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ガタンッとエレベーターが止まった。
ココから先は、階段を自分の足で登っていかなければならない。
空気圧のせいだろうか、体が思うように動かない。
何故か、だるくなってしまう。
それでも私は突き進む。
もう、進むことしか残されていない。
戻ることは、許されない。
「うっ……ごほっ」
管理された空気、管理された空、管理された水、自然、それらはまるで無菌室にいる状態に近かった。
当然、無菌ではないが、それでも、地上に比べれば無菌室に近い。
つまり、この時点で私の体はかなり汚染されてきているのだ。
地上に出ても死ぬ、戻っても、汚染されてきているこの体に苦しみながら死ぬ。
どの道死ぬなら、もう、戻れやしない。
長い階段を登った後に、扉は目の前にあった。
鍵はもろくも腐食し、触れただけでボロボロと崩れ去っていった。
外への扉を開けたとき、どれだけひどいものが目に入るのだろうかと思ったが目の前に広がっていた景色は、あまりに、あまりに綺麗だった。
人間の住まなくなった地上は、あまりに青く、あまりに、さまざまな色で覆い尽くされ、さまざまな匂いで満ちていた。
花からは甘い香りが漂い、草からは不思議なにおいがしていた。
「う、ごほっ!!」
匂いにむせ、ほぼ無菌状態で生きていた体が異常反応を次々と示していく。
空は……オゾンだっただろうか。
そうだ、オゾンからできていて、オゾンは腐食性が高く、生臭く特徴的な刺激臭を持つ有毒物質とかだったな。
体がどんどん腐食していくのが分かる。
空がオゾンから出来ているのは知っていたが、ココまで青く、ココまで人の体を蝕むとは。
それでも、それでも私は。
ココに来れたことが、嬉しかった。
怖い?
怖くはなかった。
苦しさなんて感じる暇もなかった。
自然の摂理をこの体に感じながら私は目を閉じた。
目を閉じる、ほんの少し前に、風が私の頬をなでていった。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。