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一夜明けて会社に出社します。④

 コツコツと音を立てていたヒールが俺の前で止まる。

「江坂君。ちょっといい?」


 今回のプロジェクトでキャラデザインを担当する菜畑可憐なばたかれんだ。髪は胸元まである明るめのブラウンで、ゆるふわパーマがふわんふわんしてる。髪の毛が揺れるたびになんかいい匂いがする。間違っても主人公を見つけて体当たりして来たりはしない。


 肩からかけたストールが少し落ち着いた印象を抱かせる、なんというかめちゃくちゃ美人さんである。女子である。俺の人生でほとんど関わることがなかったタイプの女子である。ポテチの袋に空気詰めてクンカクンカフンガーしたいざます! コンソメの匂いとかしそうなので台無しでガンス。


「っと…… 菜畑さん、どうしたんですか?」

 あ~、あかんわ~これ、緊張するわ。

 女子会とか毎週開いていそうな菜畑さんは少し言い淀むように小首をかしげる。くっ、いちいち仕草が様になってて直視しづらい。


「えっと、今回のシナリオなんだけど、そろそろ登場人物のイメージは固まってきたかな?」

 最も触れてほしくない心の奥底に踏み込んできた。女子って怖い! SAN値ピンチである。


「すみません、今イメージを固めてるところでして、来週の会議までには発表できるようにしておきますので、もう少し待ってもらえますか?」

 神妙な面持ちで菜畑さんに謝罪する。会社の処世術は万事全て謝ったもん勝ちである。あと、ゴネたもん勝ちである。ゴネ得ゴネ得。


 菜畑さんは素直に謝罪を示した俺を一瞥すると、ふっと微笑んだ。

「わかった。来週の会議、楽しみにしてるね」

「本当にすみません。早めに設定が決まったら、菜畑さんに連絡しに行きますので」

「ありがとう。よろしくね」


 菜畑さんは微笑みながらコツコツと音を立てて去っていった。ふう、なんとか凌ぎきった。

 帰れ帰れ! シナリオなんか誰が早めにすっか! あ、でも今日の菜畑姫との会話は心のメモリアルとして墓まで持っていきたいと思います。

 今日のときめきをメモリアルっと。

 菜畑メモリアルを脳内リフレインでヘビロテしたらエブリデイがカチューシャである。


 妄想にトリップしてると、横に鎮座するちんちくりんツインテールのルナルナお嬢は、ひどく不機嫌な面持ちでブスっとしている。

「先輩、私の時と態度違いすぎないですか? デレデレしてるし、なんかキョドってたし。キモイし、うざいし、キモイです」


 だからなんで二回言うかなこの子は。さすがの俺もオコだよ? おうおう!

 それに俺はキョドってなんかねーし! キョドらされてんじゃねぇ、キョドってんだ!

 ん? じゃあ俺はキョドってるのか? よくわからんくなってきた。


「お前が俺にもう少し優しく接してくれたら態度も変わるかもしれん。ああでも、お前に優しくしてもメリットなさそうだから無いわ。あとキモイ言うなし!」

 聞いてないだろうが一応抗議しとく。まあ、蛍池も菜畑さんとタイプは違うが、文句なしで可愛いと思う。だが言動がアレ過ぎてNGだ。うちの会社は朱理さんといい蛍池といいこんなんばっかだ。菜畑さんは心のオアシスである。


「まあ、先輩のことなんてどうでもいいんですけどね。用事終わったならさっさとチェックを進めてください。キモイんで」

 ルナルナはちょっと語彙が乏しいな。キモイなんて何回言われたって悲しくないもん! あ、これは目薬だよ?


 毒舌ルナルナは言いたいことだけ言って作業に戻ってしまった。全く、勝手な奴である。


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