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蒼虹結晶の樹の元で2人は契を交わす  作者: 片海 鏡


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37話 外国産の魔道車

 そうして歪な朝食が終わり、空になった皿が片付けられていく。

 縄で縛られていた魔女達は解放されたが、チョーカーに紐が括り付けられる。それは犬を散歩させる際にリードを首輪に付ける動作に似ている。魔女達はリードを持つメイドに従い、会議室から退室した。

 彼女達は何処へ行くのか気になったネフィリアードは、会議室の周囲を監視していた結晶の虫に向けて頭の中から指示を出した。ハエトリグモの形をした小さな結晶はその命令を受信すると、ある魔女のズボンの裾の裏地にしがみついた。


「帝王とそのペットの防寒着は?」


 食後の紅茶を飲んだ後、外出の準備をしようと立ち上がったフローラはメイドに訊いた。


「はい。こちらに」


 メイドの少女が、黒のジャケットとカーキーのロングコートを持って来る。大きさから前者がネフィリアード、後者がアリュス用だ。体毛に覆われたネフィリアードよりも、アリュスはさらに防寒対策が必要と判断されたのだろう。

 その配慮に感謝すべきだが、何を考えているのか読み取れない。


「外国で作られたコートだよ。大体の大きさで購入したから、少しきつくても我慢してね」

「わかった」


 返事をするネフィリ―アドの後ろでコートを受け取ったアリュスは、フローラの言葉に小さく頷いた。


「よし! おでかけだー!」


 2人が上着を羽織ったのを確認すると、フローラは威勢の良い声を上げる。

 メイド達は扉を開け、2人はフローラの後について廊下へと出た。

 朝食に向かう時に比べ、廊下を歩いているメイド達の数が増えている。フローラ達に気付くと壁沿いに移動し、深々と頭を下げる。13歳か14歳ほどの少女達だ。10歳前後に見える背の低い少女もいるが、個人差があるので正確な年齢は判断できない。

 あの魔女達以外、大人がいない。

 多感な年頃の筈の少女達の表情はひどく落ち着いており、私語は聞こえず、黙々と仕事をこなしている。


「今日はアタシのオススメの場所を案内してあげる!」


 外へと出ると、天井部分が無い魔動車が待機していた。

 4人乗りとロズマキナで開発された車とほぼ同じ大きさだが、魔力を動力とする機械は木製の外装で覆い隠されている。複数の色合いの異なる木が使用された流線型の魔動車は、確かなノウハウが刻まれているのが見て取れる。だが、雪の多いロズマキナでは装甲の強度やタイヤの種類に不安がり、外ではなく拠点内で走らせて楽しむ品に見えた。


「外国製の車! いいでしょう?」

「あぁ、うらやましよ。これを遠い国から仕入れるなんて、かなりの金額だったんじゃないか?」


 相手の調子に合わせつつ、気になる事を交えながらネフィリアードは訊いた。


「どうだろうね。彼女達が買ったものだから、アタシは知らないや」


 彼女達とは、あの魔女達を指している。

 話しの流れから、魔動車含め屯所に置かれた調度品や家具の数々は、魔女達が購入したと考えられる。しかし、あれだけの数を購入するには、かなりの額が必要だ。税を私的に利用し、治安維持を担う者が趣向品を頻繁に購入するとなれば、徐々に情報が洩れるはずだ。

 特産である織物や染物だけでは賄いきれない。何処かに資金源となる事業があり、売買を拠点全体で隠し続けた事になってしまう。

 騎士団長は、一体どこへ行ったんだ。


「さぁ、帝王乗って乗って! 良い場所に連れていってあげる!」

「君が運転するんだ?」


 運転席へと座ったフローラを見て、アリュスは問いかける。


「ペットがアタシに声をかけるなんて……まぁ、いいや。そうだよ。アタシって何でもできるからさ」


 フローラの意識がアリュスに向いている中、ネフィリアードは頭の中で外に出られた結晶の生物達に周囲の偵察をするよう指示を出す。


「もちろん。安全運転で行くから、心配はいらないよ」

「頼もしい限りだね」


 アリュスはそれ以上追及せず、ネフィリアードを見る。彼はその視線に気づくと小さく頷き、共に魔動車に乗り込んだ。

 フローラは2人が着席したのを確認すると、魔動車を起動させる。

 魔動車の操縦は、船のものよりも二回りほど小さくした舵で行われる。魔力を動力へと変換する金属製の箱に組み込まれた魔方陣が展開され、操縦の陣ときちんと繋がっているかフローラは1つ1つ確認をする。

 国が決めた運転許可証の取得資格は18歳からとなっている。フローラはまだ幼いものの、動作確認が手馴れていた。未成年の魔動車の運転を含め魔動車に関する法律や罰則について、国から拠点へと報せてある筈だ。

 それをフローラは無視をしている。この拠点は完全に彼女達の支配下にある。


「それじゃ、行くよー!」


 舵を両手で握ったフローラは、魔動車を始動させる。


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