2-8 桜
桜咲くこの春。
花吹雪舞い散る下、十字架を握りしめ
そっと目を閉じる乙女。
乙女は願う。愛しい人が振り向いてくれることを、、、
「呼んだあ?ああああ」
乙女の足元では愛しい人が真っ赤になって酒に呑まれている。
上半身裸で背中に「あほ」と書かれたその愛しい人は
自分のパンツの中にビールを注ぎながら
朋美に襲い掛かってくる。
「いやあ!今の勇者様は嫌いです!」
今日はみんなでお花見だ。
みずき一家とファロス。
そして野口と朋美は公園ではた迷惑な宴会を繰り広げていた。
「朋美さんを襲うとは!!ゆるさーん!!!」
酒を飲んで手加減を忘れたファロスのキックが
野口のテンプルに入る。
糸の切れたマリオネットのように崩れおちる野口。
気絶した野口に容赦なくまた落書きをするうめちゃん。
もう宴会は警察の取り締まりを受けてしまいそうな勢いで盛り上がっている。
酒の飲めない朋美は一人おいてけぼり、、、
朋美は一人離れて公園を歩きはじめた。
公園では至る所で宴会が繰り広げられている。
その上で咲き誇る桜に朋美は話しかける、、、
桜さんはこんなにきれいに咲いてくれているのに
みんなは騒いでみようともしない、、、
せめて私だけでも見ていてあげる、、、
池のほとりにあるベンチに座り朋美は一人桜を眺める。
すると
きれいな桜に見とれている朋美の背後から
聞きなれた声がした。
「ここ、、、あいてる?」
野口は朋美の隣に座ると桜を一緒に眺めはじめた。
「俺は気が付いていたよ。桜が咲き乱れていることに。
そして君が、美しいことにもとっくに気が付いていた。
君への気持ちが素直になれた俺は今、朋美とキスがしたい」
「今日は駄目、、、今日はあなた危険だから、、、」
「なぜだい?なぜ俺が危険だとわかるんだい?」
「だって、、、
背中にきけん!!あほ注意!!って書いてあるからです!!!
ちゃんと酔いを醒まして服を着てくださーい!!!
酔っぱらいは嫌いです!!」
咲き誇る桜を見上げながら朋美は思う。
もう、、、飲みすぎです勇者様、、、
でも、さっきの言葉
うれしかった、、、、
ね!達成したでしょ!!