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蒼虹結晶の樹の元で2人は契を交わす  作者: 片海 鏡


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44話 拠点への侵入

 大きな爆発が発生し、巨大な魔動車であってもその衝撃に車体が大きく揺れる。


「……!! っ!!」


 爆発の光に目が潰されないように閉じ、舌を噛まないように噤んだリュアンナは、舵を握りながら必死に耐える。

 爆発によってレンガの破片が飛び散り、装甲に何度もぶつかる音がする。車体はいつの間にか停車し、瞼を上げると砂煙が舞い上がるのが見えた。


「よし、侵入成功だ!」


 城壁に大きく空いた風穴を抜け、リュアンナ達は南防衛拠点アネモスへの侵入に成功をした。

 過酷な環境と魔物達から居住区を守る城壁は、単にレンガを積み上げて建造されてはいない。厚さは4メートル、高さは12メートルほどあり、内部には兵士が自由に移動できるように回廊が設けられている。戦闘に有利になる仕掛けが数々施され、防御においては資材一つ一つに魔法が施されている。何処かが破壊されたとしても自動修復する機能や、防御結界の発動など様々だ。

 破るのは容易ではない。だが、本来いるはずの防衛を担う魔法騎士達が不在であったのが幸いであった。城壁破壊に集中できるからだ。

 魔動車の魔動車の前方には、対魔物用の攻撃魔法が組み込まれている。魔力を帯びた〈何か〉が触れた瞬間に発動するよう設定されている。魔法の如き攻撃然り、体当たり然り、その攻撃が大きければ大きい程に破壊力が増すカウンターだ。コルエはそこにリュアンナの雷撃を掛け合わせ、威力を爆発の様に拡散するものではなく、槍状の一点集中型へと変化された。

 そして、自己修復をする間も与えず、城壁の破壊に成功したのだ。


「ねぇ、何があったの?」「凄い揺れたんだけど」「ね、猫が怖がるから、や、ややめて」「リュアンナはだいじょーぶー?」「嫌な予感が」


 扉を隔てた貨物部に当たる大部屋から口々に苦言の声が上がるが、完全に無視を決め込むコルエはリュアンナに言った。


「衝撃で停止してしまったね。再起動しよう」

「そうしたいところですが、前方を見てください」

「ん? おやおや」


 金髪の小さな少女が立っている。以前、アリュスが描いた容疑者の絵に酷似している。

 彼女の周りには、年上に見える少女達が集まり始め、全員がこちらに敵意を向けているのが見て取れた。


「やぁ、ご機嫌よう。君達が犯人だね」


 操縦席の扉を開け、コルエは少女達に声をかける。


「黙れ。大人」


 可愛らしい顔をゆがめ、吐き捨てる様に金髪の少女は言う。


「おまえ達は、フローラの所へは行かせない。ここで終わらせる」


 少女が手を掲げると、爆発によって破壊された城壁や近辺の建物の瓦礫が空中に集まり始める。


「あら。大事じゃないの」


 貨物部から出てきたミランジュは冷静に言った。


「ミランジュ達は先に行ってくれ。ここは、僕とリューが相手をするよ」

「そうね。手分けした方が良さそうだわ」


 同意すると彼女は貨物部にいる魔法騎士達に呼びかけ、直ぐに行動へと移した。


「ニケがチームリーダーやって」「はい!?」「私もニケと行こうかな」「わ、わたしと猫は、副隊長と行くわ」「僕もミランジュ姉さまと行くー」


 口々に言う魔法騎士達だが、彼女達の行動も早い。副隊長であるミランジュと強制的にチームリーダーをする事になったニケが、それぞれ別方向へと移動を開始する。


「2人とも頑張ってねー!」


 ミランジュが投げキッスに似た動作を行うと、桃色の花びらが何処からともなく舞い上がる。甘い香りと共に吹雪の様に舞う花びらは、追いかけようとした少女達の行く手と視界を遮る。


「さて、と」


 コルエは魔動車の上へと登ると、使い古された木製の杖を腰に携えていた鞘から取り出す。その杖は、魔女が母から最初に貰う杖。幼き日のコルエへと、ネフィリアードとミランジュが贈った品だ。


「君達の言い分を聞こうじゃないか。罪は罪でも、ここまでやるからには言い分がある筈だ。僕はそれが知りたい」

「良い人ぶるな」


 金髪の少女の術式が完了する。

 地面へと着地した瓦礫の塊は、床一面に広がり、更に変形を開始する。


「大人は信用なんて出来ない。私をこんな小さい姿で成長を止めて、いつもいつも舐める様に全身を見て、変な声で言い寄って……触って来て……」

「ほぉ、それは酷い話だね」


 爪を噛みながら呟く少女は一歩前へと出ると、瓦礫の上へと乗る。

 その瞬間、瓦礫はせり上がり、上半身だけの人の形を形成する。頭部に乗った少女は、コルエ達を見下げる。


「綺麗事を言ったって、どうせ私達をモノ扱いするんだ! 私はフローラと一緒に、国を変える!!」


 少女の声に共鳴するように、口を開けた巨人の中から瓦礫が擦れ合う耳障りな音が響き渡る。


「面白い発想だ。今度参考にさせてもらうよ」


 コルエは木製の杖を少女と怪物へと向ける。


「リュー。帰りの為にも、魔動車を壊されないように気を付けてくれ」

「はい!」


 リュアンナの軍服の内ポケットから、先端に紫の宝石が埋め込まれた鉛筆ほどの杖が取り出される。

 




『緊急事態発生! 緊急事態発生!』

 拠点内に、魔法を用いた放送が流れる。


「えっ、味方呼んだの? さっすが~」


 戦闘中だったフローラはその音声に手を止める。

 ネフィリアードは警戒しつつも、彼女と同じように耳を傾ける。

 コルエか?


『城壁は大きな魔動車が激突し、破壊されました!!』

「はぁああ!!!????」


 驚くフローラとは対照的に、ネフィリアードはため息をつきたかった。

 コルエだな。


『拠点内に花吹雪と雷雲が発生中です! 巨大魔動車が走行中につき、巻き込まれないように注意をしながら戦闘態勢に入ってください!!!』

「なにそれ!?」


 ネフィリアードは頭を抱えたくなった。

 コルエだけでなく、ミランジュとリュアンナまで……


「ちょっと、帝王!? 絶対にアナタの部下でしょ!? もっとこう、作戦とかさぁ! 街を省みないで魔法を放ち続けるって!! 巨大魔動車ってなんだよ! 頭おかしいの!?」

「返す言葉も無い」


 他の隊員も大胆な行動をしていそうだ。

 この事件が終息した暁には、城壁の修繕費用を第一部隊から何割か出そう。コルエには多めに出させよう。

 ネフィリアードは強く思った。


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