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リナちゃんのダンジョン経営!  作者: 龍華
閑話 とある罪人たちの話
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とある冒険者の話 2.

「で、どうした?」


「ん?どうしたとは?」


「・・・・・ふぅっ・・帰れ!今すぐ帰れ!」


「あわ!すまん!すまん!悪かった!」


昨日は板間で寝る事となり、あまり眠れなかった。

だから、いつもより早く集合場所に行き、兄弟に今日は休むと断りを入れ・・、朝食を作り、こいつを叩き起こし、食べた後のちょっとした時間。

つまりは俺の限界がきた頃に話を振り。

それをはぐらかそうとしたこいつの襟首をつかみ、放り出そうとする。

それに慌てたそいつはぽつぽつと話し出した。

仕方ないので床に置き前に座る。


「友よ・・・私が特別に免罪されたことは知っているな」


「そりゃ、その場にいたしな」


「ん?・・・あぁ、そうだったな。では、私がどのような契約をしたかも知っているのだな?」


「あぁ、知ってるよ。・・・ん?」


「なら話は早い。それでだ・・・」


その時の事を思い出す。

あれは最初の罰が終わって数日後だったはずだ。

その前にあった時と同じく謁見の間に同業者たちと一緒に連れて来られ、言われたのだ。


ゴブリン曰く。

そなたらは選択肢を得ることができた。

特技を活かし、我らに力を貸すか。

数日前のように洞窟を回るか。

どちらかを選べ。


だったか・・。

唖然となっていた俺たちをよそに、こいつはどういう事かとか色々聞き返して。

まぁ、こいつの仕事は人の話を聞いて広めることだし。

仕事で不利になるようなことが無いよう話を聞くことを主にしてたしなぁ・・・。

その癖になってたんだろう。

仕事前の打ち合わせの様な勢いで聞き出そうとして・・それが思いのほか気に入られたわけで。

契約内容は・・・確か合言葉を言った相手には真実を話す事とか、もう一つなんだそりゃと言うような約束してた気もするが・・・まぁ、そんな話だったはずだ。

その合言葉は誰にも言わない事と口止めされているらしい。

前に来た時に聞いたらそう言っていた・・・そんでもって・・面倒事に連れ出されたんだったなぁ。


「お~い。友よ。聞いてるか?」


「あ・・わりぃ。聞いてなかった」


「おい。私のちょっとした努力を無駄にする気か?」


「ちょっとした・・て、あぁ、悪かった悪かったよ。もう一度お願いします」


「たく、でだ。この一年を”諸外国について”に当ててたんだが・・そろそろネタもなくなってきてだな。本題に入る事にしたのだよ」


「ん?本題?」


「聞いていたのだろ?契約」


「あ・・あぁっと、あれだろ?真実を喋る合言葉。」


「・・それとは別だぞ?今言ってるのは・・」


「あぁ・・と・・・なんだったか?」


「今回の襲撃の真実やこのダンジョンの現状をふまえてこのダンジョンを襲わなくする物語を作り、外で広めること、だ・・・」


「・・・・・・・・・・・・めんど」


「言うな!それは私も思うが・・・ここで暮らして一年。ここは平和だ。言ってしまえば神々の国、理想郷に一番近い。そして、ここを守るための物語を作りたいと言うリナ様のお心も分かる。物語一つで諸外国と争うことが無くなり、そして交流が始まれば、ここはもっと良い国になるかもしれない。だが、どうもいい話が思いつかないのだ」


うわぁ・・・思いのほか、このダンジョンに肩入れしているなぁ・・。

あつい上に目がなんか怖いぞ?

まぁ、人のこと言えないかもしれんが・・・。


「ここ数日部屋に籠ってあぁでもない、こぉでもない、と考えてたのだが、メイドに陰気だと叩きだされてな。外であったザラップ殿に言われたのだ」


「・・なんと?」


そりゃ、暗い部屋でブツブツつぶやいてたんだろ・・。

なんだ?

なんか寒気が・・・。


「お仲間の一人を主人公に最後は許されここで平和に暮らしたと言う物語はどうでしょう。とな!そこで誰が一番話題になるかと考え」


「却下だ!断固として却下だ!」


やっぱり貧乏神だ!

こいつ俺を笑いのネタにしようとしてやがる!


「そこまで拒絶せんでも・・・。お前が一番花があるんだ」


「いやだ!おめぇも十分行けるだろうが!俺じゃなくとも」


「いやいやいや、たかが一貴族、それも亡国の貴族の放蕩息子が吟遊詩人になり旅の途中でダンジョン内の国に行きつき、幸せに暮らしました。よりもだな。友が主人公だった方がしっくりくるのだよ。それに続編も書きやすいからな」


「ちょっと待て!続編って何だ!続編って!」


「いや、なに。ちょっとこういう人物が居るとザラップ殿に」


「話したのか!お前!余計な事を!」


「まぁな。そうそう、亡国の民草を呼び込んでも良いと、良ければ友の家族を呼んでも良いと言っていたなぁ・・・」


その言葉に俺は固まってしまった。

それはつまりどういう事だ?


「ちょうどなぁ・・・」


逃げ場をふさいだことを確信しているのだろう。

ニヤリと笑うそいつを俺はにらみつけることしかできなかった。



~・~・~・~・~・~・~・~



「で、どこから話を書くつもりだ?」


ここは城の一室。

こいつ、ザラックの与えられた部屋だ。

ちなみに近くの客間がしばらく俺の部屋になるらしい。

そう言いつつ周りを見渡した。

そこには俺とザラック以外に二人いる。

俺の昔からの仲間で狩人のガストンと斥候・・・何でも屋のエリカだ。

もう一言言えば俺とガストンは野外で脅威になりそうな獣たちを狩る仕事を。

エリカは町で人助けをしているらしい。

そんでもって今回俺だけ恥をさらけ出すのは嫌なので巻き込んだわけだが・・。


「そこなんだよね。友よ。案としては三つだ」


「三つも?てか、まだ終わって無かったの?そりゃ、リナちゃん。期限決めてなかったけどさ」


「エリカ。その名称はどうかと思うが?」


「ガストンは固~い。リナちゃんは気にしてなかったよ?む・し・ろ、うれしそうだったもん」


「・・・うれしそう・・だったか?」


「俺に振るな。それは今は置いとこうぜ。「分かった」「は~い」で、ザラック」


「あ、うん。まずは最初、つまり私が友と合った頃から。次に友が国を出たあたりから。最後は今回の仕事を受けたあたりから。まぁ、これが一番書きやすいと言えば書きやすいんじゃないかなと、思っているんだが」


「おい・・選択し最後のだったら俺たちを呼ばんでも良かっただろう」


「そうなんだがな。そこから話を進めると・・。なんかしっくりこないのだ」


「まぁ、何で旅を始めたかとかするんだったら、ねぇ」


「それもあるが・・まず当初の目的を果たせなくなるんだ」


「当初・・・・・このダンジョンの安全確保だったな」


「そう、ここは亜人たちの楽園で、仲良く暮らしました。で終わったらどうする?」


「え?めでたしめでたしで終わりじゃないの?」


「・・あぁ・・そうか。そんな便利な所なら殺して、奪って、奴隷にして、自国の一部に・・て考える奴もいるかもしれないな・・」


その言葉に目を丸くするエリカ。

・・・いやぁ・・驚くことないだろう。

元々その考えで俺たちはここを襲ったんだからな。

亜人たちは基本素朴と言うか素直というか・・襲撃を考えない種族が多い。

逆に襲ってくる種族も居るがそれの方が少数派だったりするのだ。

でも、その危険な方が注目を浴びて根絶やしとか奴隷にすると言う方に発展していった国は多い。


「そこで、俺の肩書か・・」


「ん、そういう事。で、どっちが良い?」


そう言って肩をすくめるザラック。

こいつの中ではもう書き始める位置は決めているのではないだろうか。


「どっちかと言えば、国を出たあたりからな。国を出るまでなんて面白い話なんかねぇ・・・だろ?」


「「いやいやいや。一杯ですよ(だよ)」」


エリカとザラックが二人して否定し、その横でガストンが大きくうなずいているのだった。

・・・んな、馬鹿な!

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