69.
ずいぶんお待たせしました!
考え過ぎて変に終わったかも・・・。
「これはどういう事でしょうかな? 仙人殿?」
困惑気味の顔でリーさんは問いかけてきた。
ただし、たぶん目線は私の上を向いている気がする。
つまり、その先、先生に向かっての一言であろう。
それにどう反応するのか、先生を見。
先生は肩をすくめ、次の瞬間には、いつもの顔に戻っていた。
隣ではザラップもいつもの骨に戻っている。
服装はそのままだけど。
「謀ったと思われているならば、ここで謝っておこう。だが、これは交渉事。いつ何時、何かあるか分からぬ席なら、なおの事、我が主の安全が確保できるまで、隠すのが常識だと思っているのでな。このような手の込んだことをしたまで。何かあるかな?」
「・・・・・・はぁ・・・いや、そう・・ですね。仙人とはいえ、このような幼子ならば何かあるかもと考えるのも・・・いや、こちらも失礼した。突然の事で戸惑ってしまったようだ。それにしても・・・・・幼き仙人殿。数々の非礼お許しください」
ブツブツ何かつぶやいているような様子のリーさんは私の前に跪くと私と目線を合わせた後、頭を下げた。
しかし、非礼とは何ぞや?
それに私は首を捻り・・・分からないのでこの場は流す事にしよう。
ここで聞き返せば、なんかいけない気がするし。
「顔を上げてくれ。リー殿。むしろ、こちらが助力を求める身。無理にとは言わないが、我が理想のためにお力をお貸し願えないだろうか?」
そのまま素直に頭を下げる。
頭を上げると微笑んでいるリーさんが。
「これはこれは。では早速、その理想と言う物をお聞かせ願えないだろうかな?」
「それはもちろん!だが、このように立ち話と言うのもどうかと思うのだが・・・」
「あぁ、そうだな。どうだろう。リー殿。場所を移して話をしたいと思うのだが?」
「そうですな」
にこやかに先生とリーさんが頷き合って・・・・なんか寒気がするんだけど。
気のせいだよねぇ?
~・~・~・~・~・~・~・~
「さて、何から話して良いものか・・・」
「主よ。まずは現状を話すべきだろう。しばらくは我が説明するが良いかな?」
「そうか?そうしてくれると助かるな。リー殿。このレイアードに説明させるが良いかな?」
いつもグダグダしている謁見の間からすぐの会議室。
そこにリーさんと先生、私、ザラップ、そして給仕してくれるマリアさんとメイド達。
ちなみにタマとエアリアは私の周りを玉の姿で飛び交っていたリする。
仙人はどれだけ周りに玉を浮かしているか(ダンジョンを持っているか)によって、その格を示すことがあるそうだ。
まぁ、それは置いといて、私の言葉に頷くリーさん。
「こちらからもお願いしましょう」
「では、まずは・・だ。恥ずかしい話なのだが、元々この洞はこの地に住む者たちと共に、我が前の主から譲り受けた洞なのだ。だが、この洞の玉と仲違いしてしまってな・・・。仲直りもできぬまま、この地に住む者たちと協力して暮らしてきたが、いよいよ後が無くなって困っているところに、この主と出会い、紆余曲折はあって、譲り渡したと言うわけなのだ」
「ほぉ・・」
「主との出会いについては・・・また何かの縁があれば話すとしてだ。その洞の政治体制と言えば・・・・村の集まりのような物だ。それゆえに村の外のことになると、とんと分からなくてな。外交と言うのか?そういうモノには疎いのだ。で、なら一層、そういうのに詳しい者を呼ぶことになってな」
「それで、我という事か。ふむ、なるほど。にて、本題を聞かせていただけるかな?」
ちらりとこちらを見るリーさん。
どうも私から言わないといけないらしい。
「理想についてだったな。と言っても、まだ、泥沼の上に家を建てるような夢でしかないが・・・それで構わぬかな?」
「これはまた・・変わった例えをする。しかし、理想と言うのはそう言う物でしょう。まずはお聞かせください、仙人殿」
「まぁ、そういうなら・・・。最終的な理想は・・・ダンジョンに千年以上続く国を造る事。まぁ、今はそれは大それた夢でしかないのでな。まずは飢えることが無く攻めづらい国。それが第一目標としている。当面は攻められた時の対策と食べ物をどうにかする事が当面の課題だ」
そこで、言葉を区切り・・・。
よく考えなおしてみる。
今言った第一目標と言うのも、なかなか難しい目標ではないのだろうか?
それができるなら戦争の火種の半分ぐらいは消えるはずだし。
まぁ、良いか。
まずは農業を確立していく事と防衛機関を作る事だ。
後は後で考えよう。
「ほぉ。それは、・・・・素晴らしいですな。しかし、それであれば、外と繋がる必要はないのでは?」
ジーッと見てくるリーさんの目を見てにっこりと笑った。
「閉じこもればいいと言う物でもないと我は思っている。閉じこもった国と言うのは周りから不気味な国とみられるだろう。そんな国が近くにあれば、不安となり、最終的には攻められるのではないか?」
「それは・・・そうですなぁ」
「そうなれば攻め辛い国は難しいではないか? ・・・そこでだ。最低でも周りの国と繋がりがあれば、助け合い、そのような状況は避けられるのではないかな? しかし、外交と言うのは騙し合いとも聞く。そういうモノは、我も、ここにいる者も、不得意とするところでな。そういうモノを任せられる人を探していたのだ。手伝っていただけないだろうか?」
「ふむ・・・」
考え込んだリーさん。
一応、これで良かったのかな?
と、横でカタンと音がし。
「リー殿。今日はもう遅い。部屋を用意させるので、そこで休まれたらどうだろうか?」
先生がスッと立って言った・・・。
え?
いつの間に?
「そうですな。では、お言葉に甘えて」
「では、マリア」
『はい。リー様。こちらへ』
そのままリーさんとマリアさんが出て行って・・・。
窓の外は暗くなりかけていて。
本当にこんな時間だったんだ。
「お疲れさん。あの調子なら・・・何個か条件呑めば、契約までこぎつけるだろ」
「そうなの?」
「あぁ、たぶんな」
『それより、リナ様。お食事持ってきました!』
それに割って入ってきたのはリアだった。
その手が押す手押し車には食事の乗った盆が・・・。
まぁ、良いか。
何とかなるさ!




