14.厄介ごと、いらっしゃ~い!-3-
「そろそろ話してくれない?」
二杯三杯と出された紅茶を飲みほし、しばらく渋いというか怖い顔をしている先生。こっちもそれに合わせて飲んでたためにお腹がタプタプ言っている。そこまでしゃべりたくないのかねぇ。
「ダンジョンの維持のためだ」
「へ?」
しゃべりだしたと思えばなんだろ?ダンジョン維持?・・・あぁ、つながってるとこの。
「ダンジョンマスターが消されればダンジョンコアは機能を停止する。という事は知っているか?」
「え・・・、あぁ、そんな事書いてあったね。それで」
「実際は違う。ダンジョンコアは一部の機能以外生きては、いる」
「ほう?コア、そうなの?」
『はい、ダンジョンコアは譲渡された場合のみ、譲渡された方が消滅するまでまたはダンジョンコアが持ち出されるまでは許された範囲のみのダンジョンの機能を有します』
確かダンジョンコアはそのダンジョンを拡大以外に魔素の調整とかの機能はあったはずだ。余分な魔素はDPに・・・て。許された範囲?
「ふ~ん?ん?じゃぁ、何でDPが必要なのさ?」
『ダンジョンマスターの権限で制限をかけることができます。憶測ですが、魔素の吸収しDPに変換する機能に制限をかけられているのでしょう』
「その通りだ」
うん、魔素が調整できないことは分かった。けど?
「それで?DPは?」
『魔素の調整には他にもあります。たとえばDPにする方法以外に魔素調整球、俗に魔水晶と呼ばれるものがあります。それの購入代金と憶測します』
「・・・・・その通りだ」
「魔水晶?」
『魔素を吸収、放出することで魔素濃度を一定にするアイテムです』
魔素を均一化する装置か・・・。ん?・・・と、先生のところだと吸収だけ使ってるのかな。
「へぇ・・その魔素ってDPに還元できないの?魔力にとか?」
『DPに還元は可能です。元々DP貯蓄用のアイテムとして作られていますので、ただしDP還元の機能があるコアでしかその操作はできません。あと魔力に還元はできません。あくまで魔素を備蓄して放出する機能しかありませんので』
DPは魔力に還元できるのに魔素は魔力に還元できないの?なんか不思議。
「あとは・・・許容量限界までなったそれはどうなるの?壊れるの?壊れたらどうなるの?」
『どうにもなりません。破壊すれば溜めた魔素が放出します』
つまりかなりストックというか貯蓄していると見て良いのだろうか?つまり資金がいっぱい!?
「ふ~ん。先生、どうしてるの?」
「ど、どうとは?」
「溜めてんでしょ?その水晶」
たぶん先生から見たらギラギラした目で自分でもとても笑顔だと思う顔で詰め寄っているのは分かってるが、やめられない。それを使って何をしようか!と思うとやめられない!
「だ、だったらどうだというんだ?」
「ちょうだい!」
お菓子ちょうだい!お小遣いちょうだい!といった感じに言って見る。先生すごく引き気味だ。でも構うつもりはない!ホント今何かするほどDPが無いに近いのだ。仕方ない!仕方ない!
「はぁ!?・・・渡したとしてどう使う?」
「そんなの決まってる!DP還元!先立つ物が増える!」
「さ、先立つ物?」
「まずはこの森全てを買い取るだけはほしいな!そしたら崖に道を付けてどっちからでも通れるようにして」
「この森の者を殺す気か!?」
「なんで?」
何でそんな方向に行くのか本気で分からない。
「ダンジョンを開放するという事は大勢の侵略者どもを呼び込むという事だぞ!」
「侵略者って、それに道は崖の道をつなぐ道しか作らないって」
ただし、この家の前を通る道だけど。・・・これ言ったらどう思うかな。
「だとしてもだ、あいつらは森を荒らし、生きてる物を惨殺し、全てを奪うのだぞ!」
「・・・・偏見入ってない?」
「事実だ!現に!ッ」
「現に?」
「・・何でもない。だが、すぐに開放するというなら渡すことはせん」
「分かった、分かった。まずは森の把握だけの量でいいや。・・ちなみにコア還元したらその分彼にいくの?」
『魔水晶を受け取った時点が取得。それを還元するのであって取得するとは言えません。言葉遊びのようではありますが、全てマスターの物となります。』
うん。それは良いや。
「・・・・ただで提供するとは言っていないのだがな」
「え~~。なら・・・最初の一個は購入時の代金を渡すで」
「一個は?」
「そう一個目は。二個目以降は空になったそれと満タンのそれを交換していくてのはどう?」
そう、今は多くてすぐに交換になるだろう。あちらが調整したいときは出し渋ればいいのだ。それまでにはこの森が安定していればいいのだが。そう都合よく進むことも無いだろうが。
「・・・・・それで良い」
良し!次はどの話を聞こうかな。DPが出てきたし、あれだ!契約内容の見直しを!
「あ、それでねぇ」
『失礼します。皆様の支度が出来ました。』
タイミングを見計らっていたかのように・・・いや、タイミングを計ってたんだろうなぁ。声の方を見て・・・うん、マリアさんには一つ縛りを付けよう。天井から逆さに人が生えてるのってかなり心臓に悪い。そういう事を悟られないようにしつつ席を立つ。
「そう?なら行こうか」
先生が付いてくるのを見た後、そのまま店とつながる扉に歩き出すのだった。
~・~・~・~・~・~・~・~
店の二階は多目的ホールという名の空き部屋である。だが、今そこはどこぞの部族の部屋のような雰囲気を醸し出していた。床には大きな獣の頭なしの毛皮を二枚引き、手前手の毛皮の上に直接ゴブリン三人が座っている。というか頭を床に着けて待っていた。また、奥の毛皮の横の床に小さな毛皮を引いてタマとギルバさんがこれまた直接に座っていた。つまり、私はそこの真ん中に座ればいいのか?
『リナちゃん!はやくここに座って?あ、リナちゃん楽な格好でいいからね』
こういう時の連絡方法として頭に直接響くようなコアの会話方法は便利だなと思う。そのまま、相手の脇を通り毛皮の上に片膝を立てて座った。
「待たしたね。お話を聞こうか。あぁ、まずは頭を上げて。話辛いだろ?」
「いぃえ!このまぁで!身支度も満足にできず、すみませんでぇた!おらぁジュウの村の巫女でぇ、レムといぃまぁ。どぉか!どぉか!おらぁの命ぃで村をお守り願いまぁ!」
少々聞き取りにくい声ではあるが、内容が分からないことも無い。
「レムさんお話は分かりました。詳しく話を聞く前に他二人はどなたか聞いてもよろしいか?」
「す!すみませんでぇた!兄さぁ」
私が声をかけるとビクンと肩を揺らし、ガタガタと震え今にも泣きそうな声で隣の人物に声をかける。
「おらはジュウの村の者でレムの実兄、ジラムと言います。向こうの男はおらの友でギラムスと言います」
「ギラムスだ。よろしくだ!」
小さいほうがジラム。大きいほうがギラムス。どうやら、怯えきったレムよりもジラムに話を聞く方が良いか?でも、巫女を横に置いておくのもどうかと思うし・・・・まぁ、レムから話を聞こうか聞き取りにくいけどがんばろう!
【一杯目の紅茶を淹れている間に】
リナ:コア、タマに連絡して
コア:何と?
リナ:彼らの服を新調してって、確か、タマが直接買えるよね?
コア:はい
タマ:買えるよ!服はどんなのが良いの?
リナ:うぉ!どこに居るの!(キョロキョロ)
タマ:地下の大浴場だよ?
リナ:話せたんだ・・・まぁ、いいや。好きにして。あと会談は店の二階でするから、部屋の用意もしておいて。
タマ:多いなぁ・・・まぁ、そうするよ!それぐらい?
リナ:うん、あ、支度が出来たら呼びに来て
タマ:うん。あ、呼びに行くのは誰でもいい?
リナ:良いけど
タマ:了解!じゃ、またね~




