81.
まずは・・・深呼吸して・・・
コアに触れつつ、他の者には見えない設定で、いくつかの画面を目の前に展開する。
「さて、先日の襲撃で、一時的ではあるが、多くの民が攫われていた。それはここに居る者たちであれば知っている事だろう。では、なぜそれだけの民が連れ去られたのか? それは、まずはあの場所に住む民に問題があると我は考えている。・・・・皆に、質問したい。あの折、我は鐘の音を聞いた。その意味は何だ? レイオード。代わりに応えてくれるか?」
「敵襲を知らせる鐘だが?」
いや、それはそうだろうが・・・・。
警報・・・なのだろ?
なんで鐘が鳴ってすぐ逃げた人いなかったのかねぇ。
つまりは入り江の方では鳴っていないという事だろうか?
「では、入り江の町では鐘は鳴らないのか?」
「鐘は鳴っている。だが、それは対処する者たちへの警告と言う意味でしかない。あれは、対処しきれなかった我々の責任だ」
それに多くの者が賛同の声を上げる。
え・・・えぇと?
つまり・・・・・・逃げるために使ってないってこと?
さてと、少しおさまるのを待ち。
「はぁ・・・何を言っている? 現に戦っていた者達の多くが怪我をしたではないか。死者が出なかった方が不思議なくらいにな。つまり・・・我々は弱いのだ。守るほうが弱いのに、守られる方は動かない? それでは次・・・どれだけ犠牲者が出るだろうなぁ。その時はまた何かが起こり、守ってくれる? は! 我がここに居るとは限らぬだろうに! 自分の身、そしてその両手で抱えれる命は自分で守ってもらわねば困るのだがなぁ。逃げる事もその一環だ。違うか?」
考えなしに思ったことを言う。
自分でも何言っているか分からないが・・・・。
まぁ、会場を静かにするのには成功したようだ。
「だが、人と言う生き物は一度言われたから・・一度手順を学んだから・・すぐにそのように動けるような生き物ではない。今まで大丈夫だったから、今回も大丈夫。と、考えていたから逃げ出さなかった・・だろう? 武器の扱いも、商売の仕方も、道具の使い方も、繰り返し体に叩き込んでいく物だ。つまり、入り江に住む者たちには鐘の音を聞いたら、ダンジョン内に逃げ込むように訓練すればいい」
ざわめく会場。
そういう考え方もあるのかと言う声もあるが。
大概は何を言ってるんだ、そんな事出来るわけない、という声が多数な気がする。
あまり聞き取れないけど。
「く、訓練とはどういう事でしょうか!」
「そのままの意味だが? 何もない時に鐘を鳴らし、人を集め、中へ逃げる、な。訓練内容は騎士団や守る者、入り江の者、それぞれと相談の上としてだ。・・・ふむ・・・、考えてみれば、先日の事で甚大な被害が出ていたな。ついでだ。入り江の町は一から作り直しても良いだろうな。まぁ、その話も後だ。つまりは、命があればどうとにでもなるという事であり。・・・守る者から見ても、逃げるだけの時間を稼ぐだけで良いというのは・・負担が軽くなる事ではないか?」
話の途中途中で会場はざわめいたり、静かになったりする。
一番反応したのはやはり作り直すという所だろう。
まぁ、それは一度全てを失うのと同じかもしれないし、抵抗があっても仕方ない。
まぁ、そこはそこだ。
「守る方の話はこの後にして・・・・まぁ、ただ逃げる訓練を繰り返す事は苦痛でしかないだろう。不満は多く、途中で参加しない事も考えられるだろうしな。そこで、考え方を変えてみようと思っている。・・・・ようは褒美があれば良いのだろ。対象は一階に住む者たちだ。鐘が鳴れば二階の大門の前に集まる。そこまでに早く着いた順に褒美を与えていくのはどうだろうか。まぁ、これも後で相談だな。で、どうだ? 考えても良いと思うのだがなぁ?」
「・・・・・・この話についての質問があるならば、後で書面で提出するように! よろしいか。主よ」
「ん。構わないが?」
「では、次の防御時の集団戦闘についてもご説明できますかな?」
何というか、なんだろう?
まだ、私に説明を求めるのか?
いや、まぁ、こう言うのは発案者が説明することに意味があるのかもしれないが・・・。
突然ふられても・・・ねぇ・・・・・まぁ、頑張るけど。
「あぁ・・・さて、今度の話はさっきより簡単だ。我も皆の一人一人の力は認めている。強いと。・・・だが、強いはずのお前たちは、弱いはずの敵に負け、さっきも言ったが、怪我をした。それはなぜか? 我が思うに戦い方ではないかと思っている」
「な、何言いやがる! ありゃぁ! あいつらが!」
「卑怯か?」「そうだ!」
たぶん狩人の一人が声を上げる。
さっき、先に話を進めろと言ったやつだろう。
その声に同意する声が合唱し。
先生の手が動くに合わせて、静かになる。
「はぁ。だが、卑怯だと言っても戦い方は理にかなっていると思うが? 現に我らの中にも集団で戦う者たちが」
「ありゃぁ! よえぇもんの戦い方だ!」
また別の場所で声が上がり、先生が静かにして。
話が進まない。
「その! 弱い者の戦い方に負けたのではないか・・・。まぁ、お前たちに無理に協力して戦えと言うつもりは無い! 戦いについて! は、私は素人だしな。だが、これだけは分かってほしい! 周りを見、動くこと! をだ!」
「何言ってやがる! そんなことしてるに決まってんだろうが!」
「そうか!? 我は! 敵の動きを見て! と言っているわけじゃないぞ? 周りで戦っている味方を見て動け! と言っているんだ。我の目から見ても、明らかに周りが見えてないように見えた! お前たちは一人で敵全部と戦っているんでない! まぁ、後方の者たちの動きまで気を付けろ、とまでは言わない。それこそ、今までそのような動きをしたことの無いのにすぐにしろと言うのも無理だろう? だが、横で戦っている者たちについては見て、動け! そこにある石、では無いのだぞ。 敵の動きについては見えているお前たちだ。近くの味方の動きも見るぐらいはできるのではないか?」
そこで、言葉を切り、相手の様子を・・と。
横手からメイドだろう誰かが無言で差し出されたコップを受け取り喉を潤し。
大声を出したからか、さっきの説明の時より喉が渇いていたようだ。
それを差し出した相手に返しつつ、反論は無いが、ざわめいている会場に爆弾を投下するか。
「あぁそうだ。一つ伝える事を忘れていた。ダンジョンについて、だ。まぁ、この話の流れから予想は付くだろうが・・・、二階以上行くときは二人以上、三階以上は四人以上と、人数が居ないと入れないようになっている。他にも色々制限をかけているが、まぁ、条件については開放されたダンジョン入口に刻まれているので、読んでくれ。まぁ、読まないでも良いが。ただ先に進めないだけの事だからな」
そういうと、先生を見。
唖然とした先生を見る。
何驚いてるの。
昨日言ったでしょうに。
・・・・・・あれ?
言ったっけ?




