71.
「つきましては・・・この二人をどうかお納めいただきたい」
あれ?
何だろう・・・。
変な話が出て来たような・・・・・・。
顔を上げていたクェン爺さんはまた頭を下げる。
その後ろでは女性たちがずっと頭を下げたまま。
と、それは置いといてだ。
まずはこのクェン爺さんの話を思い返してみよう。
まぁ、なんだ。
あれだ。
手短に言えば謝罪と命乞いという所か。
後ろの二人を巫女として差し出すので、どうか村を救ってください。
そんな話だったような気がする。
ちなみに村を救うというのは、村人を返してもらい、その上で食料をくださいという意味だ。
何というか、都合のいいお願いだと思うのは私だけだろうか。
ただし、罪を犯した者には今罰を与えているし、これから加算するとしてもそれは「彼らに」で、あって、村全体に課す罰ではないつもりである。
それに話では
「クェン殿。このような事で取次ぎを頼まれたとは。不愉快極まりない」
「すみませぬ、ザンダ殿。しかし、このままでは我々が生き延びられませぬ。これしか思いつかなんだのです」
「食糧など我らと共に狩りに出ればよかろう! それとも使い様の采配にケチをつけるという事か!」
「そのつもりはありませぬ! が! このままでは死者が出てしまいます!」
『ザンダ殿! クェン殿! 二人ともおやめなさい! 使い様の御前ですよ!』
言い争いになるかと思いきや、ライサの一言でその場は収まった。
しかし、何か引っかかるような・・・。
「クェンよ。まず、どのように聞いているのか・・教えてくれぬか?」
「は、はい・・・この度の事で使い様は大変お怒りなられたそうで・・・怒りを買った者たちはもう村には戻って来れぬと・・・・それと、食料も少なくすると」
・・・
・・・
・・・・・・・
うん?
どこがおかしい?
どこかおかしいからこの爺さんは後ろの二人を贈り物にしようとしているわけなんだが・・・。
『クェン様。少々話に語弊あったようです。私の方から訂正させていただきたいのですが・・・』
少しだけ振り返ると、ライサがこちらを見ていて、「よろしいですか」と言っているようだった。
それに軽くうなずく。
もしかすると、というか、絶対、私が分かってない何かに気が付いているのだろう。
「え、あ・・・どこか間違っておったのでしょうか?」
『伝言を頼んだおり、少々言葉が足りていなかったようです。まず、あなたのいう「怒りを買った者達に関して」ですが、しばらく使い様の下で働くこととなりました。ですが、使い様も事情を良く理解してお出でです。なので、すぐとはいきませんが、村へ帰らせないという事は無いとご理解してください』
「は・・はぁ」
『そして、食料についてですが・・・これだけの森です。ここに住む全ての者に分け与えられるほど食料があるわけではありません。そこで前もって、そのような断りをしているのです。そうですよね。ザンダ様。誤解を招くような伝言をしてしまい、失礼いたしました』
「な、なんと・・・そういう事でしたか! ・・・それならなおさら、お願いがございます」
あぁ、そういう事!
つまり、永久に戻って来ない、または死んだと思っていたという事で。
食料を減らされたのは自分たちへの罰だと思ってたと・・・。
私の言い方が悪かったというしかないな。
そうしているうちにライサの言葉にザンダが頷き、納得した様子のクェン爺さん。
すぐに頭を下げて。
「どうかあの者たちをすぐにでもお返し願いたい!このようなお願い、失礼なことも百も承知。ですが、あれらは我が一族にとって数少ない男たち。あの者たちを失えば我が一族の存続も絶たれてしまうのです。あの者たちが戻るのならば、どのようなことでもしましょう!どうか、どうか!平にお願いいたします!」
額を・・頭のてっぺんを床にこすりつけるほど頭を下げるクェン爺さん。
あの顔でよくそんな事出来るなぁとか思いつつ。
彼らの予定を思い出す。
正直言って今のシャルの後追い以外何も予定していなかったのだ。
とはいえ、狼・・・犬?・・・の機動力を考えれば色々と使える者たちだと思う。
そう思ったから先生も今後も罰を与えると取れる言い方をしていたのだと・・思う。
シャルの毛並みを堪能することに専念していたから何言っていたか忘れかけてるけど。
と、すぐに返すとしても、今呼び戻すことができない状態だ。
ここで確約して帰ってこないと騒がれても面倒だし・・ここは。
「うむ。考えてみよう。そうだな・・話し合いの場までには結論を出しておこう」
「あ、ありがとうございます。よろしくお願いいたします」
よし・・・って、あれ?
そういや、前にも同じこと言って。
てか、話し合いの場っていつになるんだろう?
「さて、ザンダよ」
「は!何でしょうか?」
「場所については用意したが、いつ頃、集まれるのかな?」
「蜘蛛族の方も、我が方も、数日中には集まれるかと」
「そうか。では集まり次第、連絡を。連絡あり次第、案内役を送ろう。ライサ、このことは蜘蛛族のシャライアにも伝えておいてくれ」
『承知いたしました』
「さて、ほかに何かあるか?無ければ、これで終わりとしよう」
周りを見渡せば、誰もが黙り込む。
よし、これで終わりだ。
さて・・ご飯を食べて・・・・集会に名に話さないといけないかリストアップしないと。
はぁ・・・・気が重い。




