20.さ、お出かけしましょ!-3-
本文は難産だったのに・・
あとがきの方がスルスル書けるってどうだろ・・
そして、あとがき・・・外伝として書いても良いかと思う今日この頃である
てか、夜のテンションって怖いね!
「はぁ・・・これは・・」
色々あったが、何とか準備が整い、出発してから数十分。
自分の領土というべきダンジョンの端まで来てダンジョン内部と外の景色の違いに呆然となってしまった。ダンジョンの森は深緑の葉が茂り、そろそろ夏といった感じであったのに対し、外枯れかけた葉を茂らせるまさに冬到来といった感じであるのだ。ちなみにここらの季節は夏である。この森全体がこの状態なのか、ここが一段とひどいのかは、今のところ分からない。
それはそうと今の隊列を見渡す。先頭に食料を詰め込んだ私のリュックを背負ったギラムスが進み、その後ろを私とレムを背負ったシャル、そのシャルの両脇をギルバと先生が歩き、しんがりにジラムが行く。それと他にも四匹の狼がスラメタル除く四匹の名持スライムを背に周りを巡回している。
ちなみにシャルは布でできたハーネス(胴輪、というかお腹周りの余裕がない犬用の服のようである)に木製の鞍と2つの籐かごを組み合わせた物を背負い、私とレムは進行方向を背にして背筋を伸ばせば顔が出るぐらいの深さのかごの中に座って居る。もう一言いうとその鞍には人が一人乗る場所が付いてたりする。よく西部劇とか、『母を訪ねて三千里』で出てくるようなロバの背負いかごと同じかどうかは私には分からない。便宜上その道具の名前、パニアと呼んでいるが。余談であるが、家畜が背負ってる籠みたいと言ったらタマが教えてくれた。本当に物知りである。
あ、ついでにマリアとタマはお家でお留守番である。今頃、狼たちの褒美の後片付け、つまり皮と骨の回収をしているんではないかと思われる。まぁ、何かあれば・・いや、寂しくなれば連絡してきそうではあるが。
そういや、さっき籠に入るときに少し青くなっていたレムは大丈夫だろうか?・・・・青を通り越して、白く・・土の色?になっている。この森の状況のせいなのか、それとも狼の背に揺られているためなのか・・・。なんとなく両方な気がする。まぁ、今は放ておく方が良いかもしれない。
「先生。これ、どれくらいひどいの?」
「ん、うむ。・・・・あれだ。麦で言えば雨が長く続いている状態と言えばいいか」
「それって・・・どういう事?」
『このままいけば深刻な被害が出るという事です』
上を見上げて、横に居るだろう先生に声をかけ・・・あ、そういや、コアが居た。こっちに聞いてもよかったんだ。それよりも・・
「そんなに深刻じゃないの?今の状況。」
「最悪ではないという事であって、深刻な状況には変わりがない。今すぐに手をうてば、ある程度か、ん?何か居たようだな」
少し離れた所から狼の遠吠えが聞こえてきた。どうやら何かを見つけたようだ。背伸びして外を見渡す。事前の打ち合わせ通りに先生はシャルの背に飛び乗り、ギルバさんはすぐさまシャルのそばから離れる。見えたのはそこまでだった。今までとは格段に違ったスピードで景色と共にギルバさんたちの姿が見えなくなる。余計な物を背負って動き辛いはずなのに結構速い。あれだ。歩くスピードから一気に車の法定速度ぐらいになった感じだ。別の世界で法定速度も無い気はするが。
「い!おい!ま!くそ!」
そんな事を考えているうちに聞こえてきた先生の声と共に肩を掴まれる。見上げると先生は身を低くし鞍からのびる手綱をくわえていた。すぐに先生の力とは別の力で押さえ、いや、違う、体が重くなったと思えば、浮き上がる。慌てて、荷物籠の底からのびる腰に巻いた荒縄を握りしめようとして、その前にすぐにまた体が籠の底に押し付けられ・・・それが三回繰り返したところで止まった。まだ揺れている感がするがたぶん止まっているだろう。かごから投げ出されずに済んだようだ。ただ今はまともに立てる気がしない。
「これはまた・・・」
何とか、かごの枠を掴み支えながら外を覗き見ると目の前に枝葉のない空と木々の頭?の枝葉が見える。先ほど見たときは低い木でも最低でも先生の身長の二倍以上の高さに見えたのだから、つまり二階の高さぐらいは確実に昇ってきたという事らしい。それにしても全体的に土色に見えるのはかなり問題な気がする。
そんな事を考えていると急にかごが傾く。慌ててバランスを取ろうとしている間にすぐにシャルが吠え、クゥーンという声と共に籠が大きく揺れて、何とかかごにしがみついてから、体ごと横を見るとそこには偵察をしていただろう狼がスライムを乗せて伏せをしていた。耳も後ろに倒している。強面の大きい犬だが、かわいい!は、置いといて・・
「うわぉ、あれ何?」
「・・・虫人と獣人・・だな」
「オークとアラクネ?」
「なんだそれは?」
「うぅぅ・・あ、あれは猪族と蜘蛛族ですぅ」
どうやら私の知識にある名前はあまり当てにならないらしい。それはそうと今の状況では
~ピロリロリン~
【緊急クエストが発生しました】
びっくりした~・・目の前にいきなりクエスト画面が表示される。何?スペシャルクエストの派生としてなのだろうか?その1の下に一つ字下げされて緊急クエスト1と書かれている。どんな内容だろう?
【緊急クエスト1】
猪族と蜘蛛族を抗争直前に遭遇!
選択肢 猪族に加勢する
蜘蛛族に加勢する
双方の間に飛び込む
抗争終了後に事情を聴きに行く
放置してゴブリンの村にレッツゴー!
その他
うわぁ・・・なにこれ・・・うん。どれ選んでもえらい目に合うの決定じゃないか。
「ねぇ、先生。あれ止めて事情聴くのできる?」
「それは飛び込めという事か?無理だ」
「魔法を放ってこちらに注意を集めるとかは?」
「・・・できんことも無いが・・・」
「や、やっと、追い、つい、たっす」
振り返ればギルバさんたちが狼の背に乗ってそこに居たのだ。その前には5匹のスライムたちが集まっている。何を思ったのか近くの木の枝の方へと進んでいく。並んでいく姿はナメクジなのになんか愛らしいように感じるのは飼っているからなのかもしれない。
「おい、ここらのスライムを集められるか?」
「無理だよ。配下はほとん・・ど?・・え?」
「・・・・なんっすか?これ」
目の前の光景に目が釘付けになった。いや、スライムは増える事は知っているがこうも・・・。スライムたちは枝に取り付いたと思えば目の前で倍々に分裂、増えていく。それに合わせて取りつかれた枝先が時間が戻っていくように緑色へと変化していく。魔素を取り込んでいるようだ。
「・・・ちなみにスライムこれで足りる?」
「・・・あぁ・・・たぶん何とかなるだろう・・・・」
増えたそばから他の枝または他の木へと飛び移り、そこでまた増えていくスライムたちを見る。あ、スライム使って森を一時的に回復させるのもいいかも・・・。う、ちょっと気持ち悪い・・・。
【簡単!モンスター講座】
パフパフパフ!(どこからか聞こえてくる)
新人冒険者に贈る!モンスター講座がはっじ、まっる、よー!
栄えある第一回目は皆様おなじみのスライムについてだよ!
みんなはスライムって知ってるかな!?
〈耳を澄ます格好をし、一泊置く〉
『知ってる。どこにでもいるの』(囁く声で聞こえてきた)
うん!いい返事だね!そう!どこにでもいるモンスターだね!
じゃ、みんなはスライムがどんなもの食べてるか知ってるかい!
〈耳を澄ます格好をし、一泊置く〉
『ゴミ捨て場で見かける』(やっぱりささやく声が聞こえる)
うん!そうだね!みんなが出したごみを食べてるね!
他にも森の中だと落ち葉とか死骸も食べるよ!
これはそれらに含まれるある魔素を食べてるだ!
じゃ、なぜ村や町を襲わないかって?
それはスライムが基本的に生き物を避ける傾向があるからなんだ!
何で判断しているのかは今はまだ解明されていないが、生活の痕跡が多い所には絶対に近寄らないんだ!
では長期に離れる場合はどうすればいいか!
それは!塩をまくことをお薦めするよ!
ナメクジみたいにシワシワのスライムができるんだ!
これを珍味として生産する冒険者もいるぐらいだし非常食にするのも良いね!
と言っても家の近くで家庭菜園している場合は近所の人に一日一回見回りに来てもらうしかないけどね!
さて!ここまでは良いかな!
〈耳を澄ます格好をし、一泊置く〉
『うん』(野次の中にやっぱりささやく声が答えた)
そんな話より対処法をさっさと教えろ?そうだね!
それじゃ、対処法だけど今の話でも出てきたけど金に糸目をつけないんだったら塩を振る!そんなの無理!なら、火で燃やすか、凍らせて砕く方法だね!
なんだ、そんな事か、そんなこと知ってるって、君たち。
スライムがどんなに恐ろしいか知らないんだね。
じゃ、最後にスライムの真の恐ろしさが分かる話をしてあげる。
昔と言ってもちょっと前の話さ。
私が君たちより少しだけ先輩ぐらいの時に冒険者の数グループと一緒に、とあるキャラバンと一緒に行動した時の話だ。ある村を過ぎた所に濃度の高いの魔素黙りを見かけたんだ。そしてその近くで見張りをしてた僕はスライムを見かけた。森の中だったしそんな事もあるだろうって、その時は何とも思わなかったんだ。んで、すぐに忘れて村々を回って戻ってきたとき、その魔素黙りは消えていた。みんなで良かったと話し合いながら進んでいくと、とある女の子を拾ったんだ。その子はその先の村の子だったんだけど、ひどくおびえて何も話さない。不思議に思いながらもその子を送るついでにそこに泊めてもらおうって話になったんだけど・・・・・。
村のあった場所には何もなかったんだ。草も生えてない地面だけがそこには広がっていた。慌てて村を探すんだけど見つからない。もしかしたら村を魔素黙りで狂った何かが襲ったのではという話になったんだ。そう、その時になって僕はキャラバンのみんなに自分が見たことを話した。その時の冒険者の体長とキャラバンの商人が真っ青になって振り返ったんだ。そこには少女が立っていた。そしてこういったんだ。なんで見かけたときに話さなかったの?そしたら私食べられなかったかもしれないのに・・って、そして強風が吹いたと思ったらそこには少女の姿はなかったんだ。
『そういや、そんなこと言ったね』
(シーンと静まっている観客席から囁く声なのにはっきりと聞こえた)
みんな真っ青通り越して真っ白になって慌てて次の村まで駆けていったんだ。途中で森の中から動物の断末魔みたいな声がする。必死になって次の村に行ってそこで前の村の生き残りに出会う事が出来たんだ。まぁ、そのすぐ後にスライムの大群が襲ってきてね。大慌てでその村の塩をばらまき、集られてる家に火を放ったりとかして撃退できたんだけど・・・。あれは大変だったなぁ。
ん?その前の村の話をしろって?
あぁ、そうだね。生き残りの話ではねぇ・・ある女の子が家に帰ってこないって話で探しに行ったんだってするとそこには大量の赤く染まったスライムが居たんだって。それを覗くとそこには少女の靴がまだあってそいつの中には足の骨が見て取れたそうなんだ。少女がスライムに食われたと結論出したそいつは急に横に居たもう一人が倒れ悲鳴を上げたことにびっくりしてみるとそいつの足にスライムが取り付いて・・・・そいつ運がなかったんだね。そこで彼は取って返して村の倉から塩を担ぎ出して村に巻いて回ったんだ。それで、村長にそのことを話したんだけど信じてもらえない。家族と信じてもらえた人の家族だけ連れて隣村に話に行くという事で避難してきたって話だったんだ。
じゃぁ、あの女の子はなんだったんだって?さぁ?その最初の少女のゴーストだったかもしれないね。今でも後ろから聞こえるんだ。どうしてあの話しないのって・・・。
『だって、こういうときに話さないと、ね』
(真後ろから聞こえた気がする)
まぁ、どんな些細なことでも、どんなに仲間に笑われても、情報の共有は大切だってことさ!君たちも気を付けようね!
さ!これで第一回の講座は終了だよ!次回はストーンヘッドラビットだ!楽しみにしててね!講座は僕!ゴブリンのゼンドラと
『レイナ』
がお送りしました!
(照明が消える瞬間、講義していた少年の横にひょっこり女の子が見えた瞬間、観客が一斉に悲鳴を上げて逃げ出した)




