シナリオ作成用の俺の嫁が可愛すぎました。③
――山岳地帯
「オマリーさん、そっち行きました!」
「ほいほいっと」
突進してくる大イノシシの眉間を突き刺す。頭から芳しいお花のエフェクトが大量発生した。脳漿もメルヘンである。
大イノシシの相手を終えると、後ろからトロールが向かってくる。
動きの遅いトロールにラブたんが矢の雨を降らせた。
「大きい的はウチに任せてちょーだい」
前回も思ったが、金髪ラブたんはかなりいい腕してる。こりゃ楽だわ。
動きを止めたトロールにアルテミス嬢が斬りかかる。
トロールは真っ二つに裂けて天国の階段を嬉しそうに昇って行った。
アルちゃんも装備を変えて、かなり戦闘力が向上している模様。
俺の能力強化も併せて危なげなく倒せるようになっている。
ただ、俺も含めて三人とも大味すぎるんだよなぁ。
そんな時に、高台に登っていたラブたんが緊急信号を発する。更に続けてポップアップが表示。
「暴れ一角ウサギの大群がこっちに向かってるよ~」
あら、集団のザコモンスターが来ちゃったか……
こういう量で勝負してくるザコモンスターが、俺達のパーティにはきっつい。
突撃槍、弓、刀で一度の敵を相手にするには不向きなのである。
最も相性が良いのは刀のアルテミス嬢だが、初心者同然の彼女に任せるのは少し心許ない。
戦いたくない。めんどくさい。ザコの相手なんかいやだいやだいやだ!
「突撃します!」
俺がグズグズと左手でケツを掻いていると、一番戦って欲しくないアルちゃんが突撃するとかぬかしだした。ばーかばーか! あんたが戦うとこっちの手間が増えるざんす!
仕方ない……
「アルテミスさん、先に俺が攻撃しますのでラブさんと一緒にサポートお願いします!」
「おけです!」
「了解です!」
二人の了承も得たので、先に突撃する。オラオラ、ケツの穴に槍の先端突っ込んで前歯ガタガタいわせたるわい!
先頭にいる暴れ一角ウサギの前歯に一突き入れる。ケツの穴から色んなものが噴き出した。
恐らくイチゴジュース的な何かだと思う。
横を通り過ぎたウサギに振り向きざまの一撃を入れる。肛門から口に到達し、前歯が弾け飛んだ。ぜっこーもんである。はじけ飛んだ前歯が左右のウサギの首に刺さり、二体の頭が並んで転がりこっちを向いた。ゆっくりしていってね!!!
次々と湧き出る大群は俺をすり抜けアルちゃんに向かって襲い掛かる。だからそっちはダメだってば。
アルちゃんに向かった三匹の暴れウサギに矢が突き刺さる。ラブたんの射た矢はどれも眉間を的確に射抜いていた。さすがラブリーラブたん。お主こそ、天下無双の豪傑よ!
眉間を射抜かれたウサギはみんなよい子ちゃんになっている。改めていっておくがこのゲームは全年齢対象である。
アルちゃんも頑張って奮闘中。刀の横薙ぎの一閃がウサギを切り裂く。切り裂いた部分から炎が発生し、一角ウサギを消し炭に変える。存在は消えさったとしても、俺たちの心にずっと生き続けています。
「めちゃくちゃしんどいですね…」
アルちゃんのぼやきが入る。
最初のうちこそ圧倒していたが、徐々に旗色が悪くなってきた。というか、アルちゃんのダメージが蓄積してきている。俺とラブたんでフォローしつつ、傷薬でごまかしてきたが限界に近い。っていうかウサギ出過ぎである。
護衛しながらの戦闘はなんていうかストレスが溜まる。
せめてダメージ蓄積で防具破壊とかあったら目の保養できて楽しく戦えるのだけど、残念ながらそんな機能はない。つかえねーなこのゲーム。
そのとき、アルテミス嬢のおっぱいが揺れた。間違った、ダメージを受けて倒れた。傷薬も底を尽き、いよいよもってやばい。
仕方ない…… 奥の手を使うか……
俺はカタタタとキーボードを打ち込む。
「アルテミスさん、ラブさん。一瞬でいいのでウサギの集団から距離をとってください。一気に片付けます」
ウサギと戦闘中で手を離せない二人は緊急信号で了承のサインを出す。
さて、後はタイミングだ。
アルちゃんとラブたんがウサギの密集地帯から抜け出す。オッケーオッケー。
俺は一角ウサギの中心地に突進をかける。
突進しながらアイテム欄を表示させる。リストにある一つのアイテムを選択。
『超大型モンスター用炸裂弾』 ――上級モンスター用の強力なレアアイテムだ。
背に腹は代えられない。俺は愛する者を守るために、このアイテムをっ、使うぞ!
もったいない、勿体ない、勿体無い……っ使用! ぽちっとな。
その瞬間、画面は爆炎と煙で覆われた。