シナリオ作成用の俺の嫁が可愛すぎました。⑧
「さてと、それじゃそろそろ落ちよっかな」
ラヴィがぐぐっと伸びをしながら言った。
「あ~、もうこんな時間か」
俺が時計を確認すると、十二時を回ったところだった。寝ないと明日仕事しんどいからな。休みたい。
いやだな~こわいな~。いやだイヤダ嫌ダ嫌嫌嫌嫌蝶蝶蝶蝶蝶蝶蝶嫌ダ……
明日を意識したらいつもの発作が始まってしまった。逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ……
「お疲れさん。またよろしく頼みます~」
「ラヴィ、お疲れさまでした! またね!」
「あいあい。それじゃ、アルル、オマリー。おっつ~!」
ラヴィがジョッキを振り回しながら画面から消えてった。
さてと、そろそろ俺も落ちようかしらんと思っていると、アルルからチャットがあった。
「あの、オマリーはまだ時間大丈夫?」
およよ? アルちゃんてば、まだ遊び足りない模様。どうすっかねぇ。
会社、仕事、しんどい、行きたくない、行かない、もっとしんどい、眠い、寝たい。
「まあ、あと少しくらいなら大丈夫」
ネガティブな考えを全て打ち消し、アルルに返事をする。俺マジカッケー!
「じゃあ、もうちょっとだけ戦闘の練習に付き合ってくれないかな?」
アルルがお願いジェスチャーつきでそう言ってくる。
さっき甘やかすと決意したところだし、断るわけにもいかないか。
「おっけ。じゃあ、草原でもいきますか~」
俺はジョッキをテーブルに置いて立ち上がった。
「ありがとう!」
アルルは全力の万歳で喜びを表現する。この子、二日目なのにエモーションはやたら使えるようになったな……
「んじゃ、俺に着いてきて」
大きく手を仰いで着いてこいのポーズ。エモにはエモで対抗である。
「わかった!」
お勘定を店員のNPCキャラに渡して外に出ると、草原まで走りだした。
アルルもちゃんと俺の後をついてきているな。よしよし。
さて、草原に到着である。
「んじゃあ、刀の基本となる動きでも練習してみよっか」
「はい!」
「ん。ちょっと待ってね」
「???」
アルちゃんの頭上に大量のクエスチョンマークが飛び交っている。まあ待ちなさいって。
メニューウインドウを出して装備欄へ移行し、防具を全解除。そして武器欄から手持ちの日本刀を一本選択する。
オマリーの職業である『騎士』は近接武器の刀や斧なんかも一通り装備できるようになっている。ただ、メイン武器の槍以外を使うと、適性による能力補正が受けられないので、まず使用することはない。
じゃあなんで日本刀を持ってんだというと、こんなこともあろうかと用意しておいたぞってなもんだ。ほんと、ご都合主義万歳!
鎧を脱いだのは防具の重さでAGIが下がるため、なるべくアルルのスタイルに近づけるためだ。
つまり、一度俺が実践してそれを覚えてもらおうって寸法である。
「これから刀の動き方をやってみるから、アルルはちょっと見学してて」
「そういうことね。わかった!」
うむ、理解が早くておじさん嬉しいでござる。
おっ、ちょうどいいところにゴブリンが来たな。
俺は半裸状態で刀を構えた。
一気にゴブリンに向かって突進する。
突進と同時に剣術の基本となる九つの斬撃を同時に放つ!
『壱』『弐』『参』『肆』『伍』『陸』『漆』『捌』『玖』!
攻撃モーションのキャンセルに次ぐキャンセルで防御不能の剣技を発動させた。
はい、嘘で~す! そんなこと出来るわけがない。
でも、一度やってみたかったんだよな。九頭龍閃。あとは、牙突とか。
実際行ったのは、斬撃を浴びせてすぐに、モンスターを中心にして円を描くように回避移動しただけだ。
敵に視点を合わせながら左右に回避するのが基本動作である。あとはわからん! 本職じゃないしね☆
「というわけで、敵を中心に一回攻撃したら円を描くように移動。これを練習していこう」
「わかった、やってみるね!」
アルルとの練習が始まった。