78.
私が考えていたのはこんな事じゃないんだけどなぁ。
そんな事を考えながらも私は集まった者を見渡した。
階層主たちはもちろん、騎士団の部長クラスらしい人たちに、さっき紹介された入り江・・港・・・まぁ、海岸に住む有力者たち。
あと、あれは、確かハンター・・狩人協か・・・・組合だったか?
あとは職人と商人の組合のまとめ役とその取り巻き、あとシャンさん。
それだけなはずなんだが、前の・・紹介された部族の族長たちの半数より多いぐらいはここに集まっていた。
ちなみに何かあった時のためのメイドたちや警護の騎士たちは壁際に待機していて数に入れていない。
ちなみに彼らの食事は別室に用意してある部屋に用意してあるらしい。
交代で食べに行くそうだ。
さすがにこことは違って酒は出ないらしいが。
「急な呼び出しだったが、良く集まってくれた。感謝する! さて、呼び出した本題の前に! 一つ知らせておきたいことがある。前々から問い合わせのあった狩場についてだ! 狩場への入口の再設置も終わり、騎士団による警備体制も整ったので、本日より、開放する運びとなった。それを祝してささやかな宴を開く運びとなった! まずはこの喜びを分かち合おうではないか!」
そこで一旦言葉を切る先生。
先生の熱に浮かされたのか、それとも雰囲気に乗りやすい人たちなのか、その両方なのか。
ほぼ関係ないはずの入り江の有力者たちも含め、その場にいる者たちが興奮していた。
それほど重要な事なのかもしれない。
ただただ飲みたいとか、騒ぎたいという事かもしれないが・・・。
「まずは用意した料理の数々を堪能していただこう!では、この自然の恵みの数々と用意してくれた者達に感謝を!」
「「「「「感謝を!」」」」」
その掛け声とともに先生の話を聞いていた者達は動き出した。
多くは近くの、またはお目当ての料理の方へと動き出し。
メイドの多くはコップの乗ったお盆をもって人々の中を歩きだす。
あぁ、なるほど。
種族が違えば背の高さも違う。
それに合わせたテーブルだったようだ。
それはそうか。
ゴブリンとかの背の低い種族では多くの種族にあった高さでは少々高い。
逆に巨人に近い背の高い種族は中腰になって具合が悪い。
その身長差を解消するための三つのテーブルだったようだ。
そんな事を考えつつ広場を見渡した。
先ほど嫌というほど食べたので・・・・・それでもまだ残っているのであとで食べることになったのだが・・・・それはそっと横に置いて、その場にいる人たちの様子を観察する。
多くは同業者たちで話しているようである。
まぁ、中には同種族だからとか、食事を通じて会話が弾んでいる人たちもいるようだ。
「主殿。このような話、我々に相談なしとは。悪戯が過ぎますぞ」
「エミス。それはこいつに言った方が良い。主はここに来て困っている様子であったからな。この宴の事も知らされていなかったと見た方が良い」
「そうでしょうなぁ。主殿、こちらを。ベンノから預かってまいりました青ブドウの果汁ですぞ。どうぞ、お納めを」
呼ばれて振り向けば、責めてるようでニコニコとよくやったと言った感じのエミス爺様と少々不満だという感じのルッセイがそこに居た。スッとエミス爺様はコップを差し出すので受け取ると、横から出てきたエルフが持っていた水差しを傾け、コップに液体を注いできた。琥珀のような液体だが・・・!!すっぱ?!いけど、イケる。
「ほぉほぉほぉ、良かったのぉ。気にって頂けたようじゃぞ」
「は、はい!」
「さて、悪いのじゃが、他の者を呼んできてはくれぬかな。それは・・・そっちに渡してな」
「はい!では、お願いします。失礼します」
体を震わせながらも飲み進めながら駆けていくエルフの後姿を見つめ、周りを見渡した。
そこに居るのはエミス爺様とルッセイ、シャンさんに先生。
「さて、これだけ集めて、ダンジョンの開放だけか?」
「そんなわけないだろう? 昨日の話の続きだ。食料と防衛の立て直し。食料こんなものがと思う物もあるてことは分かってくれただろう?」
「ん」
空になったコップを左横に出す。
すぐに注がれるそれを少しコップを持ちあげる事で止めさせ、反対側に置く。
少しためらった様子は見られたが、そちらに居るメイドも持っていたそれを注ぎ。
同じ動作で止めさせてから飲んでみる。
やはり、酸っぱさが少し和らぎさっぱりとした飲み物に出来上がっていた。
それをチビチビなめながら、近くで話される皆の会話に耳を傾けつつ目の前の会場を見渡した。
「そうですなぁ。儂らの知る祝いの食事という事で用意させていただきましたが、こんなにあるとは。それに知らぬ料理というのも少々抵抗がありますなぁ。その中でも姿焼きの数々は・・・・。食べているのを見るのもつらいと申しましょうかなぁ」
「だが、ここに出されている物はかなりイケると思うが」
駆けて行ったエルフは一番近くに居たベンノ、アロイ、パトリスの元に行き、少し話した後、また走る。
どうやら、ベンノが二人を連れてこちらに来ているようだ。
二人はまだ食べ足りないと言った様子で時折ベンノのスキをついて近くの料理を口に放り込んでいる。
それを見とがめたベンノは頭を抱えながらも二人を捕まえて。
「・・・・もしや、全て食べたのですかな?」
「あぁ、虫というのも中々おいしい物だったな。小エビや子ガニに似た歯ごたえは癖になるな」
「・・・・・・・そうですかのぉ。ルッセイ殿は年の割にはためらいが無いと言いますかな・・・。そ、それはそれ。主殿の言ったことは間違っておりませんでしたな。祝いの料理と言うだけでこれだけあるというなら、食べた事の無い料理と言う物も多いでしょうな。それを祭りにするとすれば・・・・逆に我々は遊びを提供するのも・・・・・・」
それはそうと、その間にもエルフは会場を見渡しながら数人のメイド、騎士に話しかけつつ走り、騎士団団長と副団長、ドワーフ夫妻、ヘレーゼと声をかけていってそのまま真っすぐこちらに走ってくる。
その様子に気が付いただろうその場にいる人々がこちらをチラチラ気にしだした様子を見せる始める。
「エミス。その話はまた後だ。そろそろ本題を話したいからな。皆、いつもの場所に。お前たちは下がれ。シャン殿はこちらに立っていてくれ」
その声にサッと動く周りの人々。
メイドさんたちは言われた通り後ろに下がり、左側にシャンさん、右側に先生が立つ。
その両隣にルッセイ、エミス爺様が並ぶ。
他の階層主は・・・・なんだっけ・・・ひな壇? の脇に並び、騎士団団長、副団長は登り口の脇に立つ。
これがいつもの場所なのだろう。
それを確認した先生が。
「では、主、コアよ。例の物を」
『承知しまいした』
コアが返事すると、臆の壁際、その中ほどあたりに三枚の大きな板の様な物が。
それは二本の水路の上にも表れたのだ。
というか、いつの間に打ち合わせしてたの先生!
思わず出そうになった言葉を飲み込みつつ、私はその場に流されることにしたのだった。




