44.
前もって謝っておきます。
作者には神様を誹謗中傷するつもりはありません。
でも、ごめんなさい。
熱心な信者様。
怒らないでください。
そこはあれだ。
ダンジョン制作の時に居る部屋のようだった。
つまり、距離感も大きさも分からない真っ白な世界。
当然だが、さっきメールとかいうのを押したのだ。
決して・・間違って新しいダンジョンを作るボタンを押した覚えはない。
「いらっしゃい」
混乱して呆然と前だけ見ていた時。
後ろからの明るい軽やかな声に慌てて振り返る。
そこには・・ポツンと庭園にあるような・・・
あぁっと・・あれだ。
針金で様々な模様を作ったみたいな・・細工の施されたと言えばいいのか・・
まぁ、そんなテーブルと二脚の椅子。
そして、片方に私と変わらない年に見える少女が座っていた。
ふわふわッとした、あれだよ、発表会のドレスとか、それこそフランス人形のようである。
と言うか、その物みたいな少女である。
ただ見た目は陶磁器の様な・・病的と言っていいほどの白い肌に黒い真っすぐな髪にこげ茶の目。
ふっくらとした・・だけど、ほっそりとした卵型の顔。
ふっくらとした形の良い唇はほんのりピンクをしている。
良く言えば整いすぎてる、悪く言えばこれと言って特徴のない美人と言うのか中立的な顔の少女だ。
声をかけて来て無かったら、人形が座っていると思ったかもしれない。
スーーっと前の椅子に招待するように手を動かしかわいらしく微笑んだ。
普通ならそれだけでも不気味とか言いしれない不快感が起こっても良いようなのだが・・。
不気味ではなく不思議だと認識している自分に驚きながら、促されるまま開いている椅子に腰を下ろした。
視線を戻すと目の前にティーカップと紅茶が・・。
彼女はそれを優雅に一口付けてから。
「まずは見習い卒業おめでとう」
くすっと笑う彼女。
「あ、ありがとうございます」
「あぁ・とぉ・・侵略成功おめでとぉ!ま・あ。あんだけ、あれがお膳立てしてんだからぁ。こうなるのは分かってたんだけどぉ。でもねぇ、もう少し先。自分のダンジョンをひと段落させてからだと思ってたのよねぇ。まぁ、あそこもそろそろヤバかったしぃ。結果オーライなんだけどぉ。あ!この後どうするの!私的にはぁ、世界せいじゃなくて世界統一してもらってぇ、それに歯向かう王子様とかぁ、勇者様がぁ四苦八苦してるとこぉ見てみたいなぁ。あ!でもそれはありきたりよねぇ・・それかぁ愛は世界を救うとか言っていっそのことぉ私に歯向かってみるぅ?それもそれで楽しんだけどさぁ!まぁ、その時は殺すように仕向けるけどw」
あ、苦手な人だ・・。
最初はどこかのご令嬢と言った(本物のご令嬢を知らないが)印象が一気に砕け散った。
きゃははっと笑いだしそうな勢いで堰を切ったようにしゃべりだした彼女に完全に腰が引け、引きつっているだろう顔を全力で笑顔を作るように努力する。
と言うか!どっちにしても私死にませんか!
もう一言言えば・・顔は笑っているのに目が笑っていない人・・初めて見た気がする。
「で、あなたは私とどういう関係になりたい?」
不意に真顔になった彼女が放った言葉に私は咄嗟に反応できなかった。
私とどういう関係とはどういう意味なのだろうか?
「あぁ、私が誰かまだ分からないんだ」
ポカンとしている私に彼女は不思議そうに言った。
普通ならもう察しが付いているだろうという事で・・候補と言うか、そうだと言う確信はあるが・・。
私はため息をついて心を落ち着けるとそれを口にする。
「私はあなたの駒思い通りに動く気はありませんが敵対する気もありません。神様」
「あらぁ、正直ねぇ」
今度はどっかのお姉さんのようだ。
乾く喉を潤そうとして目の前のカップを見るが・・・何か嫌な気配があるのでやめておく。
代わりに唾をのみ込んでから彼女を見る。
「まぁ、そういう回答する人はぁそれなりに居たけど・・あなたはどんな関係をお望みかしら?」
「さぁ?適度なお付き合いですかねぇ・・だって、信じすぎるのも嫌いすぎるのも狂気を生みますから」
「・・それどういう意味かしら」
「だって・・・私の記憶の中では・・同じ神様を崇めていると思われる宗教家たちが、・・・・いえ何でもありません」
「あぁ、あれねぇ。ホント不思議よねぇ。あそこの彼。そんな面倒な事しないタイプなんだけどなぁ・・・そうそう知ってる?」
「何をですか?」
普通に返すと微笑みからいたずらが成功したみたいなニヤッと言う笑い方に。
あ、失敗したと思ったときにはもう止まらなかった。
「ああいう宗教の元の神話ってのはねぇ。歴史書なのよ。た・だ・の歴史書。自分たちに都合の悪い所をちょこっと隠したり、自分たちを偉く見せるために盛ったりしてねぇ。ていうかさぁ。星を作るのだって大変なのよ?星全体に手をかけるのも大変なのに、あんな生まれてすぐ消える子たちをいちいち導くなんて面倒な事するわけないじゃない。まぁ、するような人も居るけど私はしないわよ。だって私たちはただご主人様を満足させるためだけに星を作ってんだからねぇ。星の上で起こる様々な事を厳選して、本にして、ご主人様に読んでもらって、気に入られればご主人様直々にお会いできるのよ!あぁ、あこがれるわぁ・・・それにしても・・なんで、あんなぐうたらの奴の星が一番なのかしらねぇ。あそこの星が一番の成功例でねぇ。いまじゃぁ、ほとんどの星の手引書みたいになってるのよ。まぁ、あの星の子たちが書く本も面白いし、現にそれを参考に作ったって星もあるんだから!あ、そういった星は子に手を加えたって話も聞いたわねぇ。うちじゃぁ、普通に生まれたけど・・・いや、作っててあいつらに言ったかも・・まぁ、良いか」
や~め~て~~~~~!
私は聞かなかった。
私は何も聞いてない!
そう、私は何も聞いてないんだぁ!
笑顔を張り付け、そんな事を頭で考えながら。
でも耳をふさぐことができず、身動きできないまま。彼女の表情を観察していた。
動くに動けないんだから仕方ない。
ホントころころと表情も話し方も変わる人である。
最初はいたずらしているような顔をしていたかと思えば、うっとりとした顔でご主人様について話し、頬を膨らませて不満そうに言ったらニコッと笑いその星の住人をほめる。
ぶつぶつつぶやきだした彼女を笑顔だがポカンと見ていて思ったことをが一つ。
「あの・・」
「ん?なぁに?」
「なぜその星の住人の本を・・そのままご主人様に渡さないんですか?」
彼女は言ったのだ。
あの星の子が書く本は面白い。
そしてそれを参考に箱庭を作った。
なぜかそれをそのまま提出していないという事だろう。
あ、著作権とかあるのか?
と疑問がポロッとこぼれ・・・それを聞いた彼女は完全にその動きを止めたと思えば、真顔で私を見てきたのだった。
地雷を踏みぬいたみたいです・・・はい・・・。




