70.
「よく眠れたかな? リー殿?」
朝一番、起きると共になだれ込んできたメイドたちに朝食を軽く口に入れられて、着替えさせられ、昨日とは別の天女と言ったらこんな感じと言った雰囲気の姿にされ、リーさんが話があるそうという事で呼び出されたらしく、いつもとは違う部屋へ連れてこられて・・・。
そこにはリーさんが地面に座り頭を下げていた。
その前には立派な長椅子が一脚。
その周りには先生にザラップ、マリアさんに私を連れてきたリアともう一人のメイドさん。
あとギルバさんとなぜか森の奥に探索に行かせた二人も控えていた。
こんだけいるが、それほど狭いと言う印象は抱かない部屋で・・・・。
うん、パッと見、なんか中華っぽい装飾の部屋だ。
中華ってのがよくわかんないけど。
何はともあれ、長椅子にちょこんと座ると私はリーさんに声をかけた。
「は、とても良く。それにしても、あなた様は我が祖国の事を良く知っておいでのようだ」
顔を上げ、周りを見渡し言うリーさん。
なるほど、中華と言うのはリーさんの祖国と近い文化らしい。
それか、前のダンジョンマスターがリーさんの祖国の事を知っていて作ったのか。
それは分からないが・・・・。
先生たちは何か知っていたのだろう。
ここやたぶんリーさんが休んだ部屋をそういた部屋にしたのだろう。
「にて、話とは?」
「はい、その前に一つ、質問に答えていただきたい。あなたにとって民はどのような存在か?」
「・・・民・・・ねぇ・・」
周りを見渡し、数日前の式典を思い出す。
ここにいる者たちも、あそこに集まった人々も彼の言う民という事で・・。
あと、森のレムたちにシャルたち、スライムたちも、そうか。
私にとって彼らはどういう存在か・・・。
「わが師であり、守るべき存在・・・・だろうか」
「・・・・・なるほど。良き答えを聞けました。では、このたびの申し出、いくつか条件を呑んでいただけるのなら、喜んでお受けさせていただきたい」
「内容によるが・・・まずは聞かねば始まらぬな。良かろう。申してみよ」
「幾人か親類、知人を連れてきたいのです。つきましては、助力をお願いいたしたく」
「ふむ・・・それは構わぬが・・どれくらい連れてくるのだ?」
確かコアの説明では、確か・・・国に愛想尽かして山に籠った大御所役人・・・と言う触れ込みだったはずだ。
その知り合いとなれば、それこそ幅広いに違いない。
その上・・・だ。
その人一人という事は無いだろう。
その一族郎党となれば、ずいぶんの数になったりしないだろうか・・・。
それこそ、問題の火種になりかねないんじゃ・・・。
「親類と言いましても私は独り身。親はもう無く、兄弟が居るのみでして。それと私と共に宮廷を離れた者たち数名に声をかけますれば、せいぜい多くとも60も居ますまい」
・・・・・はい?
60人前後ってことでしょうか?
まるで少ない数と言う風だけど・・・それってそれなりの集団ですよ?
だって、それなりの村って、それぐらいでしょ?
「う・・うむ・・・・・それは・・・何とも・・」
「呑めませぬか?」
リーさんの言葉に私は先生の方を見る。
それに気付いた先生は一つ頷くと。
「連れてくるのは構わない。だが、それにはこちらも条件を付けなければならないが?」
「それは、承知しております」
「では、主から何かあるかな?」
「うむ・・・連れてくるのは良いが、自分たちの事は自分たちでしてもらいたい」
「は?はぁ、それは構いませんが」
「では、レイアード。12階に適当な場所を見繕ってくれぬか? あとは任せる」
「・・・承知した。細かい詳細についてはこちらで決めよう。主よ、失礼する。タマ殿。悪いが付いて来てくれるか?」
「承知しました。失礼します。リナ様」
いつの間にか居たタマに声をかけ、何も知らないリーさんを連れて出て行くのだった。
後で文句が飛んでくるだろうか?
それはそれで嫌だなぁ。
~・~・~・~・~・~・~・~
『リナ様。早いのですが、お昼の用意ができました』
「ん。今行く~」
久々に実家のベッドでゴロゴロしていたらマリアさんが呼びに来てくれる。
でも、ただゴロゴロしていたわけではない。
幾人かのメイドさんにはエアリア連れて、元奴隷たちをもう一度同じ順番で居住予定地を巡って、居住地を決めさせることを命令したし。
騎士団には捕虜たちの監督とかもろもろを命じたし。
先生たちの話はタマとコア経由で筒抜けだし。
エアリアには村の図案をいくつか作って渡してあって、その中から居住地にあったモノを使えって言ってあるし。
あとする事と言えば今後どうするかを考えることだけど・・・めんどくさいなぁ。
っと、まずはご飯、ご飯。
『リナ様。少々困ったことが起きました。すみませんが』
部屋を出ようとしたらそこにはマリアさんが。
深々と頭を下げたと思えば、その手には服が一着・・・。
はい、困ったことなんですね。
着替えなんですね・・・。
分かりました、逃げません。
だから、後ろのメイドさんたちの壁はいらないと思うんです。
~・~・~・~・~・~・~・~
「使い様。これになるは狗族が長、クェン。この度のことで取次ぎを頼まれ、ここへ連れてまいりました」
「このような機会を与えていただき、誠に光栄に存じます。使い様」
「うむ。にて、何事かな?」
いつもの家の二階。
多目的室に居るのは一番前に深々と頭を下げている老犬と言ってもいいお爺さん。
土下座という物だろう。
それと同じ体制の2名の若い・・犬・・・狼?の獣人の女性。
それも、怯えた様子で。
その後ろにザンダがいて、私の後ろ脇にレムたち。
そして、ここの管理をしているメイドのライサとマリアさん。
タマも先生もいない状態ていうのは気が重いんだが・・・。
それでもまずは感情を表に出さないように笑顔でっと。
まったく!! めんどうだなぁ、もう。




