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シナリオ作成用の俺の嫁が可愛すぎました。⑤

 俺たちは、街の中心から少し外れた酒場に入りテーブルを囲んでいた。


 周りを見渡すと、冒険者風のNPCがジョッキを片手に歌えや踊れやの乱痴気騒ぎである。


 ウエイトレスが飲み物を持ってくる。赤、緑、紫の毒々しい色味の液体がジョッキにそそがれている。

 酒場で飲み物を頼むと、一定時間だけ能力が上昇するって寸法だが、なんで帰って来てから飲んでるんだって話である。


 まぁ、せっかく酒場にて来たので、雰囲気作りの為に頼んでみた。

 ラブたんがグビグビっと緑色の液体を飲み干す。


「ぷは~! やっぱ人生、この時の為に生きているようなもんよね!」

 げ、先を越された! それ俺が言いたかったセリフ!


 ラブたん、中々に侮れぬ奴よ……

 少し遅れてアルテミス嬢が反応する。


「私が言おうと思ってたのに!」

 お前もかい! みんなミサトさん好き過ぎだろ…


「ふふん、こういうのは早い者勝ちよん☆」

 なんかモニター越しのドヤ顔が思い浮かんでイラっ☆としました。

 次は負けない!


 さてはて、酒場に来たものの何をするつもりで来たんだっけか?


 ……あ~、思い出した。交流深めようってことだったか。

 喋るの苦手なんで帰ってもいいですか? あまり知らない人と話すの気を遣うし、疲れるし。


 何より……俺の素がばれるとやばい! 今までめっちゃ猫被って話してるのに、バレたら水の泡だにゃん! シナリオ書けなくなってしまうやん……


 まあ、さっき気持ちいいくらいに即答でオッケー出しちゃったし、なるようになるか。

 後悔するけど反省しないのが俺である。

 

 酒飲みラブたんがおもむろに口を開いた。

「ひとまずお疲れさま! あと、改めてこの前はありがとうございました。お陰で赤目黒龍も倒せました」

「気にしないでください。俺らも便乗して倒せたんで!」

 この金髪姉ちゃん、意外に律儀な性格の模様。巻き込まれてあんなに心の中で毒づいた俺は本当に糞野郎なんだなぁと再認識しました。てへぺろ☆


「そうですよ、私なんて全然役に立たなかったですし……」

 なんか逆にしょんぼりしだしたアルテミス嬢。

 この子が俺くらい性格曲がってりゃ楽なのになぁ。何しても心が痛まなくなるしね。

 ちなみに俺の盟友であるパチョレックには、どんな扱いをしてやっても全く心が痛まない。

 いつでも俺より不幸であってほしいナ☆


「そういえば、アルテミスさんは昨日が初めてだったんだっけ?」

「そうなんです。ネットゲーム自体も始めてだった時に、オマリーさんに声をかけられたんです」

「ほほう……?」


 金髪ラブたんが訝しく俺を見ている……ように感じた。


 違うんですぅ! 俺は直結厨じゃないですよ! 酷い誤解である。

 やってることは怪しさ全開だけども! どーせなら中の人は女の子がいいな☆ とか思ったけども! 男でも女でもどっちでも良かったんや…… 仕事のシナリオ書ければそれで良かったんや……


 そもそもネットで出会いを求めるとか中々にハードル高いんじゃないかと俺は思っている。

 外見も中身も、それこそ性別もわからんような人間とリアルでどうこうしようとか、凄すぎて尊敬しちゃうまである。


 仮に俺が女子だったとして、リアルで会うことになったとして、俺みたいな糞野郎が現れた日には、そこからの人生終わったも同然だ。何されるかわかったもんじゃない。


 監禁されて強姦されて動画撮られて、風俗デビューさせられてしまう。

 なんなの俺、さすがに鬼畜すぎるだろ。そこまで酷くねーよ!


 でも最悪、そんな事態に発展してしまう可能性は少なからずあるだろう。

 自分の身を守れるのは自分だけである。

 俺は自分で責任を取れる範囲でしか人と繋がらないし、繋がりたいとも思わない。


 だから俺は、この金髪狩人の疑惑をきっぱり否定しておく。

「……ラブさんが懸念してるようなことはないですから。オフ会含めて、リアルの交流は絶対やらないですよ」


 それを聞いたラブたんが陽気にジョッキを振り始める。

「そっか。それなら心配なさそうやね! ごめんね、変に疑っちゃって」

 本当である。痴漢とかの冤罪はこうして出来上がるのだと思い知りました。

 みんな、紛らわしい真似は絶対やめようね!


「???」

 一人『はてな』を作ったアルテミス嬢が、何のこっちゃという雰囲気を醸し出してる。

 この子はもう少し、人を疑うことを覚えた方がよさそうである。ネトゲに関わらず色んなとこで騙されそう。

 アキバで絵とか買わされちゃうんだろな。……ごめん、それは俺だったわ。お姉さんのぱんつ見えてたから、思わず買っちゃったんだ……


 ネトゲ初心者のアルちゃんがトラブルに巻き込まれないよう、俺が色々教えていこう。

 それが最初に声をかけた俺の責任でもある気がしない気もない今日この頃でした。


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