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益体もない妄想シリーズ

『射線X』

作者: 蜻蛉野ベル
掲載日:2012/05/06

 僕は鳥の巣から遠くを見ている。

 今日は空気も乾いていて雲も無い、森の終わりまでよく見える。

 鳥の巣には510発の弾薬とゲパードM7それ以外には僕しかいない。

 僕はゲパードを構えて遠くを見ている。

 僕の一次任務は僕の存在が存続する限り森を越えてやってくる敵を撃破すること。

 敵とは人か機械かを問わない。

 森を越えてやってくる存在は全て敵だ。

 今日は地平線がよく見える。

 鳥の巣とは森の始まりに立っている高い塔のことをいう。

 人間と機械の戦いが始まるずっと前から僕の居場所はここだった。

 かつての僕がここでなにをしていたのかは記録がロックされていて分からない。

 今の僕にあるのは居場所とゲパードだけだ。

 それで十分だともいえるが。

 森の中に動くものを見つける。

 巧く木の陰に隠れて移動しているが一度捉えてしまえば関係ない。

 日が昇ってから初めての敵だ。

 数は五。

 引き金を引く。

 飛び散ったのは赤い飛沫ではない。

 どうやら機械側の先行部隊か何からしい。

 引き金を引く度に金属片が飛び散る。

 銃弾は全て中枢回路を一撃で撃ち抜く。

 残骸を回収するものはいない。

 機械は土には還らない。

 森には僕が壊した機械がたくさん転がっている。

 僕は手早く銃弾を再装填し、ゲパードを構えた。

 地平線の辺りに機械側の部隊が駐留しているのが見える。

 数は三百と五十。

 今日の天気は快晴、地平線までよく見える。

 さっきの機械たちが信号を発していたのか敵は既に隊列を展開していた。

 後方の砲台からミサイルが発射され、戦闘機が飛び立つ。

 いずれも目指す先はここではない。

 人側の拠点、ガトラを目指しているのだ。

 地上部隊は後回しにして、ミサイルを撃墜する合間に音速を超える速度で侵攻する戦闘機を打ち落とし、自走砲台を破壊していく。

 銃弾を撃ち尽くす度、機関部側面に箱型弾倉を装填する。

 地上、百と八。

 空、五十と二。

 弾薬は残り二百九発。

 一機に二発も使えない。

 敵の第一線は鳥の巣から二千メートルの所まで迫っている。

 質量兵器だけではなく指向性エネルギー兵器の使用が可能な距離だ。

 指向性エネルギー兵器は実弾じゃ打消せない。

 僕は射撃のペースを上げる。

 敵の発した光線がダミーの見張り台を焼き払い、地面を焦がす。

 僕の一次任務は僕の存在が存続する限り森を越えてやってくる敵を撃破すること。

 撃破とは敵の全滅を意味する。

 一機たりとも通すことは許されない。

 敵の最も前線に位置する編隊の先頭を飛ぶ機体に狙いを定め、撃つ。

 電子脳を破壊された戦闘機は安定性を失い、後続の三機を巻き込んで落ちていく。

 残った三機は即座に編隊を組み直し、狙撃主がいる方角を計算してレーザーを放つ。

 敵の攻撃範囲と索敵範囲に隙間は無い。

 ミサイルは全弾打ち落としているが、相手は弾を無駄に消費させるよう計算して打ち出しているようだ。

 機械軍が完全に統制されているからこそできる芸当だ。

 人間を乗せない無人戦闘機は有人戦闘機とは比べ物にならない戦闘機動が可能となる。

 音速を超えるぐらいのミサイルでは簡単に避けられてしまうので、相手の演算能力で対処できない弾幕をはるか、光線兵器でしか無人戦闘機は打ち落とせない。

 仮に打ち落とせても、連動して別の機体が打ち落とした相手をロックしホーミング機能がついたミサイルを打ち出すので、相手の索敵範囲外から攻撃しない限り確実に撃破される。

 質量兵器を使用するなら一撃で仕留め、なおかつ一機でいる時しか機械は相手にできない。

 それが人間の常識で、機械の常識でもある。

 だが僕には適応されない常識だ。

 投入された戦力からして敵は今回こそ僕を打倒したいらしい。

 不可能であるとは言わない。

 が、僕は任務を遂行するだけである。

 それが僕のプログラムの根底に打ち込まれたロジックだ。

 日が暮れる頃、敵は全て撃破した。

 これだけ大規模な侵攻作戦が行われたのはこれまでで三度目だ。

 弾薬はもう十発も残っていないが、今までのパターンから推測すれば敵の侵攻はしばらく中止されると思う。

 次の補給日まではもつだろう。

 今日も日が沈む。

 僕は遠くを見ている。


『普遍座標系上に偏在する情報の予測演算による射線の補正とその収束に関する感情論』というこの短編の続きを投稿しました。よろしければ見ていってください。

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