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蒼虹結晶の樹の元で2人は契を交わす  作者: 片海 鏡


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26話 箒以外の移動方法

 その後、リュアンナと合流したミランジュ、他の隊員達が帰還し、事情聴取の結果が伝えられる。

 花屋フロウレシアの店主は、3人の少女が来店したと証言した。

 また同様の〈少女達の悪戯〉が南側で発生していた。昨日の夕方から夜に集中している。

 南に位置する青果店、鮮魚店、肉屋、手芸用品店など生活を担うリプル通りでは、少女達が来店し、帰った後に何らかの問題が発生していた。花屋フロウレシアの時と同様に〈うっかり〉を装うような内容ばかりで、魔女達は大きな問題とは捉えてはいなかった。

 その少女達とは、花屋来た3人ではない。証言に上がった少女達は、同年代であるが全て別人であった。学生が集まる喫茶や雑貨店の店主から〈王都の学園の生徒ではなく、拠点の子供達と思った〉と証言があった。

 3人を加え証言に上がった少女は合計16人。

 虹の薔薇から子供は生まれるが、全ての子が王都で育ち大人になるのではない。拠点は大都市であり、仕事に就き、店を構えている魔女は珍しくない。拠点には学園の分校があるので教育には問題なく、子が3歳ほどに成長すると共に帰って行く場合が多い。


「隊長。門番から返事が届きました」

「ありがとう」


 翌日。城壁を守る黒翼の団に出した手紙の返事が来た。

 南の拠点アネモスからの来訪者は4日前に商談が来たのみ。人数は3人と限られている。

 聖誕祭の日には晴れるが、冬の時期はそれまでは何時止むのか分からない吹雪が極北大陸を襲う。商団が吹雪の中でも方角を見失わず魔導車を走らせる事が出来たのは、方位磁石の働きをする魔法道具と厳重な守りの魔法があったからだ。


「片道3日か。随分と早いな」

「そうなんだ?」


 元の姿に戻っているアリュスは、ネフィリアードの事務机の横に椅子を置いて、服になる予定の布へ刺繍を施している。着ている青のセーターの胸には結晶の花で作られたブローチがあり、軍服を返却した後に作り直したようだ。

 昨日は身の安全のため〈検査入院〉と理由を付けて店を休み、ネフィリアードと一緒に屯所で一夜を過ごした。夜間は特に大きな問題や事件は発生せず、静かなものだった。


「魔動車が使われ始めても、この時期なら4日は掛かる」

「平均で4日? 遅くない?」


 アリュスは刺繍を止め、顔を上げる。


「陸路は雪の状況だけでなく、魔物との戦闘も考えなければならない。その分、休憩も必要になる」

「魔物の危険度や数によっては遠回りも必要も出て来るね。ずっと街にいるから、忘れてた」


 魔動車とは端的に言えば、小屋に車輪が付いた乗り物だ。魔力結晶を原動力に車輪が回り、魔法によって操縦を行う。飛行できないが速度は箒と変わりなく、安全性など荒削りな部分もあるが大量の荷物を運べる為に軍だけでなく、商団や医療団体が活用している。


「相当無理をしたのだろう。冬場は吹雪に対する守りや室内を温かくする魔法を多用するから、春や夏に比べてかなりの燃料が必要だと聞いている」

「無理してまで運ぶものって、なんなの?」


 魔動車は、アリュスから貰ったアイデアを元に、今から5年前に開発された。

 帝国の何処かの街で、窓の外を眺める。その僅かな記憶の中に、魔導車と思しきものがあったのだ。

〈使役する動物ではなく、魔力で動く荷車〉

 過酷な環境に閉ざされ、多くの事柄が魔法で解決する魔女の国では、無い発想だった。

 箒に乗り、浮遊魔法で荷物を運ぶ。単純だが、それで解決してしまっていたからだ。さらに冬場であっても大陸運搬を担う魔女達がいた為、問題が無いとみなされていた。しかし、終戦後の復興のため多くの物資が移動する中で、運搬方法の見直しが検討されるようになった。

 浮遊魔法で浮かせられる量や大きさには、個人差がある。長年の習慣から魔女達は魔法で打開しようと考えてしまい、〈乗り物〉を忘れていたのだ。

 そこにアリュスによる新たな価値観が加わり〈一定の魔力と操縦能力があれば、大量の荷物を運搬できる魔動車〉が開発された。


「今回の商団は女王専属の裁縫師の元へ、材料を届けるためだったようだ」

「王都の産業では手に入らない材料? 」

「南は貿易だけでなく、織物と染物の一大産地なんだ」

「織物に染物……!」


 アリュスはその話題に目を輝かせる。

 女王の着るドレスの材料とあって、門番を務める黒翼の第11から13部隊だけでなく、白翼の団の部隊も加わり、検問が行われた。

 仮に南防衛拠点から来た場合、より一層厳重になっている中、未成年16人が秘密裏に入れるとは考え難い。

 周囲にも乗り捨てられた魔動車、もしくは証拠隠滅を謀り何かを破壊した痕跡は残っていない。城門外に一部露出している地下水路の出口からの侵入が有力だが、黒翼の団が防衛魔法を施しているので侵入の際には気づくはずだ。


「女王のドレスに使われる材料は無理でも、卸売り業者に頼めば良い品を出してもらえるんじゃないか?」


 巨大ツリーに続いて広場での襲撃があり、女王の元にも情報が集まり始めている。多忙な女王からの返事は、最短でも2日は掛かると見積もるべきだ。


「家に帰れたら、そうしようかな」


 アリュスは嬉々としながら刺繍を再開する。

 事を急かして南へ向かっては、相手の思うつぼだ。

 彼女達の目的が分からない以上は動くべきではない。むしろ味方の多い王都で保護を念頭に動いた方が良い位だ。

 焦ってはいけない。

 自分に言い聞かせるネフィリアードだが、少女の瞳を思い出しては嫌な予感がした。


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