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リナちゃんのダンジョン経営!  作者: 龍華
閑話 とある罪人たちの話
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とある冒険者の話 1.

「お~~い!今日はこれぐらいにしとくぞぉ!」


遠くで聞こえる声に俺は振り返り、それを了解した合図に手を振る。

それが分かったのだろう、声をかけた兄弟は帰り道を歩き出したようだった。

のどかな・・・本当にのどかな一日の終わりだ。

今日の獲物たちを担ぎ、前を行く兄弟たちに付いていく。


「今日は小さいかったな。兄弟」


「まぁ、こんな日もあるさ。だが、こんだけありゃ、今日も食うには困らねぇだろ?」


「そりゃ、ちげぇねぇな!」


不意に横から声をかけられ、そちらを見て肩をすくめ、軽口を返した。

昔だったら考えられないだろう。

そこに居るのはゴブリンだった。

そのゴブリンが自分の背丈ぐらいある獣を担ぎ歩いて声をかけてくるのだから。

昔だったらそんな獲物になりそうな奴ゴブリンを見て襲わない事は無かっただろう。

その前に声をかけるとしても怒気をまとった罵り合いになっていたのではないだろうか。

だが、この関係が日常になってからもう1年だ。

それを思い出して俺は一つため息をつく。


「ん?どうした?」


「いや・・なに・・・ここに来た時を思い出しちまってな」


「・・・・そぉか・・」


そのため息を目ざとく聞きとがめたそいつは・・少し困った様子でそっぽを向いた。

やはり、まだわだかまりが解けたわけではないという事だろう。

それを悲しく思い・・・・そう思った自分に驚きながらここに来るきっかけから思い出していたのだった。

・・・・なんだ?

寒気がしたぞ?



~・~・~・~・~・~・~・~



「おぉ!友よ!遅かったではないか!」


兄弟たちと少し飲んでから与えられた家の前まで来て、俺は来た道を戻りたくなった。

そこに居るのは俺にとっての貧乏神だ。

ホント関わりたくねぇ。

さっきの寒気もこれがある事を示唆していたのかもしれねぇな。

これだったら兄弟の家で飲み明かすと言う話を断るんじゃなかった・・・。

そんな事を考えながらも家に近付き、そいつに言い放つ。


「・・・・・誰か知らねぇがそこを退いてくれねぇか?家に入れねぇじゃねぇか」


「ん?私だ!友よ!分からぬほど変わってしまったかな?」


「そういう意味じゃねぇ・・・さっさと帰れ。と言うか、関わりたくねぇって言ってんだ!」


「それはつれないではないか!私とそなたの中ではないか!それで私を助けてくれ!」


「いやだ!離せ!それで何度、痛い目見ていると思ってんだ!」


「いやだ!助けてくれるまで離さぬ!困った時のそなた頼みなのだよ!」


「離せ!てかもう頼ってくんな!」「いやだ!」「離せよ!」「離さぬと言っておるだろ!」


「うるさいね!明日も早いんだ!静かにしな!」ブン!


「「すみませんでした!」」


いつもの調子のそいつに振り回され、押し問答していると隣の家から奥さんが顔を出す。

奥さんはギラリと目を光らせると手に持った光物をブンブンと振り回し。

日も落ち薄暗くなっている中、目と刃物をきらりと光らせる人を見たら誰でもこうするだろう。

思わず二人して謝りながら家に飛び込むのだった。



~・~・~・~・~・~・~・~



「で、ザラック。今日は遅いから泊めてやるが・・何も言わず帰れ」


「そこまで邪険にせんでも良いではないか!」


「おい、馬鹿。また叱られたいのか」


涙目で大声を上げたそいつに慌てて静かにしろと言いつつ、夕食を作る。

と言っても、こいつの分だけだが。


「うぐ。ゴホン、そこまで邪険にせんでも良いではないか・・こっちも行き詰っておるのだよ・・助けてくれんか?」


「そんな事知るか」


そう言いつつそいつを改めてみた。

焚き火のせいなのか、何なのか分からないが、少しやつれているのではないだろうか。

何というか、数日罰で寝れなかった奴隷と同じ顔をしていた。

いつもなら人の良い笑顔でどこから仕入れてきたのか分からないが色々な話をしてお金を稼ぐ吟遊詩人だったか、そう言う仕事だったはずだ。

このダンジョンに来てからもそれは変わらず・・俺たちの中で、いくつかこのダンジョンマスターと約束をして放免となった変わり種だ。

人懐っこい愛嬌のある顔にそれでもそれなりに鍛えられた体をしていた。

・・・そいつだったはずだ。

今改めて見るとその頬はこけ、目の下には隈ができている。

若干やせたのではないだろうか・・。

そんな疲れ切った顔でぶつぶつぶつぶつ・・つぶやいているのだ。

これは・・・何というか怖い・・。


「・・・・あぁ、もぅ。ウザったい。ぶつぶつつぶやくな。こえぇだろうが・・。まぁ、明日は一言断れば休めれるだろうから・・話ぐらいは聞いてやる。だから、これ食って、寝ろ」


「本当か!では!明日!よろしく頼むぞ!」


その不気味さに話だけは聞いてやると約束し、そいつの顔がパッと明るくなるとすぐに藁のベッドに飛び込んで・・・・すぐに寝ついてしまった。

おい、飯は?

はぁ・・・なんだか・・なぁ・・・。


『あなた。本当に人が良すぎますね』


不意に聞こえた声に周りを見渡すがそこは一人暮らしの狭い部屋だ。

誰もいない。

・・・・あ、俺の寝る場所ねぇ・・・・・・・。

くそったれ・・・。


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