12.厄介ごと、いらっしゃ~い!-1-
『マスター侵入者です』
コアが警告してきたのは朝食を食べていた時だった。慌てて【ダンジョン】を見る。そこには赤い点が森の方から近づいてきているところであった。数は多数。数人のゴブリンが狼に追われているようなのだ。助けるか、見捨てるか・・手勢は・・・・・・・・・・・あら?増えてる?えっと?10数匹になってるし。
「そういやスライムで攻撃ってできるの?スライムが降って来たりしたら狼ってどんな反応する?」
「あるよ。対象に取り付いて皮膚を溶かすの。箇所によっては大打撃だからね。でも取り付くまでが一苦労だからねぇ。基本は止まってUターンかな。切羽詰ってたりしたら突っ込むだろうけどそっちの方が珍しいだろうし。大概の野生生物はスライム属を避けて通るんだ。ジェムだったら殺されるからね」
『どうしますか?』
このままいけばまっすぐそんなにしないで庭に彼らが来るだろう。
「中庭にスライムどれくらい集められる?」
『ゴブリンの到達までに全てのスライムを呼べます』
なら、決まりだね。
「来る方の木の上に待機させてゴブリンが庭に入ったら上から落ちて」
そう言いながらアイテムである物を買い込み庭へ急いだのだった。
~・~・~・~・~・~・~・~
最初に飛び込んで来たのは私よりも少し低いゴブリンだった。初めて見るので子供なのか、それとも成人しているのかは分からない。だが、そんなに怪我しているようには見えない。その背には籠が背負われていた。その中に居るのはそのゴブリンよりもだいぶ小さいゴブリンである。そのあとから最初のゴブリンよりも大きい何かを持ったゴブリンが現れる。これで、全員だろ。
「コア」
『はい、落下!』
その合図とともに木の上から次々としずくのように落ちるスライム。最初に突っ込んできた狼たちは飛びかかろうと飛んだ所だったのでまともに取りつかれてしまったようで金切声というのだろうかかなり甲高い声で転げまわっている。その様子に後方から追ってきていた狼たちは急ブレーキをかけこちらの様子をうかがっていた。その中には一回り大きな狼が居る。どうやら群れのボスのようだ。そいつをしっかり見て指でさす。どうやら相手は仲間のほうを気にして周り、私に気が付いていないようだ。
「テイム」
次の瞬間ビクッとなり、こちらに振り返ってきたボス狼。だが、それだけだ。成功したとか、失敗したといったナレーションもなく、にらみ合うだけの時間が続く。目をそらしたら襲われる。なんとなくだがそれが分かってしまったのだ。目がそらせない。そんな時間が長くもう限界だと思ったとき、相手のほうが目をそらしたのだ。
~ピロリロリン~
【使役成功:ウルフ】
【クエストクリア】
【レベルが上がりました】
そのナレーションを聞きながら私はその場にへたり込んでしまった。ステイタスを確認と・・・・・増えたのに減っている。
リナ
種族:ダンジョンマスター
職業:学者
Lv5
技術:1
名声:1
HP:19
MP:0/32
攻撃:8
防御:14
知識:23
俊敏:7
【ステイタス:配下】
ウルフ
種族:ウルフ
職業:クイーン
Lv8
HP:140
MP:10
攻撃:320
防御:296
知識:21
俊敏:210
そして、またしても理不尽である。レベル上がってるのにスライムにも勝てないのはどうしてだろうか。
「おめ、誰だ?」
独特の響きがある声に振り返る。そこには最初に飛び込んできていた小柄なゴブリンがそれなりに太い枝を構えて居た。少し離れた所にもっと小柄なゴブリンの入った籠を持った大柄なゴブリンが狼が来たらいつでも振り回せるように棍棒を構えている。
「ここに住んでいる者だよ」
そういって後方の家を差す。それにギョッとしてそっちを見てゴブリンたちは動きを止めた。どうやらそこに家があるとは思っていなかったようだ。元々の廃屋なら知ってるかもしれないが今の家はほんの二日前には無かったのだから当たり前かもしれない。
~ピロリロリン~
【配下の部下が支配下に入りました】
【怪我した配下が居ます。配下の怪我を直しますか(Yes/No)】
急に出てきた画面にイエスと答え、スライムと配下に入った狼には警戒の指示を出す。するとさっきまで転がってスライムを剥がそうとしていた狼はスライムを背中に乗せてこちらに来るではないか。スライムもしがみついているだけのようだ。そのまま私の周りに集まろうとしているみたいだ。ゆっくりと相手、ゴブリンを見ながら回り込むように私と彼らの間に入るように動く。
「ジラム、ウルフ来る!」
警戒を促す声に目の前の彼は狼たちのほうを振り返る。二、三、私と狼たちを見比べた後、彼らのそばまで駆けていった。そのまま手にしていた枝を両手でつかみ、振り回す体制を整えていた。その目はチラチラと籠の子を振り返りつつ位置を変えている。
「レムどうしたらいい?」
「兄さぁ、あの人とぉ話ぃしたぃ」
「・・・分かった。ギラムス」「お、おう」
その会話に戸惑いながらも大柄なゴブリンは籠を下ろし、私の方を向くように置いてから周りをまた警戒する。小柄なゴブリンは籠の横で睨んでいた。かなり怖い。それはそうと十数匹とはいえ配下が多すぎる。クイーンとリーダーぐらいには名前を付けておいたほうが良いかもしれない。ついでにスライムにも考えるべきかも。
「初めましてぇ神さぁの使ぃの方だとぉお見受けしぁすぅ。どうかぁおらぁたちぃをお助けぇくだせぇ」
画面のほうに気がいっていて声掛かって慌ててそちらを向く。そこには出してもらったのだろうか何かの毛皮の上に体を投げ出して・・平伏している籠の子がいた。他二人はそれをしかめっ面をして見ている。
でも、周りの警戒はしているようだ。
「ほぉ?手下を増やしたか」
かかった声に慌てて振り返る。今は昼間であり、ここは外だ。アンデッドが出歩けるのか。それとも・・・・すぐに元の位置に戻る。目の前に居るゴブリンのうちまともに見た二人がフルフルと震えていた。
「あ、戻ってきたんだ。あれ?彼らは誰だい?」
「手伝いだ。どうせ身の回りのことができんだろ。できる奴を連れてきてやったぞ」
「失礼な!まぁ、そうだけど」
ちょっと困ったなぁって声で対応するタマ。いや、困ったなぁじゃない。そういや、こうなることを考えてなかった。そこにははっきりと姿が見えるのに向こう側が見えるメイドと目の前のゴブリンと同じような小さなでも赤い服を着ているマサカリ担いだ小人が居た。何というか面倒事が一気に来た気がして頭が痛い気がする。この状況はどうしよう。




