王都への出発
今思えば幼少期に良く不思議な夢を見ていた。
一人の青年が縦横無人に戦場を駆け巡るままを空から眺める夢。
小さい頃によく勇者の冒険記を好んで読んでいた自分は、その夢の中の人物を本の中の英雄に重ねていたことから、毎日夢を見るのを楽しみにしていたように思う。
常に戦場の先頭に立ち、群がる敵を父の用いているランスとは異なる長い得物で敵陣を崩しているその青年は姿は、まさに自身の理想であり、最良の講師であった。
父が辺境を守る騎士だったこともあり、小さい頃から槍術の鍛錬を行ってきたが、
その中で夢で見ている青年の動きを参考にしていた。
青年の槍術は少し曲芸じみたところがあったので、体がまだ出来ていない時分には少し厳しくて、よく体の筋を痛めていたものだが、それが今の自分を作っている。
王都に向かう日、父から槍を受け取った日が、私にとっての長い旅路の始まりだった。
-------------------------------------------------------------------------------------------------
「うわ!いきなり目を覚まさないで下さいよビックリするじゃないですか、坊ちゃん!」
「ごめんごめんガイウスさん。なんか急に目が覚めちゃて。ふあーあ。」
この驚いている人は父の右腕であり、僕の師匠でもある虎獣人のガイウスさん。
「早く出立の準備してくださいよ。奥様が当分会えないからって着合いいれた朝食作って待ってますし。」
「わかったよ。すぐ準備するから待ってて」
ベットから飛び起きた僕は準備を整えて、朝食へ向かった。
今日の朝食は確かに普段と違っていて僕の大好物ばかりだった。
「準備はもうできたのか。」
「はい。ガイウスさんと昨日整えたので問題ありません。」
「そうか。まああいつに確認してもらっているのであれば問題はないだろう。」
普段無口の父との些細な会話。当分は出来なくなると少し寂しくなる。
「出立の前にお前に渡したいものがある。私の書斎に寄るように。」
父の書斎に呼ばれることなど滅多にない。
一体何があるのか少しドキドキしながらも、朝食を終え、身だしなみを整えた僕は父の書斎に向かった。
「失礼します。」
「構わん。入れ。」
父の書斎に入った時に僕の目の前に入ったのは一振りの槍を持った父であった。
「これは選別だ。持ってけ。」
そう言って父は手に持った槍をこちらに手渡した。
「この槍はお前が生まれた日に巡察に出たものが見つけてきたものだ。そこに何かしらの縁を感じてな。お前が旅立つときに選別として渡そうと整備して持っておいたんだ。ランスとは使い方の異なる東国の槍であるが、お前の曲芸槍術にはぴったりだっと思うしな。」
槍を手に持ちその全容を見た瞬間、僕の中に喜びが溢れてきた。
この槍は、夢の中の青年が持っていた槍にあまりにも似ていたから。
「王都では良い悪い関係なく様々な出会いがあるだろう。その出会いをすべて糧にして、立派な騎士になることを期待する。気を付けていって来い。」
「はい!行ってまいります。」
この後、すべての準備を終えた僕は家族に見送られながら王都へ出発した。