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リナちゃんのダンジョン経営!  作者: 龍華
閑話 調査隊・ジゼンの数日間
42/117

6

紆余曲折はあったもののなんとか死体も集まり、最後の馬車が落ちたあたりに来た時だった。

そこには予想通りの場所に残骸があった。

所々凹んでいたり装飾は壊れてはいるが原型が分かる程度には姿を留めている。

その近くには槍に刺された人が転がっている。

だが、他に居ただろう乗っていた人物は発見できなかった。



「・・・馬車がここにあるんだから・・・あ、あそこっす。降りてきてる可能性もあるっすけど、あの木の中に飛び込んだのは見たっすよ」

「・・あそこに分かったわ・・すぅ・・セリヒコ様!クマノヒコ様!シラヒメ様!スズノメ様!居られるなら出てきてください!・・タケヒコ様の代理としてカミラが参りました!!・・・聞こえていたら出てきてください!!!」



飛び込んだ木々の方を指差すと隣についてきていた最初に話しかけてきていた少女が大声を出す。

それから同じことを数回叫ぶのを聞きながら周りを見渡し、なんとなく振り返る。



「ワガー!!!こっち来るっす!!!急いで!!」

「おぅ?なん!!!!は?!うぉ!!!ちょ!ま!」

「待ってください!!クマノヒコ様!!その方々は我々の恩人なのです!!」

「な!退け!退かぬか!化け物共が!怪しげな術で我が部下を誑かしおって!!」

「誑かされてはおりませぬ!偶々居て助けてもらったのです!」

「動けぬ者も生きている者は助けていただきました!!」

「我々だけではここにたどり着くこともできませんでした!」

「剣をお納めください!クマノヒコ様!」



馬車の護衛のため、残してきたワガーの後方。

止めていた馬車の後方の木の陰から飛び出してきた何かに気付き慌てて大声でワガーに声をかける。

慌てた声に何事かとワガーは走り出し、後ろを通り過ぎる何かの気配に慌てて振り返る。

そこには剣を振り下ろした姿で留まっていた男が居た。

そのままその男はワガーに突っ込み、剣を突き出してくる。

それをワガー慌てて避け、突き出した体を無理やりスイングするように切りかかってくる男から飛び退き、距離を取った。

その男とワガーの間に割って入ったのは軽傷だった若者たちと狼たちだ。

狼たちは唸りながらすきを窺い、若者たちは飛び込んできた人物を説得し押しとどめようとする。

だが、クマノヒコと呼ばれたその人は聞く耳を持たないようだ。

そこに紙が数枚不自然に真っすぐ飛んできた。

それは旦那が時々使う魔法札なのだろう。

それはワガーを守ろうとしていた若者たち、こちら、そして二台の荷馬車に飛んでくる。

マナを得た魔法札という物は得たマナを使い果たすか指示されてある魔法を実行しない限り、ほぼ防ぐことができない。

その事を知っていたジゼンたちは何が起こっても良いようにそれから目をそらさないようにした。

だが、攻撃ではなかったようでそれは頭の上で光ったかと思ったらそのまま紙が降ってきただけだった。



「スズノメ殿!助力かたじけない!さぁ、目が覚めたであろう!とっとと退かぬか!」

「だから!引くのはクマノヒコ様です!先ほどから言っているでしょう!」

「な!何!まだ騙されておるだと?!」

「ですから!我々は騙されても誑かされてもおりませぬ!」

「ス、スズノメ殿!」

「クマノヒコ様。どうやら、彼らの言っていることは正しいようです。術でどうこうなっているのならば先ほどの札で何とかなりますから」

「ならば、言葉巧みに騙されておるのだな!?」

「少しお待ちください。彼らとて、かの者たちの話をすんなり信じることはないでしょう。つまりそれだけの恩があったという事。彼らのいう事は本当だという事なのでしょう」

「う・・うむ・・」



駆けだしながらも札が飛んできた元の方を見るとそこには二人の子供と一人の女性が立っていた。

そして、クマノヒコがその女性に声をかける。

どうやら彼女がスズノメらしい。

慌てたが何とかワガーと合流し、黙って聞いていれば中々にひどいことを話している。

それに気が付いているのか口を挟む事は無いがオロオロとこちらとあちらを見る助けてきた人々。

それにため息をつき、ジゼンは言葉を挟んだ。



「お初にお目にかかる。我々はこの森に住まう者なり」

「ふん!下賤の者が何用だ」

「元来、用はありませぬ。ただ、あなた方が落ちてきたのを見えたので、生きている者が居たならば話を聞きたので助けよと言う我が主の命に従っただけのこと。そして、クマノヒコ殿、でしたな。言葉には気を付けていただきたい。この森にはあなたが言う下賤の者しかおりませぬ。そのような態度をとっておれば必ず森の者たちから何かしら危害を加えられる恐れがありましょう。あなたは良くとも周りの部下の方々、さらに言えば守るべき方々に迷惑となりましょうな」

「そ、そんな事は無い!我が部下がそのようなことで」

「クマノヒコ様!お待ちください!我々がこれだけ動けるのも彼らが薬を与えてくださったからであり、そして、ここまで来れたのも彼らの、強いては彼らの主の命が在ってこそなのです!我らだけではこの森を進むことも部下、同輩どうはいを探し出すこともできなかったでしょう!それほどにこの森は危険です!ここで彼らに見捨てられれば、この先ヒコ様方を守ることができなくなってしまいます!」

「クマノヒコ殿。タケヒコ殿の言い分はもっともでしょう。先ほども、少し進むのにも一苦労いたしました。この森はこの怪我人を抱えて進むには過酷な物になりましょう。その上、追手の事もありまする」

「・・・・」

「クマノヒコ殿、スズノメ殿。そこで彼らの提案を呑みたいのですが・・」

「提案・・ですか・・」

「話の手短にお願いいたしますよ。我々も夜までにはここを立ちたいので」

「・・・分かっております」

「では、我々はそのあたりを見て回っております」



疑わしそうにスズノメは遠くからジゼンたちを見る。

それにジゼンは困ったと言った風に頭を掻き、タケヒコに一言言う。

そして、ジゼンはワガーを連れ、多少離れた木の陰に腰を下ろす。

その隣でワガーと狼たちが聞き耳を立てながら腰を下ろした。



「ご苦労さん」

「はぁ・・・疲れたっす」

「それにしても良くあんなしゃべり方できたなぁ」

「一応一時期、外交役目指した頃に・・」

「お、お役所仕事筆頭モテポスト狙ってたのかよ」

「・・・そうっすよ。悪いっすか」

「んにゃぁ。そうは言ってねぇって。そっか、お前がねぇ」



そんな他愛もない会話をしながら時間をつぶしたのだった。

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