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リナちゃんのダンジョン経営!  作者: 龍華
4章 森の大騒動~さぁ、匙は投げられた!?~【仮】
93/117

66.

遅くなりました!

「触るな! 野蛮人共が! お前らなんかに負けたのではないのだ! ええぃ! 放せ!!」


 同じ服を着て連れて来られた者たちの中で、一番前に座らされた男だけが暴れていた。

 それがこの集団の一番トップという事だろう。

 他の人は黙り込み下を向いていたリ、こちらを睨んでいたリ、……暴れている男の後ろに座る者たちは必死に黙るように懇願しているようだ。

 でも、まぁ、その男、騎士一人で抑え込めるほどの力しか無いのだから、今の所、私の命に係わる事は無い……はずである。

 ……はぁ、しっかし、なんで、一人で、これだけ騒げるんだろう。

 聞き取りにくい言葉でギャーギャーッワーワーッと。

 まぁ、波に足元をすくわれただけだっと、主張する気も分かるが。

 たかが波、されど波だ。

 あれは私が起こした物だしな。


「黙れ! 罪人が!」


 横からスッと出てきた先生がその男を恫喝する。

 威嚇かもしれない。

 それだけで、そいつはブルッと体を震わせ黙り込んでしまった。


「ふん。では、これより罪人に刑を言い渡す。まずは、首謀者と共犯者、7名! 前へ!」


 罪人たちを連れてきた騎士たちは素早く動き、わめいていた男とその後ろに座らされていた男たちを立たせる。

 後ろの6名は一つのロープで繋がれているようだ。

 前で手を縛られ、胴をグルグルにされ、それが一本の縄で数珠つなぎっと。

 その6人の後ろに並んでいる者たちは5人1組で縛られていた。

 

「お前たちは、我らが土地に暮らす者達を攫う事を指揮した大罪人である。本来であれば、その首を切り、晒しておくところだが、我らが主の慈悲深い配慮により、1年間の労役のみとする。働きいかんでは、減刑、増刑あると思え! 以上。連れて行け」


 先生の号令に引っ張られて連れて行かれる男たち。

 まだ騒いでいるが、連れ出され、扉が閉じると全く聞こえなくなっていた。

 距離もあるだろうが、防音機能が高い事。


「次! 誘拐実行犯及び監禁関与犯、多数! 立て!」


 それに引っ立てられる数十名。

 彼らは、確か先の男にこき使われていたように見えた連中だったはずだ。

 腰が抜けたのか、なかなか立たない連中は騎士たちが持ち上げ無理やり立たせる。

 

「お前らは我らが土地に暮らす者たちを攫い、その上、監禁した罪人である。本来、我らが勝ち取った財として、死ぬまで奴隷として使うところであるが、先の者に逆らえぬ立場だという事を鑑み、先の者と同じ労役を半年、ただし、働きいかんでは減刑、増刑あると思え。その後、賃金を伴う労役についてもらう。その金をどう使うかはお前らの自由である。また、お前らの値段については最初の労役の働きによって決定する。以上。連れて行け」


 最後の方で彼らはポカンと口を開けて聞いてきた。

 そして、引っ張られるに任せて彼らは大人しく従っていく。

 まぁ、殺される事は無いという事で安心しているのだろう。

 理解が及んでいないのかもしれないが。


「次! 傷害及び殺人実行犯、多数! 立て! 代表数名! 前へ!」


 前に出たのは4人一組が二組。

 大人しくっと言うか、こちらを険しい顔で見てきているが、逆らうような事はしなかった。

 その中の……立っている者たちや前に出てきた者たちの中には棒と紐でできた物を銜えさせられている。

 あれではまともに話す事も出来ないだろう。

 

「お前らは雇われていたとはいえ、我らが同胞を襲い傷付け、あまつさえ殺した罪人である。そなたらに対しては死ねぬ呪いをかけ、未来永劫、奴隷とする…………という意見もあったが、諸々の諸事情を考慮に入れ、先ほどの者たちとは違う、半年の労役と賃金を伴う労役を課す。また、働きいかんでは増刑、減刑及び、武具を返す事も考慮に入れようと思っている。以上。連れて行け」


「ちょ、ちょっと待ってくれ! それはどういうことだ?」


 それに慌てて声を上げたのは前に出た代表で顔の整った青年だった。


「何が不満だ?」


「ふ、不満じゃねぇ! むしろ……こう、なんだ? 軽すぎると言うか」


「おい! お前、何言ってんのか分かってんのか!?」


「ふ…ふふっ……ふはははぁ!」


 ムッとした声の先生に慌てて言いつのる青年。

 それに慌てたのは周りで聞いていた代表者たちだ。

 後ろの連中もこそこそと何かを言い合っている。

 それにしても……軽すぎるねぇ……

 労役の内容を知らないから言えることであろう。

 なんせ先生が笑い出すほど軽くは無い仕事のはずなのだ。

 さて、ほっといていたら、隣で大笑いしだす先生に釣られ、騎士たちも声を押さえつつ笑っていた。

 それにギョッとした彼ら。

 このまま笑わせておけば話は進まない。

 私は鳴仗を一回地面に叩き付けた。

 シャラン

 軽い音だったが、ビクッと周りがしたと思えば、笑いを収める。


「主よ。すまなかった。軽いか重いかは、自分の目で確かめよ。連れて行け」


 先生もゴホンと咳払いをしてから、神妙な面持ちで話を進め。


「では、最後に。船の漕ぎ手、及び奴隷の諸君。お前たちはこの度の罪には関与していないと判断する。よって、お前たちは我々の戦利品の扱いとし、賃金を伴う労働をしてもらう。以上だ」


 その言葉に、ポカンと見上げてくるその場の人たち。

 みんなして何を言っているのか分からないと言う風だ。

 これ以上長引くとこっちも手間である。

 さっさと終わらすため、再度鳴仗を鳴らす。

 それに押し黙りこちらを見上げる人々。


「じゃぁ、こう言えば良いかな? 船の漕ぎ手たちよ。そなたらは、我らが敵を運んできた罪はあれど、それは仕事上の事。また、ここに居る奴隷の者たちは、元々売られていく身。ここで起こった罪を問う方が間違ている。よって、双方、この罪を問う事はしない。だが、だからと言って、すぐ開放することはできぬ。よって、そなたらには、働いてもらう。先の者たちと同様、その働きを加味した上で開放しよう」


 一応考えていた言葉を張り上げるでもなく、でも響くように声を上げる。

 それにひれ伏す人々。

 ……まぁ、一応は話まとまったかな?

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