38.
明けましておめでとうございます!
新年一発目から少し気分を害するような内容になっております。
軽く読んでくれると助かります。
話を聞き終え、私は深くため息をつく。
彼、クマノヒコの話はまとめるとこうだ。
クマノヒコの曾曾祖父の代の話から始まった。
その頃は二回海を越えた先の土地で暮らしていたらしい。
それはそれは立派な国であった。
だが、大きく拡大してきた隣国に服従せよと言われ、戦いとなり、敗れたそうだ。
まぁ、良くある話だろう。
そこで服従しないためにセリヒコの先祖である国王は先祖代々の土地を捨て生き残った国民と逃亡。
苦労の末、海を渡りどこかこことは別の土地にたどり着いた。
島の者たちは弱く蹴散らして新しい国に最適だろう土地に腰を下ろしたそうだ。
近くの村々を併合しつつ、森を切り開き、水田や畑を作る。
荒らしに来る動物たちを殺し、襲ってくる獣たちを倒していったのだそうだ。
まるで栄光の日々を思い出すように語るクマノヒコの話。
それは今までの暮らしを取り戻そうとしていった開拓民たちから見た話だった。
つまり先住民たちから見れば、先祖代々の土地を追われ、近くの村は襲われ奴隷に。
その上、最適な土地と言うのは大体決まっていて川の近くと見るべきだろう。
そんな土地はたぶん先住民にとっても大切な場所なのだ。
つまりは近隣の村々は土地を取り戻そうと襲ったが撃退された。
という処か。
それと動物と獣って・・・獣の方はたぶんあれだ。
獣人を差しているのだろう。
どんなにすばらしい国だったかを話していたクマノヒコ。
だがその顔が渋くなる。
クマノヒコの話では父が子供のころからだんだん作物が実らなくなっていったらしい。
その頃から襲撃は激しくなり食料をとられるようになっていった。
最初は村単位での襲撃だったのだろうが近隣の村々が連携して襲撃をするようになっていき・・。
そうしているうちに襲撃者の中に術師が現れ、武器が青銅製となって撃退しにくくなっていった。
そして、クマノヒコが幼い時にとうとう国を捨てることになったそうだ。
そしてまた海を渡りこの島へと移り、今度は周りと交流しつつ生活していったらしい。
だが、去年からまた食料をめぐっていざこざが起こり始め争いが勃発。
人数も少なくそれなりに食料を確保していた彼らの村は当然狙われることとなり・・。
早い段階で村を捨て逃げ出してきたのだと言う。
なんとなくだが、食料を確保していたよりも交流はうまくいってなかったのではないかと思う。
彼の様な高圧的な見下した言動の爺様がそれなりの地位についているのだ。
似た様な気性の人物が食糧を分けてもらえないかと来た周辺の村人に神経を逆なでする言動をしていたのではないだろうか。
それで反感を買いまた集中的に狙われたのだろう。
まぁ、それは置いといてだ。
「そして、馬どもに追われ、谷から落ちた所で・・忌々しいがそこの小童共に助けられたのじゃ」
「なるほど・・・。話は分かったがのぉ・・。クマノヒコ殿」
「なんじゃ。小娘」
「クマノヒコ殿!」
「そなた、言葉は選んだ方が良いぞ?そなたがしている事は己が主であるセリヒコ殿を貶めているものぞ?」
「な、なに・・儂がいつセリヒコ様を貶めていると言うのだ!」
その反応に私は目をずらし息を吐く。
分かって無いようだ。
「その態度のことだよ。その高圧的な態度がねぇ。それじゃぁ、どこ行っても良くて追い出される。悪くて・・ねぇ?言わなくても分かるんじゃない?」
「ふん、何を言っておる。セリヒコ様は我らが王で偉い。そして我らは強い。それだけで獣共よりも偉いのだぞ!」
「・・・・・・その獣共に追い出されて強いのか?」
「そ、それは!あ奴らが!」
「卑怯な手をと言うなら、それは考え物じゃな。彼らは彼らの戦い方でそなたらを追い出したのであろう?」
「だからそれが卑怯なのだ!」
「己の卑怯の定義を押し付けるな。我から見れば、罠を張り、対等でない武器や術で倒す方も卑怯ではないか」
「な!」
「爺!朕にはどうしゅ様のいう事はもっともだと思います!」
「セ、セリヒコさま!?」
「どうしゅ様どうか爺をお許しください!」
セリヒコは深々と頭を下げた。
どうやら頭の固い爺さんよりも幼いセリヒコの方が状況が分かっているように見える。
見えるだけかもしれないけど。
それを見た大人たち・・苦々しい顔をしている爺様含む全員、深々と頭を下げる。
それを見ると私は立ち上がる。
その音に窺うように少しだけ顔を上げる彼ら。
「そうじゃな。許そうかの。我も大人げなかったかしなぁ。まぁ、見た目通り大人ではないがな。さて、もうこんな時間じゃ。聞きたいことは他にもあるが、一旦ここでお開きにしようか。・・あ、そうそう。最後にのぉ聞いておこうかの。そなたら、これからどうするつもりかのぉ?」
「お、お許し願えるなら、少しだけここに置かせていただきたいと」
「ふむ、それは構わぬよ。あ、そうじゃ。もし、いくつか条件を呑むのなら・・じゃが、今居る場所に定住してもらっても構わんと思うておるんじゃよ」
「は・・・はい?・・・」
完全に顔を上げポカンと口を開けて見上げてくる。
それに意地悪そうにいたずらが成功したように微笑むと私は一言「考えておいてくれ」と付け足し、その部屋を出ていくのだった。
とはいえ、これからを考えると人をまとめる力のある人呼ぶべきだよなぁ・・。
どうしようかなぁ・・・。




