54.
画面の中、そこは森のダンジョンに少し入った少しだけ開けた場所だ。
そこに、ジラム達と知らせに来ていたゴブリンを含む年寄衆数名が立っていた。
それ以外にも周りの村々を回り何とか来てもらったらしいゴブリンたちが息をひそめて隠れていた。
それより家近くには取り囲むようにシャルの配下の狼たちとスライムたちと言う私の持てる全ての戦力を配置していた。
まぁ、彼らを避けたり、突破してきても何とかなるだろう。
さて、その待っている中で目を引くのはジラムたちである。
ジラムとギラムスはシャルの子供たちに跨っているし。
リアはいつの間にか運ばれてきていた私の祭祀の時の服・・の没案を纏ってシャルに跨っているのだ。
その前には名持のスライムたち・・が?
その姿は少し変わっていた。
ボムは全体的にほんのり赤いし、シーはなんだかトロッとした印象だ。
アースは何か固形してきた形をしていて、グラスは・・薄く黄緑色ぽい。
メタルに至ってはあれだ金属っぽい光沢に時折静電気が起こっているようで細かい何かが飛んで彼の体にくっついている。
一番変わっていたのはノーかもしれない。
他のスライムたちより二回りぐらい大きくなって・・て?
目と口が付きました?
・・・・・
【ステイタス:配下:スライム】
スラノー
現在位置:ダンジョン内
種族:プニュ系スライム
職業:リーダー
Lv17
HP:408
MP:176
攻撃:63
防御:77
知識:16
俊敏:64
ステイタスを無言で開き・・種族で言葉を失ってしまった。
確か名前を付けたときは普通のスライムだったはずなんだが・・・。
『ほぉ!先祖返りしたのですね!知識としては知っておりましたが見るのは初めてです!何という事でしょう!マスター!彼は幼子ぐらいには人の言葉を理解できるのですよ!それに!』
「せんぞがえり?」
『そう!先祖返りです!まだ仮説段階ではありますが、スライム種であれば交配は可能だとか!そのためひょんなことからこのように別種のスライムに変化することがあるとは知ってはおりましたが!』
「はいはい」
『マスター!今度彼解剖しても良いですか!』
「・・・は?・・・・んなことダメ!ダメったらダメ!」
『・・・・分かりました・・』
なんだろう。
なんか、えぇーーーっと言う声が聞こえた気がしたけど。
気のせいだ。
気のせい。
『精霊族の幼体ですね。私初めて見ました』
せいれいぞく?
って何ですか?
『あ、リナ様。どうやら到着したようですけど・・・そろそろ出ません?』
リアが指す方向を見るとそこには洗いあがった布の山が。
そう言えば、かなり長い間は言っていた気もする。
リアの忠告を聞いて私は外へと出るのだった。
~・~・~・~・~・~・~・~
「やっと見つけたぞ!小娘ぇぇえ!」
「あんた!ちょっと待ちな!」『リナ様!お下がりを』
ドダドダドダドダドダ!
廊下の向こう。
食堂の方から駆けてきたのはドワーフで。
その後ろから聞こえてきた声は夫人のノームだったはずだ。
なぜここに?とも思うがその前に・・。
ドスン
「あんた!!!ちょっと!この人に何するのさ!この人から離れな!」
『リナ様に危害を加えますと言った顔をした人を拘束しておりますが?』
「いて、いてててぇ!わ、悪かった!わしが悪かった!離してくれぇ!折れる!!」
・・・えっと、リアがラリアットかまして、あのかなり体重のあるドワーフを倒し。
起き上がろうとしたところで腕を捻りあげて床に倒したのだ!
なんという手際だろう・・・・あ!
「リア!ストップ!もう良いから!」
『ですが』
「その人いないと困るから!たぶん!」
『しかし・・・』
「悪かった!こ、マスター殿には手を出さん!だから!許してくれ!!」
「あたしからよぉっく言い聞かせるからさ!!頼むから折るのだけは許しておくれよ!」
渋々と言った感じにリアが拘束を解いた。
慌てて身を引いたドワーフは何度か腕の調子を見て異常が無かったらしくホッとしているようだ。
「さて、何用かな?・・・ブライム殿とエミール殿?」
コアの気遣いに感謝しつつ、私は目の前の画面に出ている名前を呼んだ。
それにキッと睨んで、スッと横から出てきたリアにあからさまにビクッとし。
「何用じゃねぇ!何勝手に人間なんぞを俺たちの土地に住まわすたぁ、決めてやがるんだ!」
それでも喧嘩腰の言い方である。
リア以外に数名ここに残っていた幽霊メイドたちが姿を現しているのだがそれに気が付いていない様子だ。
「その話については先生に説明するよう頼んでいたはずだが?」
「そりゃぁ聞いた!だがな!納得できるかってんだ!なぁ!母ちゃん!」
「え、いや。あたしは・・・文句は・・ねぇ?」
「何尻込みしてやがんだよ!いつもの勢いはどうしたんだってんだ!よぉっし!俺がしっかり」
「あぁ、待った、待った。説明が不十分だったことは良く分かった」
「あぁ?」
周りに気が付いていたのだろう。
エミールは周りを見渡し、ビクビクしながら旦那をこれ以上言わせないようにしようとしたが・・。
このままだとメイドさんたちがこの人を冥土に贈りそうな勢いで怒っているのが分かる。
あのリアがそんな事をしたのだ。
私的にはこの人のような意見は必要だ。
だが、彼女たちはマスターの言葉は何があっても守られる事と認識している気がするのだ。
だから、マスターの言葉に逆らう者は仲間でも・・いや、仲間だったからこそ、徹底的に排除しなければと言う認識を持っていそうで怖い。
つまり・・この人をこのまま喋らせるのは危険であって・・。
そう思って言葉を挟むが、それをもっと険しい顔になってこっちを見てきた。
・・・うん、怖い・・が、真っすぐ前を見て話す。
「まぁ、その前に・・まずは場所を移す。リア。先生を呼んできてくれ。他のみんなも大丈夫だ。仕事に戻ってくれ」
その言葉に皆が渋々従うかと思ったのだが・・・。
誰一人として動かない。
『このままこの不届き者と一緒に過ごさせるわけにはまいりません』
スッと前に出てきたメイドがそんな事を言ってくる。
あぁ・・そうね・・・仕方ないね。
「分かった。リアは引き続き、あと君も私の側に。誰か先生を呼んできてくれ。あと・・お茶の用意も頼む」
それに納得はしてくれたらしく。
その言葉に従ってくれる。
『リナ様。念のため彼らに手と胴を縛っても構いませんか?』
いつの間にか縄を持っているメイドさん。
それに私は勢い良くうなずくのだった。
だって、満面の笑みで聞いてくるんだもん!
怖いよ!この人!




