一夜明けて会社に出社します。①
「会社に行きたくない」
いやだいやだいやだもーいや! ひっひっはぁぁぁ。あいつらみんな俺に冷たいんだよ!
上司も後輩もくそクソ糞っ! 誰も俺を認めやがらねぇ! なんで俺がこんな目にくそっ!
ばたばたする。じたばたする。布団を噛みしめる。頭を掻き毟る。
一連のルーティンワークが朝の挨拶である。おはようございます。
穏やかな朝日を浴びながら激しい怒りによって目覚めてしまう俺。
はあ…… 支度しよ。
布団を蹴飛ばし起き上がる。
最近は朝になるとめっきり寒くなってきた。そろそろ毛布でも出そうかね。
冬の装いが近づいてきた十一月。スズメさんは元気にちゅちゅんがちゅん。
寝間着代わりのタンクトップを脱ぎ捨て、パンツを脱ぎ捨てぱぱんがぱん。
もうかなり気温は低くて寒いのだが、俺は季節にかかわらず服を着こんで寝るのが昔から苦手だ。なんていうか、開放感が足りない。
全裸のまま風呂場に行き、シャワーを浴びる。風呂場に置いてある歯ブラシでついでに歯を磨き、風呂から上がればタオルで水をふき取り、服を着て準備完了である。この間わずか十分。
疾きこと風の如しである。
マンションを出ると、いつもの通勤路が日差しで明るく照らされている。
夜中と違って警察に不審者通報される心配もない。ひゃっほい!
途中のコンビニに寄り、野菜ジュースを購入する。
手に取った千円札はピン札だ。今日は気分が良い。野菜ジュースが俺を更にフレッシュにしてくれる気がしてきた。
お釣りを忘れた。後ろを振り返るとコンビニは先にある。ここで俺は思案する。
心のゆとりあるフレッシュな人間がたかだか千円札のお釣りごときで引き返したりするだろうか? いや、しないだろう。
俺は太宰氏のように化かされはいない。
俺は今電車に乗っている。俺は化かされてはいなかった。馬鹿である。
心底後悔した。お金のゆとりは心のゆとり!
お釣りを渡さなかったあの店員が全部悪い! 絶対二許サナイ。
朝から全くもってついてない俺は、陰鬱な気分で出社するのであった。