう感じているのかは分からないが、どうやら『ミズガルズ』中の至る所でショウキの名は語り草になっているようで、特にオウカイ、オウラ兄弟は、因縁浅からぬ様子であった。
「ショ、ショウキ様、あなたもこの戦争に参加したのですか?」
「うむ、『ハマツ』のヤストモ市長の要請を受けてな、無差別攻撃を仕掛けてきた『レボルテ』の真意を問いただすべく、諜報部隊をよこす事にしたのだ。」
「は、左様ですか、私達も『レボルテ』の無差別攻撃には義侠心を燃えたぎらせていた所です。ここは一つ一致団結して、その蛮行を阻止いたしましょう!」
「うむ、そうだな。『ハマツ』の市街地は大きな被害は無かったものの、『ルーアン』は多数の一般市民を巻き添えにして多大な損失を被ったようだ。私も携わっていた平和の象徴『『シャイニング・ムーン魔法遊園地』も壊滅だ。」
「何と、今はあの『ミズガルズ』最大の娯楽施設でしたか!?その武の力を持ちながら平和を一心に愛するショウキ様らしいですね。」
『無法者の国』の首領オウカイは、先程の粗暴な物言いとは打って変わり模範的な騎士道精神を謳うかのような心にも無い事を言っている。それよりも更に乱暴でこういった言葉は彼の脳裏にまったく持ち合わせていないオウラに至っては、オウカイの言動にいちいちうなずいて、ゴロゴロ言うネコのように従順に振る舞っている。オウカイ、オウラは、ショウキに対して一挙手一投足大変な注意を払っているようであった。
「ショウキ殿、懐かしいですな。今は確か『可睡の杜』で戦闘長をされているとか?その昔、義賊として我が国に跋扈していた狼藉者の巣くう数多の砦を、完膚なきまでに崩壊させて頂いたときはお世話になりましたな。」
「今はもう足を洗って、綺麗さっぱり修行僧生活ですよ。しかし、先程耳に入りましたが、何ですか?『スペニア』の南境は人が住めない土地となったですと?」
(ギクッ!!)
「うむ、実はそうなのです、ショウキ殿が南境を去られて幾十年、今では『無法者の国』と呼ばれ『ミズガルズ』東部に悪名が轟いておるのです。」
キッとした顔つきで、オウカイ・ラオウを見るアルティス。ショウキも懐疑的で一瞬詰問するような眼を彼らに対して向けた。
「え、ええ、私達では抑えきれない風紀の乱れがありまして、、、」
「嘘をつけ!お前達が先頭に立って乱脈に振る舞っておるのだろうが!!」
「この戦いが終わったら、故郷に戻ってみる事にしましょうかな。。。」
と、ショウキ。
「ぜひっ!!(びしっ!!)」
恐い先生に叱られたやんちゃな小学生のようになるオウカイ・オウラであった。