シナリオ作成用の俺の嫁が可愛すぎました。④
結論から言うと、暴れ一角ウサギの群れは木っ端みじんになった。
髑髏の形した雲が微笑を浮かべて山岳地帯を覆う。
もちろん、爆発に巻き込まれた俺もただでは済まなかった……こともなかった。
はいは~い、オマリーさんてば無事でした!
攻撃アイテムのプレイヤーへのダメージは効果が百分の一になるのである。
ご都合主義万歳! ただ、ふところ的には大損害である。ゲームマネーではなく、リアルマネーな。課金アイテム、高かったのになあ……
ひとまず危機は脱した。あとは群れから離れていた一角ウサギを一掃するだけだ。
「あらかた片付けました! 一気に畳みかけちゃいましょう!」
「了解しました!」
「おけです!」
各自の返事を皮切りに一角ウサギに攻撃する。ここからは消化試合である。舞々(チョムチョム)開始である。
――一方的な虐殺が始まった。
逃げ惑うウサギさんにラブたんは容赦なく矢を射かける。アルテミス嬢は先ほどの報復とばかりにウサギさんの腹に何度も何度も刀の切っ先を刺し込む。お前らの血は何色かと問うてやりたい。
あ~、今更ながら可愛い動物になんてことをって人に釈明しておくと、暴れ一角ウサギはモンスターである。ゲームとはいえ人を襲う化け物だ。姿なんかあれだ、火星で進化したゴキブリみたいな顔してるから。
ウサちゃんから流れる血が地面に染みわたり、綺麗な雛罌粟が咲きました~。
辺り一面お花畑である。ワ~、ナンテメルヘン! なぜ咲いた花が雛罌粟かはググってね☆
俺達は暴れ一角ウサギの群れをなんとか殲滅した。
しかし手持ちの傷薬は全てなくなり、アルちゃんなんかは満身創痍である。
さすがに先に進んでる場合じゃないな…… しゃ~ない、一旦戻りますか。
「アルテミスさん、ラブさん。傷薬もなくなったし、街に一度戻りましょう~」
俺の提案にアルテミス嬢はカクカクした後に空手チョップを繰り出す。違うか、ゴメンのポーズかな?
「すいません、足を引っ張っちゃって……」
「いえいえ、全然そんなことないですよ! むしろ二日目から中級の地域は早すぎましたね。こちらこそすみません」
先に謝られちゃうと、強く出られなくなる不思議。思わず謝っちゃったよ。
「うちも楽しめてるから問題ないよ~。気を使わなくてだいじょぶよん☆」
軽いノリでラブたんも答える。本当に気にしてない模様。
「お二人とも、優しい…… ありがとうございますっ!」
アルちゃんはペコリンペコリンと俺とラブたんに向かってお辞儀をする。
本当に素直で良い子だなぁ…… これで中身が五十代のおっさんとかだったらどうしよう…… いや、考えまい。考えたら負けだ。
アルテミスの中の人について思案していると、ラブたんからひとつの提案があった。
「そだそだ、せっかく一緒に遊ぶようになったんだから、街に戻ったらちょっとお話しないかな? 交流交流☆」
ふむ。そういえば、この二人のこと名前くらいしか知らないな。プライベートのことを聞かれるのはゴメンだが、打ち解けるには良い機会かもしれない。
「オッケーですよ!」
少し遅れてアルちゃんからも返事がある。
「私も、お二人ともっと仲良くなりたいです!」
「決まりだね! じゃあ早速、街へレッツゴー!」
そんな訳で、三人トーク会の始まりである。