ネトゲでシナリオのネタを探すことにしました。⑤
――街外れの草原で、小柄な人型モンスターのゴブリンを相手にしていた。
「そっち行きましたよ!」
アルテミスに向かって、こん棒を持ったゴブリンがごぶりんりんっと突進していく。
俺はぽちっとアルテミス嬢に肉体強化の魔法をかける。
ザコキャラなんて全部片付けてしまっても良いんだが、さすがにネトゲ初心者がゲーム初めて何もできないのもつまらんだろう。
敵数を減らしつつ、支援に徹するというスタンスでプレイする。
「了解です!」
アルテミスの刀がゴブリンの首を切断し、ごぶりんりんっと転がる。残酷描写は控えているので、お花畑に首が笑顔で飛んでいる絵を想像いただきたい。
首の切断面から名状しがたいエフェクトのようなものが発生してアルテミスの『レコード』に記録されていく。いちいち素材を回収しなくていいからストレスフリーだ。
「だいぶ操作にも慣れてきました!」
リアクションコマンドでえへんっと胸を張るアルテミス嬢。
得意げな感じが微笑ましく、娘の成長を見守るような気持ちになった。うちの子はねぇ、本当に賢いんですよ。芸を覚えるのが早くてねぇ。あかん、これは犬だった。
調子に乗ったアルちゃんにちょっと提案してみる。
「この辺のザコはもう余裕ですね! そろそろ強めのモンスターでも狩りましょうか?」
「えっ、でもすぐに死んじゃわないですか?」
ちょっと弱気になるアルちゃん。身の程はわきまえている模様。
ここで、俺はもうひと押ししてみることにした。
「あなたは死なないわ。私が守るもの」
しばしの沈黙…… あれれ? 青髪クローンの場面じゃなかったかな?
赤髪バスケキャプテンの方が良かったかしらんと思案しながらポテチをたべてるとキーボードに食べカスが挟まった。てへへ、仕事でもよくやっちゃうんだよね☆
ポーズ付きで一人てへぺろしてると、画面にポップアップが出現する。
「オマリーさんっ! ありがとうございますっ! ちゃんと守ってくださいね!」
アルテミスはぺこりとお辞儀した。やはりポカポカする人で正解だったみたいだ。
俺は脳内で好感度アップの効果音を再生してから、キーボードを叩く。
「もちろんですよ! 頑張りましょう!」
リアクションコマンドでオマリーは親指をグッと立てた。