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蒼虹結晶の樹の元で2人は契を交わす  作者: 片海 鏡


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41話 結晶の民

 光が弾け飛び、ネフィリアードは瞼を開ける。

 重い雪雲が先程より近くにあり、潮風が頬を撫でて行く。


「ここは……」


 ネフィリアードは、周囲を見渡す。

 緩やかな三角形を描く広い屋根には、紺色の瓦が敷き詰められている。

 建物は3階ほどの高さがあるだろう。周りは広場になっているのか、他の建物と距離がある。


「……! アリュスは!?」


 はっと我に返ったように名を呼んだが、ネフィリアードの背後には誰もいない。

 前回は魔方陣が見えたのでアリュスが気づき、抱き着いてくれたが、今回は不意打ちだった為にそれが出来なかったようだ。

 心配だ。けれど、彼ならばきっと大丈夫であると自分に言い聞かせる。

 焦っては、いけない。自分ならば対処できると何度も何度も言い聞かせる。


「ここは、帝国の神を祀る聖堂の屋根の上だよ」


 フローラが空からふわりと屋根へ降り立つ。


「気を利かせてあげたんだ。感謝して欲しいな」


 魔女達が戦闘に巻き込まれないか気がかりだったのを見透かされていた。

 やりたい事は明白ながら、フローラの行動は残酷でありながら親切さが垣間見える。


「さてさてー?」


 杖をくるりくるりと回すフローラの周りに、光の玉が6つ現れる。

 対するネフィリアードは、杖が無い。工場までの移動の道中で、屯所内に潜伏中の結晶のハエトリグモが杖を発見していたが、常に少女4人が見張られている状況だ。今まさに攻撃を仕掛けようとしているフローラに集中しなければならず、意識を割きながらあちらに指示を出すのは困難だ。


「杖の無い帝王は、どこまでアタシと戦えるのかな?」


 その瞬間、光弾が放たれる。

 一直線に飛ぶのではなく、ネフィリアードに引っ張られる様に全ての光弾が襲い掛かる。

 彼は冷静に動き、一発、二発と避け、追尾する残りを誘導し屋根に飾られている石像へと着弾させる。更に放たれた光線を四発避け、上半身が無くなった石像の影に隠れる。

 明らかに弄ばれているが、苛立たずに次の手を準備する。


「身体が大きいんだから、隠れても無駄だよ!」


 次なる光弾はフローラの周囲に発生するのではなく、術者が認識した場所に発生できる厄介な式である。

 ネフィリアードは周囲に現れた光弾に向けて、結晶の粉を巻いた。粉によって光弾の追尾能力に歪みが生じ、四方八方へと散開し、周囲の建物の屋根や地面へと激突し消滅した。


「そんな事も出来るんだ! でも逃げてばーっかり! もっと苦しんでよ」


 逃げまどう犬に石を投げる様に、フローラはネフィリアードへと杖の先端を向ける。

 今度は隠れる余裕を与えず、逃げ道を与えない。

 ドーム状に隊列を組んだ光弾に、ネフィリアードは逃げ場を無くした。


「さぁ、死体をちょうだい!」


 一斉に光弾がネフィリアードに向けて放たれる。

 周囲の石像や屋根、建物の柱を巻き込み、大きな爆発と共に砂煙が発生する。

 その煙の一部が、瓦礫と共に神殿内へと落ちていく。

 フローラはそれを屋根の上から笑顔で見ていたが、直ぐにつまらなそうに顔をしかめた。

 砂煙に薄紫の霧が紛れている。


「助かった。紫霧の大蠍(アメジスト)


 ネフィリアードを覆いかぶさる事で守り、地面へと安全に着地させたのは、薄紫の霧を発生させる巨大なアメジストの大蠍だ。

 大きなハサミと鋭い針を有する長い尾。高さは2mを優に超え、胴体は荷車や4人乗りの魔道車に近い大きさだ。足の付け根には噴出口があり、ネフィリアードの声に応える様に軽く霧を吹いた。


「へぇ、ママが残した記録は本当だったんだね。極氷の民と共生する結晶の生命体。万物の〈殻〉を司る神の眷属……」


 地上へと降り立った興味深そうにフローラは言い、ちらりと自分の杖の赤い宝石を見る。


「こいつの声も聞こえるの?」

「全ての結晶に、冠名の意思が宿るわけでは無い」


 だがその問いをきっかけに、ネフィリアードはあの赤い宝石が何なのか気になり始めた。

 代表格ルビーやガーネットよりも、あれは濃すぎる赤色をしている。


「がっかり」


 フローラは肩を竦める。

 結晶の生命体。極氷の民からは〈結晶の民〉と呼ばれている。

 鉱石類の特性や透明度を持ち、アメジストやサファイア等を冠する名を持つ意思のみが存在する。彼らは個の形と能力を殻の神から与えられる。

 殻とは、魂の入る器である肉体だけでなく、万物の〈形〉そのものを意味している。

 神の恩恵を受ける冠名を持つモノは、臓器や唯一の弱点と呼べるものはなく、任意で体の崩壊や消滅が出来き、何処からともなく結晶の生成が可能だ。

 超常的な力を持つ彼らは、神の意志の元に行動をする。そして、彼らを唯一信仰していたのが極氷の民である。


「帝王は、魔法が使えないんだね。造形魔法と誤魔化して、彼らの力を借りている」

「造形魔法ではあるさ。彼らの顕現には私の魔力が必要だ」


 ネフィリアードの作り出した結晶に、彼らの意思が宿る。指示の元に自立行動が出来るのは、そのお陰である。欠点は、本来の彼らの能力を十分に引き出せないことだが、そればかりに思考を巡らせては意味がない。

 この状況を打破し、フローラを保護、そしてアリュスと合流しなければならない。

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