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リナちゃんのダンジョン経営!  作者: 龍華
閑話 調査隊・ジゼンの数日間
41/117

5

な、なかなか終わらない・・・。

「ワガーお疲れっす」

「よぅ、ジゼン。どうだった?」

「そろそろ動いて大丈夫だと思うっす。まぁ、もう少し安全をとって森の中を行くっす」

「了解。おぉい!移動するぞ!」



ゴミ山から少し離れた森の中。

木々は葉は落ち、枯れ枝にはなっている。

それでも上からは確認しにくいだろうとワガーに言い隠れてもらっていたのだ。

軽く挨拶して合流しつつもう一度崖上を確認する。

追っていた者たちはずいぶんと先に行っており、時折見える姿はずいぶん遠くだ。

そして、山とは反対方向で地図で見れば海の方だった。

スキル:遠目が無ければ見えない程度には離れている。

たぶんこっちに気付く事も気付いたとして戻ってくる事も無いだろう。

そう結論を出し、周りを見渡す。

最初にも確認していたが改めて見るとあの高さから落ちたとしては生きていた生き物が多い。

そこにあるのは荷馬車が2台。

その上に重体重傷と思われる者たちが数名横たわり、その周りを比較的軽傷に部類されるだろう人々が座っていた。

その周りに繋がれている馬は6頭だ。

声をかけられたので振り返った軽傷の人々は、こっちを見てギョッとした顔をしそしてこの世の終わりのような顔でうつむく。

そんな中で元気に行き来しているのは子供と言っていいぐらいの者たちだった。

チラチラとこちらを見るが出発の声に反応して、慌てて近くに繋いでいた馬に荷物を括り付ける。

だが、その中の一人がおもむろに立ち上がるとてくてくとこちらに近付いてきた。



「包帯が切れたわ。新しいの頂戴。それとそいつが連れ?」

「おう、待ってくれよ・・・ほれ」

「ジゼンっす。しばらくは一緒に行動するっす」

「・・・・そう・・。それで出発するのよねぇ」

「あ、ちょっと待つっす。ワガー。どこまで話したっすか?」

「おぅ?・・・助けるってこととここで仲間を待つことぐれぇだが?」

「・・・・そうっすか・・・いくつかはっきりさせておく必要があるっすね」

「え?お、おぅ」



嫌な物を見るような眼で見られ慌ててワガーに手招きをし話を聞く。

どうやら何も話していないようだった。

今後どんな目に合うのかという怯えからかこんな目で見るのかもしれない。

・・まぁ、ゴブリンだからかもしれないが。

ジゼンはそんな事を考えながら、深呼吸してから馬車の方へと行き、話しかけた。



「出発前にいくつか伝えておくっす。代表者居るっすか?」

「・・何をだ?」



それに答えたのは軽傷だった中で一番年のいった男だった。

急いでその男の近くへ、車の御者台に飛び乗り話をしやすいようにする。



「よっと、あなたが代表者っすね。じゃぁ、まずは・・我々の話っす。我々は主から生きて話せる者は全員話せる状態で連れてこいと言われてるっす」

「・・・・・ほぉ?」

「つまり今現在はあなたたちを見捨てはしないっす。どんな状況であってもっす」

「・・・それで?」

「だから、そんな陰気な顔しないでほしいっす。笑えとは言わないっすが・・できれば、毛嫌してますと言った態度は控えてくれっす。ここから先はあなたたちから見れば化け物と言われる種族しかいないっす。そんな態度とっていたら後々面倒っすよ?」

「ふん、こっちの勝手だろう。話とはそれだけか?」

「あ、いや、本題はこれからっす。たぶんあなたたちも知りたいと思っている話っすよ」

「なんだ?」

「先ほど、この先で最後の車が落ちたっす」



その一言でその場は凍り付く。

驚いてあんぐりしている者もいれば絶望的な顔をしている者もいる。

さっきよりも険しい顔で睨んできている人もいた。

一気にがやがやと騒がしくなる。



「その車はどうなった!」

「遠くから見てたんでどうなったかは分からないっすよ。ただし!途中で車の中から何かが飛び出すのは見たっす」

「・・・とびだした?それは・・あの方か?しかしあの方は馬に・・・だが・・」

「馬っすか・・・そういえば、最後の方で車に飛び乗って追っていた者たちを蹴散らしていた人が居たっすよ。その人っすか?」

「そ、それは本当か!」

「こんな時に嘘はつかないっすよ」

「ならば、みなの者!ヒコ様は無事だ!」



代表の言葉に周りは一層騒がしくなる。

その中、ジゼンは代表の肩を叩き、こちらに向かせる。

そして声をひそめ訊く。



「で、いくつか確認っす」

「・・・なんだ」

「まずは追っていた者はあなたたちの追手という事っすか?」

「・・・」

「一応、答えてくれないと困るっすよ?今後の方針を決めるっすからね」

「そうだ・・我々を・・ヒコ様方を追ってきた者たちだ」

「なるほど・・・なら死んだか確かめに来る可能性はあるっすか?」

「そ、それは・・・あるだろうな・・」

「じゃ、今まで亡くなった方々でそのヒコ様方の身代わりができる方はいるっすか?」



最後の質問に男は重苦しい沈黙の後、ゆっくりと頷いた。

どうやら居るらしい。



「それならいくつかお願いっす。周りの方々の説得とその死体の捜索、それとその身代わりを立てる人たちの説得してほしいっす」

「・・・分かった。少し時間をくれ。ただ、最後はできるかどうか確約できないが、良いか?」

「・・・分かったっす。話が付いたら呼んでくれっす。ワガー!少しあっち行くっすよ」



男の言葉にジゼンは答えるとワガーと共に馬車から離れるのだった。

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