2 施しようがない2人
「みずきさん、、、みずきさん、、、」
27回目の問いかけで彼女が振り向く。
「話しかけないでよ!知り合いだと思われるじゃない」
同じ会社の同僚なんだから、絶対知り合いだと思うのだが、、、
「病気の方はどう?」
「うるさいわね!昨日病院に行ったら
これはひどい!手の施しようがありません!
て言われちゃったわよ!」
「て、言うことは、、、みずきさん、不治の病なんだね
かわいそう、、、」
「あーあ!海にでも行きたいなあ!塩水は水虫に効くって話聞いたことあるし、、、」
そう言い終わったみずきは目の奥に邪悪な光を宿し、にやりと笑った。
「そうだ!あんたこの前、趣味はネットで小説を書くことだって言ってたね?」
「そ、そうなんだよ!ファンタジー小説でね!竜の冒険ってタイトルでね
石像にされた父さんを助けに行くために、酒場で仲間をスカウトして、、、」
「内容はどうでもいい、、、乗せてるサイトの名前とパスワード教えてくれる?」
「え!読んでくれるの!もちろん教えるよ!!」
パスワードを書いた紙をみずきに渡す野口。
そんなもの人に教えたらダメなのに、、、
その夜、自分の部屋に帰った野口は早速パソコンの前に座る。
「よーし!今日も名作をかくぞ!しかし毎日更新してもう200回目なのに
なんで訪問者数がゼロなんだろう、、、」
そして今日もパクリに満ちた、文章を書きなぐる野口。
無事書き終え投稿する。
「まあ、、、一応見ておこうか、、、アクセス解析、、
頼む!一人でいいから来ておくれ!!」
画面に映った数字を見た野口は驚きを隠せない様子。
「ええー今日のアクセス数23982628人!!!
昨日はゼロだったのに!!なんでえ!!
、、、、、、、
そうか!やっと来たか!!」
パソコンの前で仁王立ちになる野口。
「やっと俺の小説が世に認められたか!!遅いんだよなあ!!
これで印税生活に入ってみずきさんとも結婚して、、、ぐふふ」
ふと見ると、メッセージが届いている。
「おお!さっそくファンレターか?うんうん!」
開いてみるとこんな文章が書いてある。
「すごいですね!!アクセス数23982628人!
きっと日本一ですよ!
あなたの小説に感服致しました!
つきましては私共で出版させていただきたいのですがよろしいでしょうか、、、
でもうちは財政難でして、、、
出版の費用200万円を貸していただけないでしょうか!!
大丈夫!!本が世に出れば200万位すぐ取り返せますよ!!
いますぐ200万円を振り込んでください!!今すぐに!!
M出版社」
あごに手を当ててうなずく野口。
「うむ!200万円ぐらい貸してやろう!貧乏出版社め!
まあ俺の小説が出版されればそんな金はすぐ回収できるがな!はははははは」
200万円を振り込む野口。
神よ、、、彼を救い給え、、、
そして野口は幸福な眠りについた。みずきの夢を見ながら、、、
ちなみに夢の中のみずきはいつもメイド服だ。
「みずきさん、、、ほんとうにやさしくていい人、、、」
野口はつぶやく。
つぶやく野口の上には猫の額ほどの、都会の夜空が浮かんでいた。
なんじゃこりゃ