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一夜明けて会社に出社します。③

 日当たりの良い窓際に並ぶ机の一番端が俺の席だ。東から昇ったお日さまとおはこんにちは。家に帰るころには西へ沈んでこんばんばんは。これでいいのだ。


 隣には既に出社してる、蛍池さんとこの瑠奈ちゃん。今日も元気に短めのツインテールがぴんぴんしてる。どこぞの古代怪獣かと思いました。

 怪獣ツインテールのルナルナは、先輩様が出社したにも関わらず、挨拶もせずにおっきめのヘッドフォンを片耳に当ててフンフン言っている。フンフンディフェンスである。


 なんかえらいご機嫌だな、こいつ。なんか良いことでもあったのかしらん。

「あ~、蛍池。おはようございます。拓馬先輩だよん!」

 今日一番の笑顔にダブルピースで横から朝の挨拶を決める。社会人の基本である。


 そんな愛情溢れる先輩の挨拶を見せられたら、キラッ☆とウインクピースで返してくれるに違いない。おはっよ~! あなたのアイドル、ルナルナだっよ~☆的な。


 そんなアイドルナは、先ほどまでのご機嫌ほわほわ笑顔は全く消え失せ、首を少し曲げて極寒の視線を浴びせてくる。こわっ!


「なんだ、先輩ですか。どこの変態かと思いました。仕事以外で話しかけないでくれますか? あと、死んでくれますか?」

 ひどいよ蛍池たん…… 挨拶するのも仕事ですよ。


「知ってるか蛍池。最近は逆ハラで訴訟を起こすのがブームらしいぞ」

 ソースは俺。すぐに告訴してやりたい。


 蛍池は小馬鹿にしたご様子で両手を上げてオーノーのポーズ。チャームポイントのツインテールがスウィングスウィング。アメリカンスタイルですね。

「先輩が敗訴するに決まってるじゃないですか。むしろ訴えない私を感謝して欲しいですね」

「すみませんでした。もう、許してください」

 うちの後輩は、なんていうか攻撃的すぎる。俺はもっと甘やかされたいんだ! こんな後輩は嫌だ! もっと懐いてくれる後輩がいいんだ!


 半べそかきながら、しずしずと席に座る。蛍池も俺の相手はこれまでとばかりにモニターに向かった。


 俺は開発ツールを起ち上げ、キーボードをタタタタッと打ち込みコーディングする。

 ここ最近はシナリオ書くので必死だったからなぁ。

 その間はほとんど蛍池に任せてたので、あいつがやった部分のコーディングがミスってないかチェックするのは俺の仕事である。


 ほい、テスト。自動的に流れる文字列をぼんやり眺める。

 あ、止まったか。蛍池ちゃんもまだまだ甘いねぇ。


 コードの中身をチェック。小姑のように人のミスはチェックだ。

「蛍池、ここで呼び出す関数間違ってるぞ」

 横にいる後輩に、ミスを指摘する。

「あ、本当ですね。すみません、すぐに修正します」

 指摘した部分をペちぺち直し始める。


 仕事の話をしている時だけはえらく素直な後輩である。普通に話しかけたときもそのくらいの対応をしろよな。コミュニケーション大事!


「っと、直しました。確認お願いします」

「ほいほい」

 アップされたデータを開いてコードの確認。うむ、問題なさそうだ。

 テストを実行。文字列がどばどば流れ出す。こっちもオッケーっと。


「あい、直ってるの確認したわ。だいぶまともに書けるようになったな」

 素直に成長を褒めてみた。いや、実際二年目にしてここまで出来れば大したものである。

 でも、当の蛍池ちゃんってば、せっかく褒めたというのにアホ面向けてこっちを見ている。

 しばらくぼけっとしてたが、我に返ると、急に目線をそらしてツインテールを指でくるくるし始めた。

「こ、これでも先輩の代わりに仕事こなしてますからね! 本当に作業量多くなって最悪です! したがって先輩は最悪です!」


 悪態つきながらも珍しく照れた様子をみせる蛍池。おおっ、ちょっと可愛いかもしれぬ。

 これ、もしかしてずっと褒め続けておけば、俺への態度も改まるんじゃね?


 ルナルナ好感度アップ作戦を考えていると、俺の席に誰か近づいてきた。


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