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「あぁっと・・・ほら、話は終わってないよ。深く考え込むなぁ。それに、今すぐどうこうなる、なんてことも無いし。ここはダンジョン特有の要塞都市?・・国家? なんだから。しばらくは持つだろうし。守ってくれている騎士団には申し訳ないけど、その間に対策を考えればいいと思うし。・・・・今から気を揉んでも仕方ないでしょうが。今、分かっていればいいことは一つ! 戦争は仕掛けない! どんなに挑発されても・・ね」
「ッそうだな。で、事前に釘指しておくことはそれぐらいか?」
何とか暗い雰囲気は緩和されたようだ。
ん? なんか、先生に笑われたような。
それより・・・・他に話しておくこと・・・・・・
「ほか・・・・ほか・・・ほか・・ほか?・・・領土?」
「は?」
「領土・・ですか?」
首をかしげつつ言ったつぶやきに先生とシャンさんは聞き取れたらしく聞き返してくる。
それにぎこちなく首を縦に振り・・・。
「今、外、地上の方はまだ魔素の濃度が高すぎて人が生活できる環境じゃないけどさ。・・元々暮らしていた人たちは居たわけじゃない?」
「あ? あぁ、居たな」
『居ましたね。しかし、それは約三百年も前の事。私やレイアード様、マリアの様なウォーキングデッド種ならまだしも、長寿と呼ばれるエルフや巨人族でも長老の二代前の長老が話していたぐらい前の話ですが・・・』
「うん? そんな前の話がなんで、そのなんだ? 領土に関わってくるんだ?」
ニアンス・・ニュアンス的には大概のウォーキングデッドには故郷は関係無いと言いたいのか。
まぁ、そうだろうし、なら、なぜそんな話を持ってくるのかというパトリスの言葉に頷く者も多い。
「あぁ、だが・・・問題はその者たちの伝承・・・だろうな。伝承にもいろいろあるが・・・・お前たちの周りには居なかったか? 昔は良かった、今のもんたちは、とぼやいていた者たちが。今回の話はそんな・・ぼやきの延長にある物のことだ。出て行った者たちは辛い現実から逃れるためなんかにぼやくんだ。あの頃は良かった、あの場所は良かった、ってな。どうしてその場所を離れたかなんて話はしない。ただ、俺は戻れなかったが、お前は戻れと無責任なことを子供たちに言う。それが嘘でも子供は良くも悪くも素直だ。現実が辛ければ辛いほど、その言葉は重みを増していき。何年、何百年、何千年も子孫を縛る。その頃にはその故郷ってのは美化されて、素晴らしく美しい理想郷になっている。で、子孫は自分たちの都合のいい方に話を持っていくわけだ。別の国が攻めてきて追い出された。あそこは自分たちの故郷であり、本来いる場所だった。だから取り返す。と、これが主が言っている領土の話になるんだろうな」
「付け加えるなら・・・・周りにある国、村もこの領土と言う問題に関わってくるでしょう。今の状態なら問題は無いでしょうが、この話を持ちだすという事は何か邪気、魔素でしたか? を、払う手段があるという事でしょう。ならばこの上は邪気を払われた豊かな土地という事。そこを手に入れれるなら嘘でも我々の土地だと主張する者たちもいます。そう言った不届き者たちの対処と言う話でしょう」
「あぁっと、まぁ、しばらくはその対処法を検討と言う話なんだけどね。あとは・・・・思いつかないし今は良いよね。それじゃ、本題と行こうか」
そう話を戻しつつ・・・・・。
そういう事もあるんだなっと思ってたりする。
私がしたかったのはあれだ。
誰が来ようと、ここが正式に自分たちの土地だと言う話を作っておくという事だ。
先生が考えた通り、ここを故郷だという人たちが来ようと戦争以外で勝ち取ったと言う話があればそうそう攻めては来ないだろうと思ったからだ。
そう話を持っていくつもりだったんだけど。
言われてみれば、そうだ。
シャンさんが言った話はその通りだと思う。
さっきの戦争の話でも出てたが、ほしいから攻めてくるのだ。
餌を撒いておいて来るなとは言えないだろう。
まぁ、その対処法は後々で考えるとして。
今は一段階目の話をしなければ。
「さ、時間も時間だし、さっさと話を進めようか。さて、今のダンジョンに必要なこと。それは食料の確保と防衛の立て直しだと私は思ってる。そこは良いかな?」
その問いかけに大体の人は首を縦に振る。
「とはいえ、どちらも今のままというわけにはいかない、とも考えている。食料で言えば、何か・・・・・そうだなぁ、害虫の発生とかや、植物の病気とかで全滅なんてこともあるかもしれないし、環境が急激に変わる事で捕れる量が少なくなるとかもあるかもしれない。そんな時のための食料を確保しておく制度と保存のきく食料の開発、食料の生産量を増やす方法、それと新しく食べられる物を発見する事。この四点を考えてる」
「ちょ、ちょっと待て。食べ物の確保は分かるが・・・・・が、だぞ? 今のままでなぜ悪いんだ? なぁ?」
「あぁ、そうだぜ? これからは広い場所があるんだ。俺んとこや、姐さんとこと、それにこいつのとこも動くって話だろ? 食べもんに関しては困るってことねぇような気がするんだが?」
「えぇっと・・・」
・・・・・・・あれ?
分かるように言ったつもりだったんだけど・・・・。
あれ?
「はぁ・・つまりはだな・・・食料の確保、という点は分かった。これはここに居る者たちも分かっている事だろう。だがなぁ、パトリスの言うように、階層が戻ってきた事で増えることが見込まれている。ブライムは少々減ったがそれでも今までよりは多く取れるはずだ。それはヘレーゼ、ベンノの所も同じだろう。違うか?」
「・・・・うん? そりゃ、増えると思うよ? 増えないと困る。でも、平和になるってことは人が増えるって事でしょ? もし、人が増えればそれだけ食料は必要になってくるよね。それに、増えないとしても・・・・・・そうだね。今なら商人たちが遠出するとして、その食糧は? 保存期間を長引かせる調理法とかあれば良いんじゃない? 言っておくけど、保存庫みたいなのはダンジョン内でしか使えないし、あれだって無制限に保存はできないんだよ? 保管方法で味は落ちても保存がきくならそれに越したことは無いはずだし。これだけでも保管がきく食料の開発は必要だと思わない?」
首をひねりながらも紡いだ言葉にその場は静かになる。
「ふむ、それはそうですなぁ。正直言えば、亜人ゆえ食料が買えないといった話は、よぅ帰ってきたもんから聞きますからなぁ。そういう物があれば喜ばれましょうなぁ。商売につながるやも・・・・」
「エミス。何でもかんでも商売にするな」
「そう言いましても、性分ですからなぁ。こればかりは変わりそうもありませぬよ」
「そうか。・・・まぁ、良い。あとは新しく食料を探すだったか? その理由は何かな? 主殿」
ルッセイが皆の意識を戻しつつ質問してきた。
・・・・・・・あれ?
食料を増やす話は・・・・は、良いのか。
たぶん、今さっきのパトリスが答えを言っていた気がする。
考え方が違うというか、これは私の言葉足らずだったのだろう。
彼らの中では農地が増えるから食料も増える、なぜ話題にするのか分からないといった所だろう。
私の中では、同じ面積で捕れる量を増やす、または同じ数でも味が格段に良い物を作る研究をするというつもりで言ったのだが。
まぁ、今はそれで良いか。
それはそうと・・・・どういえば分かってくれるかな・・・・。
はぁ・・・・。




