三日目、シナリオの進みがやばいです①
――眠い目を擦りつつ、朝から俺は電車に乗り込んでいた。
途中、行きつけのコンビニで昨日のお釣りを貰っていない件について、どのようにお考えか店員に伺った。というかゴネた。ゴネにゴネた。
そんな俺に、コンビニの店員はこう言ったんだ。
「お客様、レシートは持っていますか?」
えっ、レシート貰わないなんて今時普通だよね? なんで俺が悪いみたいな空気になってるの? なんでなんで?
証拠がないとお釣りも貰えないとは、世知辛い世の中になったもんじゃ……
逆になんかクレーマーみたいな扱いされてたしね! まあ、レジ前で寝転がってジタバタしてやったから、もっとタチが悪いまである。
お巡りさんを呼ばれそうになったので、戦略的撤退を余儀なくされて今に至る。
もうあのコンビニには行けないかもしれない……
電車から降りて、とぼとぼ会社に歩き出す。
あかん、睡眠不足で少し暴れたらなんか胃がぐるぐるしてきた。
帰りたくてしょうがないが、有休もあんまり残ってないしな……
アホみたいな顔して休みまくった過去の俺をぶち殺してやりたい。
いや、やっぱり自分は憎めない。悪いのは有休がないと休めない会社のシステムだ。
「おはようございま~す」
オフィスに入り、全身からやる気を振り絞って挨拶をする俺。まさに社会人の鑑!
扉の前でリアクションを待っていると、いつも正面から返ってくる返事がない。
おろろ? 朱理さんはいないのか。取引先と打ち合わせかな?
朝の目覚まし朱理☆ウォッチングが出来なかったため、頭がすっきりしない。
仕方がないので、そのまま自分のデスクに向かう。
横に鎮座したるは我らがプリチーアイドル、ルナちゃんだ。
目が全く笑ってない形だけの笑顔と、人の心が欠落してるんじゃないかと思える毒舌が魅力的な可愛い後輩である。なにそれ、全く可愛くない。
そんなルナルナは、昨日のノリノリご機嫌状態とは打って変わって机に突っ伏している。
ツインテールもしょぼんとなってて元気がなさそうだ。
「おはよう、蛍池。その、大丈夫か?」
ちょっと気を遣って声をかけると、瑠奈ちゃんてば突っ伏した状態のまま顔を少しだけこちらに向けた。この子、完全に私のこと舐めてますね~。
「先輩……おはようございます。大丈夫ですよ~」
「蛍池がそんなに元気ないの珍しいな。寝不足か?」
よく見ると目の下にクマが出来ている。
「ちょっと用事してたら遅くなっちゃいまして。始業時間にはちゃんと起きますから」
そう言って再びうつ伏せになる。
「おう。あと十分くらいだがゆっくりしとけ。寝てたら叩き起こしてやるよ」
蛍池は返事の代わりにツインテールをぴくぴく動かした。なにそれめっちゃ器用。
本当は俺も寝ておきたかったが、蛍池がこれじゃ起こしてくれなさそうだからな。
コーヒーでも淹れて、ルナルナの寝顔でも見ながら萌え萌えしよっと☆
俺は机の引き出しからマグカップを取り出して給湯室に向かった。