62.
遅くなりました!すみません!
・・・・・そう言えば、こっちとあっちじゃ時差があるんだった・・。
窓から差す光に目を瞬かせ、目を擦りながらも体を起こす。
ここは確か東側に窓を取ってあり、って。
・・・・あれ?
ここは地下だ。
なんで太陽みたいに光が入ってくるのだろうか?
不思議に思いつつ窓に近付き・・空を見上げ。
う!直で太陽を見てしまった!
あぁ、目がシバシバする・・。
でも、分かったことが一つ。
水晶の中に太陽の様な光源があるという事だ。
それが時間と共に動くのだろう。
なんと凝った作りなんだろう・・。
「おはようございます。リナ様」
「うん?おはよ・う?・・で、えっと?」
『失礼します!』
かかった声に私は振り返り・・・逃げ出したくなってしまう。
でも、逃げ場所なんてなく。
先頭に来たリアが笑顔で元気良く断りの言葉を吐いた。
それを合図に・・パッと見、10人は軽くいるメイド軍団に私は担がれ!
って、どこに行くの!!!
~・~・~・~・~・~・~・~
「で・・・何?」
お風呂に入れられ、服を着せられ、連れて来られたのは円卓の間だ。
朝・・・と言うかお昼まだ食べてない。
私の側にはタマとエアリア、マリアさんにザラップが後ろの奥で控えていて。
私の座る椅子の脇には先生が立っている。
他の階層主、そして騎士団団長が座り、副団長がその後ろに控えていた。
「少々困ったことがあってな。手間だがもう一回頼む」
「は!」
先生が言うと副団長が話し出す。
「先日の式典にてレイオード様が話されたことについてです。ほとんどの者は納得した、しないに関わらず、安定した生活が来る事に安堵しております。ですが、中には罪人たちを贔屓にしているという事を言いだす者もおりまして・・・恥ずかしながら騎士団の中にもその意見は多く」
目をそらしながらも言うその人をジーーッと見つめつつ。
・・・贔屓・・そういう風にみられるのか・・。
ある程度説明しているように見えたが・・。
まぁ、色々あったのだし、生かすと言うだけでも嫌悪感を持っている人も居る・・か?
それに、一番外の連中と死闘をしているはずの騎士から出るのは当たり前だよねぇ・・。
「ちなみに先生の説明でどこが贔屓していると思っているか聞いているか?」
「それは・・その・・・」
「生かすという所か?それとも共に生きるという所か?・・あるいはあれだな。一階層を彼らのために使うという所か?」
「・・・この新しく歩みだすこの地を汚したくないと言うお心はこの地に住む皆が分かっております。ですが、百歩譲って彼らと暮らすとしても、です。それは自分たちより惨めでなければ納得がいかないという者たちは多い。それに攻めてきた者たちを一階層で自由にするのは恐怖でしかないでしょう。そこはどうお考えかお答え願いたい」
口ごもる副団長を手を上げ、黙らすと眼光鋭い・・怖い顔の騎士団長が口を開く。
生かす事には・・賛否あるだろうが良しとする。
ただ、共に暮らすとしてももっと過酷な環境でひどい扱いをしろ・・か?
それに町に連れ出して事件を起こされるようなリスクをどうするのか・・かな?
まぁ、一階層使う事に渋々納得してくれた?階層主たちも外に出した時のリスクは話したが内乱を起こされるリスクについては話してない。
騎士団長らのそれに合う答えが出てこなかったわけで・・・。
それは、私も同じなんだけど・・。
「・・うむ・・まずは、だ。コア12階の地図を」
『了解しました』
目の前にドデンと現れた地図を頭に叩き込む。
入口は水中を除くなら三つ。
縦に貫くように二つとそれとは九十度曲がった所に一つ。
二つはもちろん上下の階に通じており、残り一つは外の二階に通じている。
そして、外と通じている方の入り口前には大きな湖があって。
入口付近は半島・・と言えばいいのか。
湖につき出していて、横に人が5,6人並んで歩ける程度・・広いのか狭いのか判断が付かない程度の足場が岸・・まで続いている。
で、その足場は切り立っていて湖底まで続いており、その壁に16階に通じる穴が開いていた。
まぁ、人が素潜りで潜れる程度の深さではあるが、そこから16階まで行くとなると歩いて一時間かかる距離の洞窟を息継ぎ無しができる者だけだったりする。
今のご時世それができるのは魚人か人魚、魚の獣人、水中生活に特化した獣人ぐらいな者であろう。
ちなみに魚人は人寄りではあるが魚の部分も多分に持ている者、人魚はその逆、魚の獣人は基本は人だが一部魚に近い人たちを差すらしい。
ついでに、これを決めたのは魚系の人本人たちだそうだ。
は、いいとして、まぁ、人がここを移動することができるとしたらよほど水中特化した体に鍛え上げた部族とかぐらいではないだろうか。
という事で、ここについてはしばらく放置だ。
あとは、外と上下の階層に通じる道を一時的に罪人が通れないようにする事。
あと、自分たちより惨めだと思わせれる境遇で罪人たちからは温情と見える待遇をする。
・・・・うわぁ・・・難しく考えてみるとあれだ。
無茶ぶりだ・・。
「あぁ・・うむ・・・ちなみに彼らは今どうしている?」
「どうとは?」
「今のどこに居て、どんなことをされているか」
「・・それは我々が彼らを故意に貶めているとおっしゃられるのか?」
「ん?あぁ、いやそういう意味ではない。対応は正しい物だろう?」
「はい、捕虜の扱いは既定のように」
「その、規定という物を私は知らないからな」
「・・・そうでしたか。それでは・・まずは彼らは4階の牢の中に居ります。死なぬ程度の食事と水は与えるだけです」
・・・うわぁ・・これはまた。
これで開放されても恨みが募るだけでは?
「あぁっとだな。男女の一緒か?」
「いいえ。増えられたら困りますので、引き離しておりますが」
「なら良い。他にどう分けている?」
「マスター様が分けられたように分けております。商人、冒険者、奴隷、漕ぎ手、囚われていた者であります」
「・・ちなみに確認なんだが・・慰み者として使っているという事は無いな?」
「は?なぐっ!そのような事ありません!そのような事をしようとする馬鹿どもは我ら騎士団にはおりません!」
あ、怒らせたか・・。
「レグル。マスター様は確認しただけだ。そう怒るな」
「しかし!団長!」
「しかし、マスター様もお戯れが過ぎますな。我々を侮辱する気ですかな?」
「いや、そう言うつもりは無い。すまなんだな。いくつか話していない事をこれから話す。皆も聞いて何かあるなら言ってほしい」
はぁ、さて、これからが正念場だ。
気が重い・・・・。




