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リナちゃんのダンジョン経営!  作者: 龍華
4章 森の大騒動~さぁ、匙は投げられた!?~【仮】
91/117

64.

 さて、どういう事だろうか……

 私は連れて来られてポンと座られた場所から周りを見渡し。


「何もしゃべらず、ジッとしていろ。それも笑顔で、だ。良いな」


 先生が真剣な顔を近づけてきて念を押してきた。

 それに慌てて首を縦に振る。

 それを確認すると先生は、そこを離れ、別の人と話し始める。

 それを見てからまた見渡し、これまでを思い出す。

 ご飯も終わり、何もないし、まったりとするつもりで椅子を降りると……

 笑顔のマリアさんに呼び止められて……メイド集団に担がれ、あれよあれよという間に式典の時の服に着替えさせられ、運ばれて来たのだ。

 で、運ばれていくときに聞いたのだが、ここは15階にある《謁見の広場》という所らしい。

 内部は何と言うか……天井に一つ大きく細長い四角い穴が開いた体育館と言った感じか?

 穴の周りに天井を支える柱が数本立っていて。

 今私が居るのは、体育館で言う舞台……ステージの上にある机の前に座っているのだ。

 ちなみにステージの高さは、下のタイル張りの床から、私でも何とか上がれる程度の高さである。

 で、向かい側にも一つ椅子があり、机の横にはもう一つ机があって、いつの間にか、そこにタマが座っていて、反対側の斜め後ろに先生が立っている、と。

 そんでもって、多くの人と長机、椅子が奥の大きい扉からこっちまで屋根のある場所に並んで。

 

「では、本日の午後の業務を開始する! 皆! 心してかかってくれ! では! 開門!」


「「開門!」」


「「開門!」」


「開門!」


 開始の挨拶なのだろうか?

 舞台の下に歩み出た人(先生ではない)が大声を上げると、それが聞こえた順にだろう、たぶん、外から声が聞こえてきて……。

 最後の声と一緒に大きな扉の向こう側(だと思う)から、ド――ンッと金属の重い音が鳴ったと思えば、その大きい扉が重々しく開いき、そこから多くの人が。


「押さないでください!」「奥から順番に!」


「どのような御用で」「移動の」「はい、移転希望者ですね。では、お名前と家族構成を」 


「あ! マスター様!」「かぁちゃ! こっち見たよ!」


「こら! 何しているの! 早くこっち来なさい!」


「終わった方! こちらから外へ出てください!」


「こっちでもいいですよ!」


 ……えっと? これは?

 ごっちゃに聞こえてくる声の一部を何とか聞き取りつつ、私は呆然となっていた。

 次から次へと人がなだれ込んでくる。

 それを騎士たちが押しとどめ、きちんと並ばせ、一グループごとに長机に座った人の前まで案内する。

 慣れた様子である。

 そして、案内されてきた人たちに対応する人たちも慣れた様子で聞き取りつつ、皮紙に何やら書きつけていく。

 それが終わると、案内されてきた方はこちらに来て姿を消していく。

 どうやら、ここから見えない所に扉があるらしい。

 そんな流れを眺めているうちに、一グループが私の前まで案内されてきて。


「狩人組合の方々をお連れしました!」


「ご苦労。良く来られた。代表はそちらに掛けてくれ。……では、どのような用件でこちらに来られたのかな?」


「昨日、こちらで訪ねたことの回答を聞きにまいりました」


 うわぁ……正直言って目が笑ってない。

 にこやかに口元は笑っているが、その目は何というかシャルが怒っている時の目に似ている気がする。

 そんな怖い顔の小父様が目の前で先生と話し込んでいるのだ。

 ちなみにその小父様の後ろに立っているのは二人。

 強面の小父さんと小顔……丸い顔?のお兄さんである。

 種族はたぶん、小父様二人はエルフ、お兄さんは猫系の獣人だろう。

 だって、耳が尖ってたり、ピクピク動いている三角耳が頭の上にあったりしているもん。


「あぁ、あれか。まだ答えれる段階ではないんだが………まぁ、お前なら良いか、ここだけの話として聞いてくれ。あ、あとお前らが懇意にしてる商人と職人の代表にもこの話、流しておいてくれるか?」


「へぇ? 話によるが……まぁ、まずは話してみろよ? 兄弟」


 ニヤリッと笑う目の前の小父様。

 どうやら、先生とは長い付き合いらしく、さっさと取り繕う事をやめ、話をしだす。

 できれば、頭の上で悪だくみみたいな会話しないでほしいなぁ。

 そんな事も考えながら、狩人について思い出していた。

 確か………確か……た、たしか、あれだ。

 魔素で狂暴化した動物たちを狩る仕事の人たちの事……………だったはずだ。

 元々はそれぞれの階層に住む害獣を追い払ったり捕ったりする仕事だったと聞いた気がする。

 ちなみに狩り過ぎるとそれはそれで問題が発生したらしく、狩猟期間を設けたり、または害が発生した場合などで捕るようにしていると言っていた。

 それで、まぁ、なんやかんや色々あって組織ができた……んだろう。

 で、頭の上で交わされているのは……あ、6階に造る予定の町についてのようだ。

 その街からは魔素に侵された13階層へ通じる転移門を設置する予定である。

 ただ構想段階であるため、発表は控えられたわけで……

 

「……あぁ………兄弟。まぁ、なんだ。獲物は消えて無くなったわけじゃねぇのは分かった。お前の口ぶりだと、そんなに遅くない時期にその計画、実行する予定なんだろ? 噂を流すぐれぇはいいんだな?」


「あぁ、それはこっちから頼む。それでそっちの仕事してる連中はしばらくは大人しくなる……はずだ」


「いつも、大変だなぁ。兄弟。どうだ? 久々にこっちで暴れねぇか?」


「そうしたいが、まだ色々あるんでね。やめとくよ」


「そうかぃ。じゃ、邪魔したな。では、主殿失礼します。行くぞ」


「「は! 失礼します!」」


 スッと立つとその人はにこやかな笑顔に戻り、丁寧にお辞儀をしてその場を優雅に出ていったのだった。

 どこの軍隊だと聞きたいぐらいに後ろの二人はピシッと腰を曲げ、お辞儀をして、その人の後を追う。

 …………あの人の中で、私、置物なんだろうなぁ……

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