65.
………………
…………
本日の業務は終了しています。
だから! 寝かしてください!
目の前の笑顔の二人と周りの……真っ白な景色を見渡し、心底そんな事を考えながら、目の前にあるティーセットを横に置きなおし、目の前のテーブルに突っ伏した。
「あら? なに? 私たちとおしゃべりは、そんなに嫌なの?」
少々不機嫌ですと言う口調に私は顔を上げる。
そこに居るのは神様と思われる少女だ。
それともう一人。
少女と同じぐらいに見える少……年だった。
やはり、何というか等身大のマネキンですと言われても頷けるほど顔立ちの整った、服装から言って少年なのだろう。
ただ前のように、私は何かをしたと言う覚えがない。
会議に出て、謁見の広場で愛想を振りまきながら、色々な人の挨拶や相談など受けて、夕方近くにその仕事が終わって、夕食食べて、城のベッドに入った。
うん、なんも変哲もない一日が終わったはずだ。
で、気が付くとここだ。
……うん、決めた!
さっさと話をして、寝よう。
そう思い、背筋を伸ばし座りなおして。
「えっと、どういう用件で呼ばれたんでしょうか?」
「え? そんなの必要? ただ見たいって言われたから、呼んだだけよ。ねぇ」
「まぁ、そうだねぇ。ごめんね。ぼくが見たいって言ったから。でも、この子が、ねぇ。平平凡凡な気がするけど?」
「そこが良いのよ! 分かってないわねぇ!」
「いや、だってさぁ。ダンジョンマスターって言えば、あれだろ? ラスボスか、中ボスか。雑魚ってわけにいかないじゃないか。そういう奴なら……こう、特徴があったって……美人だったりさぁ、まぁ、こういうチンチクリンってのも………味か? この見た目で、戦闘力がとてつもないとか? 我に続け! 大将の首、取ったりッ! とか叫んで真っ先に突っ込んでいくとか!」
「え、いや……最高責任者が前線に出るって………それこそ、本末転倒じゃ……」
本じゃよくあるけど、あれって問題ありだよねぇ。
守られるべき王様が先頭に立って突っ込んでいくのって。
てか、なんですか。
私はペットなんですね。
そうなんですね。
泣いていいですか?
「そうよねぇ。やっぱり、ダンジョンマスターって、ヒョロッとした男が一番多いわけじゃない。何というか戦闘民族っていうの? みたいなのは、どうしても自分の力を見せつけたいのかしらねぇ。前に出て自滅が多いし。私の所は隠居タイプが多いけど……。そういや、あなたの所はどうなのよ」
「ぼくのとこ? ぼくのとこ、ダンジョンってのは無いんだよねぇ。あ、でも、色々作って面白いんだよ。うちのとこ。生物兵器っていうの。あれは他の………ほら、あそこの「あぁ、あそこね」そう、あそこが一番だけど。それなりの物ができてるんだよ。あとは兵器系が面白いねぇ。ま、でもマンネリ化は否めないかな」
「まぁ、どっちにしても……これみたいな考え方はあまり見ないじゃない?」
「そう? ダンジョン内で村を作るってのは割と多くない?」
「それは、同じ種族の場合でしょうが。ここまで多岐にわたる種族……もあるけどね。亜人と人とが、一緒に、ダンジョンで、暮らすっていう国を造るのは珍しいと思うわけなんだけど?」
「それは、そうかも。で、今回の題材は…<チラッ>…なの?」
「ううん。周辺で」
「あ、それいいかも。でも、面白い人材あんの?」
「そうねぇ。意外と人の方が面白い話になりそうなのよ。亜人の方は、まぁ、元々の生活もあるし、平凡な一生で終わりそうだけど……それでも数人は面白そうだし」
「いいなぁ。ぼくのとこ、さっきも言ったけどマンネリ化してきてさぁ。そろそろ見切りらないといけないかなって。一人残して世界を壊すでもいいな。あれだ。”フェニックス”の……えっと?」
「茶の湯……だったかしら?」
「そう、そんな名前の人みたいにさぁ!」
それは…………かの有名な漫画家の……作品の事でしょうか?
いや、私は何も聞いてません。
何も知りません。
知らなかったんです。
と言うか、私、必要ないですよね!
帰って寝たいです!
「あの! 私帰っていいでしょうか!?」
「え?」「ん?」
「どうする?」
「どうしましょう?」
「ぼくは一応見れたし、今後の話見せてくれるんだったら構わないかな。直接聞く事ないし」
「え、良いの? なら、帰そうか。それじゃぁ、またねぇ。何かあったら、メッセージ送るから」
にこやかな笑顔で手を振る二人の姿が霞んでいき………………
~・~・~・~・~・~・~・~
「あぁ……」
……あれ? なんだろぉ?
なんで、こんなに疲れてるのかなぁ……
窓の外はそれなりに明るいし…………
時差ボケという者だろうか?
『リナ様。お目覚めの時か………あ、お目覚めでしたか。では』
スッと入口を開けて入ってきたリアはそのまま私を担ぐと……
またこのパターンですか?
涙目になりながらも私は衣装室へと運ばれていくのだった。
~・~・~・~・~・~・~・~
「で、あるからして! 扱いには十分気を付けるように! 気を付け! マスターに敬礼!!」
団長の掛け声と共にザッザッと鳴り、右手を拳にして左肩に、左手を後ろに回した格好で出迎えてくれる騎士たち。
これが敬礼なのだろう。
後ろの槍や杖を持った騎士たちは左手に持って後ろに回しているようだ。
その前を、これまた式典の時の別バージョンの服を着せられ歩く。
その後ろをマリアさんが鳴仗を持って、その隣を先生が付いてくる形である。
さて、昨日着せられたのが、青の無地に銀の刺繍された水を連想させるローブなら、今日は赤の無地に黒の刺繍された炎が躍っているようなローブである。
まぁ、これを着て、この城の謁見の間でする事と言えば……
「皆! 駆け足! 配置へ付け!」
副団長の号令に騎士たちが己が配置につく。
なんか、騎士団って、軍隊なんだね。
規則正しい動きが……これまた……何だったか、そう!
集団行動を見ているようだ。
「では、これより! 罪人に判決を言い渡す! 罪人をここへ!」
うん、これだよねぇ。
さて、どんなことになるやら……
神のみぞ知るってか?




