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結晶の国より愛を込めて  作者: 片海 鏡


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9/9

9話 短くなった髪

 翌日。

 コルエとミランジュ達に王都の警備をまかせ、ネフィリアードは隊員の魔女を一人引き連れて、中央広場周辺の調査に入った。

 巨大なツリーの何百何千もの飾り達を暴走させたとなれば、念入りな準備が必要だっただろう。怪しい人物を見ていないか。前兆がなかったか。事細かに情報を集めなければならない。


「リュアンナ。今日はよろしくたのむ」

「はい。先輩」


 ネフィリアードの半歩後ろに控える長身の魔女は、問いかける。

 年は十代後半か二十代前半。可愛らしいよりも、格好良さが垣間見えるすっきりとした顔立ち。肩までかかる紫がかった黒髪は全体を真っすぐに切り揃えている。軍服に身を包んだ体は、コルネ達に比べると筋肉質であり武闘派に見える。

 紫色の瞳はあどけなさを残しながらも、ネフィリアードへ尊敬の眼差しを向けている。

 リュアンナが彼を〈先輩〉と呼ぶのは、同じ学園で共に過ごしていた仲だからだ。

 学園には下級生を上級生が世話をする風習がある。当時6歳だったリュアンナは極端な人見知りだった。その為、悉く物陰に逃げてしまい、相性の良い上級生を見つけるのに難航した。教師が悩んだ末に〈ネフィリアードならどうか〉と2人を会わせたのだ。推定11歳のネフィリアードは、過度な干渉をせずにリュアンナの歩幅を合わせて行動をした。それがリュアンナには居心地が良く、次第に懐き、今もなお〈先輩〉と呼び慕っている。


「先輩。どうして、ぼ、いえ私と先輩だけで調査を行うのですか?」


 つい〈ぼく〉と言いかけたリュアンナは、慌てて訂正しつつ問いかける。


「うちの隊は、リュアンナしか中央出身はいない。私もコルエ達も、王都出身ではあるが外れに近いからな」


〈中央〉と呼ばれる広場や大通りは服や宝石などの華やかな品を売る店が多く、〈外れ〉と呼ばれる城壁側へ行くほど職人達の店が立ち並ぶ。同じ王都でも毛色が違うのだ。なので、ここで長年暮らし、土地勘のある魔女の視点が必要だと彼は考えた。


「一通り聞き込みを行うが、その際に何か気になる点があれば直ぐに言ってくれ」

「はい。わかりました」


 リュアンナはしっかりと頷いた。


「まずは、何処を調べるのですか?」

「私の行きつけの花屋〈フロウレシア〉だ」

「えぇ!?」


 何気なく言ったネフィリアードに対して、リュアンナは声が裏返る程に驚いた。

 第一部隊の最年少。少しでも大人に見てもらおうと澄まし顔のリュアンナが、たった一言で動揺した。

 前を歩いていたネフィアードは、その声に思わず振り返った。


「どうした? もしかして、知り合いなのか?」


 花屋の店主はリュアンナより少し年上ではあるが、幼馴染であっても不思議ではない。

 喧嘩をしたのか。それとも、虐め等で嫌な思い出があるのか。店主とリュアンナが接触しても平気なのか確認する為、ネフィリアードは訊いた。


「い、いえ。知り合いではあるんですが……なんでも、本当になんでもありません!」

「そうか? 何かあるなら先に言いなさい」

「はい!」


 髪が左右に揺れる程に大きく首を振って否定したかと思えば、ヘドバンをする勢いで大きく頷いたリュアンナに益々疑問が増えていく。

 そうこうしていると2人は花屋〈フロウレシア〉へと辿り着いた。


「あっ! 見回りお疲れ様です!」


 店先の掃き掃除を行っていた四季の魔女が2人に気付き、挨拶をする。


「えっ、あ、髪……!」


 ネフィリアードよりも先に、リュアンナは驚きのあまり思わず声を漏らす。

 昨日まで三つ編みだった亜麻色の髪は、ふわりとしたボブの髪型へと変わっていた。綺麗に整えられ、不格好ではない。むしろ似合っている。

 しかしリュアンナは動揺し、ネフィリアードもまた驚いた。


「はい。昨日の夜に、ちょっとした事故がありまして……それで、思い切って切ったんです」


 四季の魔女は苦笑しながら花筒を置くと、短くなった髪を指先で弄る。その目線の先には、リュアンナがいる。


「似合っていますか?」

「あ、あの……その……えっと」


 不安そうに言う四季の魔女に、頭が真っ白になってしまっていたリュアンナの口からは、言葉が出てこない。ほとんど空気のみが吐き出されている。


「あぁ、とても似合っている」


 すかさずネフィリアードがにこやかに答える。


「三つ編みの君も素敵だが、今の髪型は違った魅力を引き出していて綺麗だよ。まるで春の妖精のようだ」


 ネフィリアードはリュアンナの背中を押す。


「リュアンナもそう思うだろう?」

「は、はい! と、ととても、素敵です!」


 頬を赤らめ、声を上擦らせながらリュアンナは、素直に答える。

 分かりやすい態度に微笑ましく思えるが、一方的な好意は時に毒物となる。あからさま過ぎて気分を害していないか心配になったネフィリアードは、四季の魔女の様子を伺う。


「嬉しいです! ありがとうございます!」


 しかし杞憂だった。やはり2人は周知の仲のようで、四季の魔女は桜色に頬を染めながら喜びと安堵の微笑みを浮かべている。


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