ネトゲでシナリオのネタを探すことにしました。⑦
――俺とアルテミスは、ドラゴンを押し付けてくれちゃった金髪牝豚野郎もとい、ブロンド女狩人のラブたんと道中を共にしていた。
「いやいや~、お二人のおかげでなんとか死なずに済みました!」
名前からして恋愛脳ぽいラブリーラブたんはリアクションコマンドで小躍りしてる。
半ば強制的に戦闘参加させたクセに、感謝が足りないようですな。お?
「ラブさんは、お一人でプレイしていたんですか?」
アルテミスがラブたんに話しかける。
「そうなんよ。いつもやってたフレが卒業しちゃって。最近は一人でやってたんだけど、まさか赤目黒龍と出くわすなんて、ついてないわ~」
ついてないのはこっちである。
「私は今日初めてプレイしたんですけど、一人だったらすぐに止めちゃってたかもしれません。声をかけてくれたオマリーさんのお陰ですね!」
アルちゃんの笑顔がモニター越しに感じられそうである。あれ? これって俺のこと好きなんじゃね?
「ほんと、オマリーさんがいなかったら、赤目黒龍は倒せなかったです。アリアリです!」
恋愛脳ラブたんも俺を持ち上げる。
あらやだこの娘、優しいじゃない。仕事だとボロクソ言われるから、褒められると涙が出ちゃう。太鼓持ち大好き!
「こちらもラブさんのお陰で、赤目もゲットできましたしお互い様ですよ!」
気を良くした俺は上機嫌でキーボードを叩く。今おじさん気分いいからお小遣いあげちゃうよ?
実際、赤目黒龍は出現率が激低なため、普通にプレイしていてもなかなか遭遇しない。頭部を集中的に攻撃しないといけない赤目の入手難易度はかなり高いのだ。
「今までもずっと援護射撃ばっかやってたんで、その辺は任せてもらっていいんよ~」
ラブたんは控えめな胸をえへんと張ってきた。赤レコのキャラメイクでは大抵巨乳女子が選択されるが、ラブたんは珍しく貧乳である。
中の人がおっさんだったら、ロリコン犯罪者予備軍でフィニッシュである。
「じゃあ、これからは一緒にプレイするのはどうでしょう? みんなでやるほうが楽しいですし!」
アルちゃんが提案する。
「え? そりゃウチは凄い嬉しいけど、いいの?」
ラブたんが返事をする。
「私はぜひそうして欲しいと思います! オマリーさんは大丈夫でしょうか?」
だが断る! と言いたいけど願ったりかなったりである。
「こちらからもよろしくお願いします!」
ちょっと喰い気味で返事をする。拓斗くん必死! あ、拓斗は俺の名前な? ポテチ喰ってるやつな。
「じゃぁ、フレンド登録しちゃいましょ!」
ラブたんが提案する。
「了解です!」
ラブたんから送られたフレンド申請を承認して登録完了! 装備してる内容から、キャラクターの容姿までいつでも見放題である。ぐへへ…… ほんと、個人情報はしっかり管理していただきたい。
フレンド申請のやりとりしている間、ぴくりとも動かないアルちゃん。
何事かしらと思ったところでポップアップが表示される。
「あの~、フレンド申請のやり方がわかりません」
そういえば、アルちゃんてば初心者だったね。ちょっと忘れてました。
「申請したいキャラをクリックするとコマンドが出てくるので、そこから申請で大丈夫ですよ~」
またしばしの沈黙。アルテミスからのフレンド申請が送られてきた。
「ほい、承認完了しました!」
「良かった! これでいつでも遊べますね!」
世間知らずのアルちゃんは、フレンド申請できて上機嫌である。まあ、実際は拒否とかブロックとかでいつでも断絶したりするんだけどね☆
そうこうしている間に街へと戻ってきた。ちなみに帰りに遭遇したザコとの戦いは取るに足らなかったので割愛しています。
「それじゃあ、時間も遅くなってきたんで、そろそろ落ちます~」
ラブたんが切り出した。
「今日はありがとうございました! またよろしくお願いしますね」
アルちゃんが元気よく返事する。
「お疲れさまでした。またよろしくお願いします!」
俺もアルちゃんにならって返事する。
「あいあい~それじゃまた。ほいっと」
金髪少女はいなくなった。
「それじゃぁ、私もそろそろやめますね」
アルテミスが話しかける。
「今日は、ほんとにっ、ありがとうございました! オマリーさんに誘ってもらえてほんとに良かったです!」
ちょっとやめて、キュンキュンしちゃうじゃない! 両手をプルプルさせながらキーボードを叩く。
「こちらこそ、アルテミスさんに会えてよかったです。またよろしくお願いしますね!」
「はい、また今度よろしくお願いします!」
アルテミスがぺこっとお辞儀をする。
「それでは、お疲れさまでした!」
「お疲れさまでした!」
赤髪女戦士が姿を消した。
ふう、いってしまったか……
今日はなかなか楽しかった。
巨乳女戦士と金髪狩人ゲットだぜ! きゃっほう!
誰もいないところで小躍りしていると、そんな俺を見ている人影がちらり。不審者である。
「オマリーおま、めっちゃ楽しそうやないか……」
そう言ったのは不審者ではなく、俺の昔の友だち、パチョレックだった。
「お、おう……」
それだけ返事するので精一杯だった。
――本日の成果 二人の女の子(外見はね)と知り合いになりました。