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あれぇ?
おかしいなぁ・・・
これで終わるつもりだったのに・・
終わる気配がない・・・
交代して木の上から監視しだしてから数分。
いくつかの落下地点を地図に印しを付けながらワガーに連絡を入れた。
「ワガーどうっすか?」
<おう。見つけたぜ!やっぱ血の匂いがすげぇなぁ>
「そんなに血の匂いがするっすか?」
<判別できるだけだけどな!狼をなめんなw>
「なに楽しそうに言ってんっすか・・で、助かりそうっすか?」
<ちょっと待ってくれよ・・ん?・・・こりゃ、こいつは落ちただけの怪我じゃねぇなぁ>
「そりゃそうっすよ。さっき襲われてたじゃないっすか」
<いや、そういう意味じゃなくってな。元々怪我人だったってことだよ>
「・・・はい?怪我人?」
<落ちてすぐ包帯なんか巻いてあると思うか?一応薬与えてみるが・・助かるかは五分五分ってとこだな>
「それは重体っすね・・他の者はどうっすか?どれくらいいるっすか?」
<んっと、ひ、ふ、み、よ、いつ、む、な。7人ってところか。まぁ、今の段階で応急処置だけで助かりそうなのは4人てところだな。2人は薬与えてギリギリ。あとはもう無理だ>
「6人っすか以外に多いっすね・・・薬足りそうっすか?」
<分かんねぇな。それより面倒なのは反抗してくる気力があるってことなんだけどよ。まぁ、基本は応急処置程度で運んで安全圏で残った薬で治療ってことにするわ>
「頼むっす。あと地図に大まかな落下地点を書いておいたっすから参考にしてくれっす。あ、そうそう。これから報告するんでしばらく連絡はできないっすよ」
<おう、分かった。まぁ、結論が出るまで死なさないぐれぇにはしとく>
「そうしといてくれっす。じゃ、あとで」
<おう>
ワガーの状況を聞き出し次々と落ちていく馬や人、荷馬車を観察しつつ落下予想地点に丸を付けていく。
ジゼンはとても気の重いが報告が遅れるのもいけないと緊急連絡を入れるのであった。
~・~・~・~・~・~・~・~
<えっと、できるなら助けれるだけ助ける事と、あと、こっちも色々準備があるから、人数が分かったらすぐ連絡。それと明日帰ってくる事・・・面倒かけるけどお願いね>
「え、え?あ、はい!!!」
その前の爆弾発言とすまなそうに言うお嬢の言葉にドギマギしながらも急いでワガーに連絡を入れる。
「ワガー!応答してくれっす」
<ん、どうした?ジゼン。見捨てることになったか?>
「いや、逆っす。できるだけ多くの人を助けるようにと言われたっスよ」
<そうか。お人好しな・・ま、分かった。できるだけ助けるわ>
「あ、それと薬っすけど在庫気にしなくてよくなったっす」
<は、どういう・・・あれ?こんなにあったっけ?>
「・・どういう仕組みか知らないっすけど補充したってタマさんに言われたっスよ」
<タマさん?・・あ、お嬢の後ろにいた奴か>
「そうっす。それでまだ足りなくなったら連絡入れろっても言われたっす。なんで必要なら連絡するっす」
<え・・えぇ・・連絡するのか・・?>
「嫌でもするっスよ。てか、移動はどうしてるっすか?後で拾っていくのもきつそうっすね」
<あぁ、そこは大丈夫。ちょちょっと荷馬車修理したから>
「しゅ、しゅうりっすか?」
<おう!材料なんざそこらへんに転がってるからな>
「それは器用と言うかなんというか・・まぁ、良いっす。つまり今も連れて行ってるんすね」
<おう><ちょっと!さっきから何独り言言ってるの!そんなことしている間にさっさと探しなさいよ!>
<ちょ!独り言じゃねぇ!ってあとで説明すっから静かにしろ!>
ジゼンは突如飛び込んできた声にギョッとしつつ話に耳を傾ける。
どうやら助けた人間の中に比較的軽傷で意識もあった人物が居たらしい。
荷馬車の上から急げ!飛ばせ!さっさと探せ!とわめいているようだ。
「大変そうっすね。あ、あとで合流してと思ってるっすけどおいらが合流して大丈夫そうっすか?」
<お、あそこだな・・・と><ちょ!待ちなさいよ!>
<まぁ、大丈夫かどうかは分からねぇな。お、馬は・・う~ん。生きてんだけどな・・。人は馬の下敷きか・・あっちは・・>
「それはご愁傷さまっすね。崖の上の様子が落ち着いてから合流することにするっす」
<おう、一応一緒に来たゴブリンとあとで合流ってぐれぇに話しておく>
「そうしてくれっす」
まだかすかに遠くで先ほどの人物の声がかすかに聞こえる通信を切り、崖上に集中する。
そこにはもう屋根付きの豪勢な馬車と数頭の馬が並走しているだけであった。
確認しただけでも2台あった荷馬車は全て落ちたようだ。
その後から見えるだけでも5,6頭。
馬車に近づいては攻撃を仕掛ける。
時折、馬車に並走していた馬が攻撃を受け崖へと転げ落ちる。
その都度地図に丸を付けていく。
それが数回繰り返した頃だ。
ほとんどの並走していた馬が落され残った一頭から器用に馬車に乗り移った人物が周りの追っている者たちを近づかせないようにしていた。
これだけでも人離れしている。
そのせいか追っている者たちも攻めあぐねているようだ。
そんな時前方から走り寄る何かが目に飛び込んできた。
それは馬だ。
馬車を引く馬よりも一回り大きな馬が馬車の方へと駆けてきたのだ。
突如、前方に別の馬が現れたことに動揺したのか、御者が操作ミスをしてしまったのか。
馬車は崖の方へ飛び出してしまった。
そのまま崖下へ真っ逆さまに落ちて行き・・・あれ?浮いた?
その場所には珍しく木が生えていなかった。
数度崖にぶつかりながら落ちていった馬車は他の場所では木々が所々に生えている位置に差し掛かった時ふわりと宙に浮いたのだ。
その折、馬車から何かが飛び出す。
そしてその何かは崖を数度蹴ったかと思うと一番近い崖に生えている木の中へ飛び込んでいった。
どうやら馬車に乗っていた者たちは無事のようである。
それから数秒後空中に止まっていた馬車がまたゆっくりと落ちていく。
それよりも崖上だ。
残っていた者も追ってきた者たちに次々と落とされ、追ってきた者はそれを確認した後帰るようであった。
山の方ではなく崖沿いにゆっくりと進んでいくのが見える。
しばらく見ていたが崖下を覗く様子は無い。
追っていた者の安否は重要ではないのか・・。
まぁ、あそこまで行くとすれば山まで行ってそこから徒歩で崖下まで行き捜索。
それで死んでいないと分かれば探し出して殺すのだから。
これは大変な作業だ。
だが、後々捜索に来ることもあるだろう。
・・・説得して身代わりを立てるのが良いか。
ため息一つついて、ジゼンはワガーと合流するため行動を起こしたのだった。




