23.お話聞きましょ!-2-
一泊、間を置いてからだろうか。それぞれの種族から疑問の声が上がる。ほとんどは「何言ってんだ、こいつ」みたいな話だった。その疑問は内々で話されているようでこっちに問いかけてくるものではない。だからと言って、相手の出方を待つのもなぁ。もう日が崖の向こうに沈んでいるし。そろそろ家路につかないといけないだろう。どうしようか・・。
「おい、聞きたいことがある!おぅう!あります!」
「・・お伺いしたいことがあります」
そう悩んでいるうちに猪族から二人の人物が出てきた。一人は怒った様子のがっちりとしたお兄さん、もう一人はヒョロッとした、いかにもひ弱そうな印象があるお兄さんである。声をあげたがっちりした方の肩をヒョロッとした方が、ポンと手を当てる。それだけでブルッとしたがっちりした方が少し言い直した。それを見ている間にその人たちの横に、蜘蛛族のお姉さんが降ってきた。たぶん、木から飛び降りてきたのだろう。周りより一回り大きい体をしたスレンダーなお姉さんである。その後からもう一人、普通のひ・・蜘蛛なんだなっと分かるお兄さんが糸を伸ばしながら降りてくる。見た目は普通のお兄さんだ。先ほどの猪族のお兄さんを足して割ったような感じの印象である。ただし、目が複数あり、手首のあたり、手の平の付け根ぐらいから糸を出している以外は。急に現れたように見えてドギマギしながら、今更だが彼らの特徴をじっくり観察する。
猪族はその名の通り猪の顔に似ていた。記憶にある、良く世間一般に信じられているオークと呼ばれる豚を人にしたような悪魔の全身を短毛で覆ったような姿である。頭部は全身を覆う毛とは色合いが違う髪の毛が生えている。髪の長さも人それぞれだ。そして多くの人の口元からは顎側の犬歯が変化した牙がニョキッと生えている。何やらどっかで見たアニメ映画で出てくるような姿をしていた。
蜘蛛族の多くは足の下が蜘蛛の胴体となっている。降ってきたお姉さんはこのタイプだ。中には人の形にした昆虫といった人もいるし、さっきのお兄さんみたいにパッと見、目が複数あるだけで人と変わらない人もいる。それ以上にまったく人と変わらない人もいる。まぁ、全体的に女性の方が男性よりも一回り大きいかった。
「私蜘蛛族が長、シャライアの娘、スライアと申します。岩玉様の使いの者であるあなた様にお聞きしたいことがあります」
「あ、俺、あ、いや、我は猪族が長老の一人、ゼライドが一子、ゼレイだ、です。わが弟、サレイがあなた様に聞きた、お伺いたいことがある、あります」
出てきた代表、今名乗りを上げた二人はそれぞれ相手を睨んでから、慌てて腰を下ろし・・それぞれの敵意がないことを示す動作だろう姿勢を取る。男たちは胡坐をかいて両手を拳にし地面に押し当て頭を下げる。それに対して蜘蛛族のお姉さんは蜘蛛の腹を地面につけ足を投げ出し、両手の手のひらを広げて見せ頭を下げる。たぶん普通の人ならその状態から素早く動いたり、反撃をするのは難しい・・・と思う。分からないけど。素早くスラスラと自己紹介?をするお姉さんを見て、慌てて猪族の怒っているお兄さんも自己紹介する。今更だが、怒っているんじゃなくて緊張しているのかもしれない。後ろからヒョロッとしたお兄さんの見えない腕で何かされているのか体を揺らすと慌てて訂正をした。こういう事に慣れていないのがありありと分かる。
「あ、固くならなくていいよ。そういうの私好きじゃないから、普通にね。ただねぇ、そろそろ私の家に帰ろうかと思っているんだ。だからさぁ、聞きたいことがあるならまた日が昇ってから私の家で聞こうと思ているんだ」
「は、はぁ」「そ、それはつまり?」
「それぞれから質問がある人と代表者、そして食べ物を探すのがうまい人合わせて五人ずつを私の家に招待しようって話だね。あ、あと、残った人は村に帰って私が現れたこと、それと、この森の異変を聞きたいと言っていたことを長老たちに伝えなさい」
それを聞いた彼らはザワッと沸き立った。困惑気味な彼らがそれぞれで話し合う中、がっちりとした猪族の青年 (たしかゼレイだったか)が、ずいっと出てくる。
「おい、着いて行ったらもう村に帰れないってことはねぇんだよなぁ!」
「な、兄さん!なんて口の利き方を!」
「う、うるせぇ!あいつが普通にって言ったんだ。これぐれぇいいじゃねぇか」
なんか見た目だけだと、体の大きい兄のほうがなんでも勝ちそうなのに、弟に押され気味なお兄さん。それはまぁ、横に置いとくとして。どうも私に着いてきたら二度と村に帰れないと勘違いしているような口ぶりである。
「帰れるよ?帰さないとほかの村の代表者が来れないじゃない。今回連れて帰るのは道を覚えてもらうためだしね。だから早めに出たいんだけど」
ちょっと不機嫌な声になっているのはわかっていたが、それを抑えずにいうと、そのあとは早かった。猪族は代表弟が、蜘蛛族は前に出てきていたお兄さんが代表として来ることになり、蜘蛛族のお姉さんと猪族の代表者の兄の方が村に伝えに行くらしい。まぁ、これで帰れるな。暗くなる前に帰れそうだ。良かった、良かった。
【選抜:猪族の場合】
ゼレイ:それじゃ、俺が行くから後頼んだ!
サレイ:(ゼレイの後頭部をはたいてから)何、寝言言っているんです。兄さんは。さっきはあの人が寛大な心で受け答えしてくれましたけど、もしかしたら村がなくなっていたかもしれないんですよ?分かってます?
ゼレイ:えぇと・・おぅ。
サレイ:だったら行くなんて言わないでさっさと村に帰って父さんに説明してきてください。あ、アラン、兄さんをお願いします。
アラン:は、はい!サレイ様!
ゼレイ:いや、だがな。お前が行くより俺が行った方が村のためだろ?
サレイ:(長い溜息をつく)兄さんは僕がいった事聞いて覚えて帰ってこれる?
ゼレイ:ぅぐ。いやそれは・・
サレイ:それに質問してその回答にまた疑問を持てる?
ゼレイ:・・・・分かった!分かったから!帰って岩玉様の使いが現れたことと・・・・・なんだっけ?
アラン:森の中の変化をどんな小さなことでも聞きたいと言っていることを伝えることですね。
サレイ:そういう事。アラン、兄さんを本当にお願いしますね。さて、他に行きたい人は手あげて!
【選抜:蜘蛛族の場合】
スライア:行きたい人は手をあげて!
???:では、私が行きましょう
スライア:え?ザームがいくの?
ザーム:はい、少し聞きたいことがありまして
スライア:聞きたいことって?
ザーム:どの範囲の村の者を集めればいいのかとかですかね。それでスライア様にお願いがあるのですが。
スライア:な、なによ
ザーム:長にこのことを伝えていただきたいのです
スライア:えぇ~~
ザーム:行きたいと思っていることは私も分かっておりますが。もう一つ分かっていることがございます。
スライア:・・・・それは何よ
ザーム:それはスライア様が帰らず、使いの元に行ったと長が知れば必ず長は戦える者たちを連れて使いの元に行くだろうことです
スライア:・・・さすがにそこまでしないわよ・・・・お母様は・・・・・
ザーム:本当にそう思いますか?
スライア:・・・・・分かったわ・・母には私から話します
ザーム:分かっていただき恐縮です。では、私と一緒に来られる人を決めましょうか。
リナ:こういうわけで代表たちは第一回目の訪問には来なかったのです。それにしてもめんどそうな人たちが来た気がする。
作者:ホント、どう動いてくれるかな・・・気が重い
リナ:そこは作者あんたが考える事だから。頑張ってね。さ、お家に帰ろう!
作者:ふ、すんなり帰れると思うなよ!そして、すんなり書けると思うなよ!それじゃね!アディオス!
リナ:は!?え!ちょっと作者!!!さ!く!しゃぁ!!




